前の話
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「ようこそ皆様。
今宵も"4219サーカス団"によるショー
を、心行くまでご覧ください!」
__アナウンスが流れる。
登場までの時間はあと少し、
それまでに、この状況を何とかしなくては
"アイツにころされる。"
皆を落ち着かせる為に吐いたこの言葉も、
きっと、プレッシャーになってしまうのだろう
けれどもそれ以外にかける言葉は見つからなかった。
涙を溢しながら調教師の彼女はそう言う。
動物がいなければ凄いものは何も見せられない。と
手品師の彼女が俯きながらそう言う。
今日はもう立て続けに合計10個の手品を披露していた。"被らないように"なんて無理に等しいだろう。
踊り子の彼女が悲しそうにそう言う。
練習も含めると九時間ぐらい踊り続けだった訳だ。
疲れていても無理はない。
ブランコ乗りの彼らが遠慮がちにそう言った。
壊れてしまったのなら、もう彼らに客を楽しませる自信のある物は何一つない。
ボクがどうにかするしかないのだろうか。
一人では、おどけることもできないが。
せめて少しだけ、少しだけ皆の出番が遅れたなら。
少しだけ日にちがずれたのなら。
幕が上がる。
ボクの出番だ。
任せてよ。皆を生かしてあげる。
誰も思わなかっただろう。
あの大人しい彼が、こんな事をするなんて。
また、ショーは遡る___