📖 第11話:近いのに遠い
次の日。
目が覚めてすぐに思った。
(……好きかも)
その言葉が、頭から離れない。
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教室に向かう足取りが、いつもより少しだけ重い。
(どうしよう……)
気づいてしまった。
自分の気持ちに。
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教室に入る。
自然と隣を見る。
東 言くんは、もう座っていた。
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(……いつも通りだ)
変わらない。
何も知らないみたいに。
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「……おはよ」
声が少しだけぎこちない。
「……ああ」
いつも通りの返事。
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それだけなのに。
(無理……意識する)
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授業中。
ノートを書こうとしても、集中できない。
(どうやって話してたっけ……)
昨日までは普通にできていたことが、
急に難しくなる。
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ふと、シャーペンを落とす。
コロッ、と床に転がる。
「あ……」
拾おうとした瞬間、
また、先に手が伸びた。
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「……ほら」
東くん。
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「ありがとう」
受け取るとき、指が触れそうになって、
思わず手を引く。
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「……?」
少し不思議そうな顔。
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「な、なんでもない」
慌てて前を向く。
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(何やってるの私……)
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昼休み。
今日はやけに静かに感じる。
隣にいるのに、距離が遠い気がする。
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(こんなの嫌だな……)
せっかく近づいたのに。
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「……今日」
ぽつりと声。
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「え?」
東くんがこちらを見ていた。
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「……避けてるだろ」
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(……バレてる)
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「ち、違うよ!」
思わず強めに言ってしまう。
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「……そうか」
でも、それ以上は何も言わない。
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その態度が、逆に苦しくなる。
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(違うのに……)
(避けたいわけじゃないのに)
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でも——
「……」
言葉が出てこない。
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少しの沈黙。
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「……ならいい」
ぽつりと一言。
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(よくないよ……)
心の中で思う。
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でも、口に出せない。
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午後の授業も、どこか上の空。
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放課後。
帰りの準備をしながら、決める。
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(このままは嫌)
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隣を見る。
東くんは、もう立ち上がろうとしていた。
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「……東くん」
声をかける。
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「……?」
振り返る。
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少しだけ、緊張する。
でも——
「今日、一緒に帰っていい?」
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言えた。
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一瞬の間。
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「……別に」
いつもの言葉。
でも——
「……来い」
小さく付け足される。
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(よかった……)
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並んで歩く帰り道。
今日は少しだけ静か。
でも、それは嫌な静けさじゃない。
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しばらくして。
「……さっきの」
東くんが口を開く。
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「え?」
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「……避けてた理由」
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(……やっぱり)
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「……その」
言葉が詰まる。
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でも、少しだけ勇気を出す。
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「意識、しちゃって」
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「……何を」
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(……もう)
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「東くんのこと」
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言ってしまった。
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空気が止まる。
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(やばい……)
顔が一気に熱くなる。
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でも——
「……そうか」
それだけ。
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でも、その声は少しだけ低くて。
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「……俺も」
ぽつりと、続いた。
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「え……?」
思わず足を止める。
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東くんは前を見たまま。
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「……なんか、変だと思った」
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それだけ。
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(それって……)
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言葉にはなってない。
でも——
ちゃんと、伝わってくる。
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並んで歩く距離。
さっきより、少しだけ近い。
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言葉は少ないまま。
でも——
前よりずっと、気持ちは近かった。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。