第11話

11話
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2026/05/13 12:00 更新
📖 第11話:近いのに遠い

次の日。

目が覚めてすぐに思った。

(……好きかも)

その言葉が、頭から離れない。

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教室に向かう足取りが、いつもより少しだけ重い。

(どうしよう……)

気づいてしまった。

自分の気持ちに。

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教室に入る。

自然と隣を見る。

東 言くんは、もう座っていた。

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(……いつも通りだ)

変わらない。

何も知らないみたいに。

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「……おはよ」

声が少しだけぎこちない。

「……ああ」

いつも通りの返事。

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それだけなのに。

(無理……意識する)

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授業中。

ノートを書こうとしても、集中できない。

(どうやって話してたっけ……)

昨日までは普通にできていたことが、

急に難しくなる。

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ふと、シャーペンを落とす。

コロッ、と床に転がる。

「あ……」

拾おうとした瞬間、

また、先に手が伸びた。

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「……ほら」

東くん。

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「ありがとう」

受け取るとき、指が触れそうになって、

思わず手を引く。

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「……?」

少し不思議そうな顔。

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「な、なんでもない」

慌てて前を向く。

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(何やってるの私……)

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昼休み。

今日はやけに静かに感じる。

隣にいるのに、距離が遠い気がする。

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(こんなの嫌だな……)

せっかく近づいたのに。

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「……今日」

ぽつりと声。

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「え?」

東くんがこちらを見ていた。

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「……避けてるだろ」

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(……バレてる)

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「ち、違うよ!」

思わず強めに言ってしまう。

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「……そうか」

でも、それ以上は何も言わない。

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その態度が、逆に苦しくなる。

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(違うのに……)

(避けたいわけじゃないのに)

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でも——

「……」

言葉が出てこない。

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少しの沈黙。

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「……ならいい」

ぽつりと一言。

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(よくないよ……)

心の中で思う。

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でも、口に出せない。

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午後の授業も、どこか上の空。

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放課後。

帰りの準備をしながら、決める。

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(このままは嫌)

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隣を見る。

東くんは、もう立ち上がろうとしていた。

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「……東くん」

声をかける。

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「……?」

振り返る。

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少しだけ、緊張する。

でも——

「今日、一緒に帰っていい?」

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言えた。

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一瞬の間。

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「……別に」

いつもの言葉。

でも——

「……来い」

小さく付け足される。

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(よかった……)

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並んで歩く帰り道。

今日は少しだけ静か。

でも、それは嫌な静けさじゃない。

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しばらくして。

「……さっきの」

東くんが口を開く。

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「え?」

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「……避けてた理由」

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(……やっぱり)

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「……その」

言葉が詰まる。

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でも、少しだけ勇気を出す。

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「意識、しちゃって」

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「……何を」

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(……もう)

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「東くんのこと」

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言ってしまった。

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空気が止まる。

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(やばい……)

顔が一気に熱くなる。

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でも——

「……そうか」

それだけ。

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でも、その声は少しだけ低くて。

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「……俺も」

ぽつりと、続いた。

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「え……?」

思わず足を止める。

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東くんは前を見たまま。

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「……なんか、変だと思った」

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それだけ。

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(それって……)

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言葉にはなってない。

でも——

ちゃんと、伝わってくる。

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並んで歩く距離。

さっきより、少しだけ近い。

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言葉は少ないまま。

でも——

前よりずっと、気持ちは近かった。

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