それは意外な一言だった。
お前もちゃんと人間に被害与えてんじゃん。
根は良い奴なのは分かるけど、
沢山の人を殺している以上、許されないこともある。
目の前に居るやつが俺でよかった。
レトさんだったら今ブチ切れて
店内が収集つかないことになってるぞ。
こちらが少し怒っていたのが気取られたらしい。
困ったような弱々しい声で謝り、反省の態度を見せる。
ため息をひとつ吐いてから、
そう言って続けた。
この話には続きがある。
俺は、間に入らず、ずっと聞いていた。
俺の質問の答えがきっと出てくると思ったから。
プルルルル、
スマホの着信音で言おうとしたことがかき消される。
いや、すげぇ気になんのに!!!!
間が悪いなぁ、と零しながらこちらに尋ねる。
スマホは一応連絡用で持っている。
主に電話、それ以外は音声入力。
目が見えないとなるとやっぱりそういう所は不便だ。
スマホの画面の方をガッチマンに向ける。
文字が読めないため、
確認してもらうにはこの手しかないのだ。
音質が悪い、というか荒れている。
そこで電話は切れた。
ツー、ツー、ツー、
カフェの入口の扉の隣で、
電話が切れた音をジッと聞いている。
そうだ。俺は、レトさんと
うっしーをガッチさんから逃がすってのを
作戦してたんだ。
忘れていた。本気だとは思わなかった。
冷や汗が輪郭を伝っていくのが分かる。
先程の話を聞いてからだと、
危機感がまた段違いだ。
大声でドアを開けて叫ぶ。
店員さんは相当驚いた用で、皿がパリン、
とわれた音が何処かで聞こえた。
すいません、と心の中で謝りながら
レジに1000円札を2枚叩き付けたあと、
ガッチさんの手を強引に引っ張って連れていく。
言うべきか?言うべきじゃないのか?
俺がレトさん側に立ってるとしても、
家まで走りながら、結局そう伝えた。
"かもしれない"はどこまで行っても"かもしれない"だ。
でも今は非常事態。
言わざるを得な____
その瞬間、怒りの感情を俺は視覚で判断出来ることを知る。
肌で触れるのが痛い程のオーラが真隣から発せられている。
"俺じゃなかったら、このオーラだけで死んでいた。"
そう俺の感覚が判断するほど、
あのビルの時と同じような覇気。
俺は人の感情など表情では分からないため、
いつも声色で判断しているのだが、
音だけじゃない。こればっかりは分かる。透けて見える。
殺意のこもった怒りだ。
俺は恐怖を覚えた。単純に怖かった。
擬態をしていた時とは全く違う。
やはりこの男は人間ではないのだと再確認する。
詰めたはずの距離が離れていく。
寂しかった。...寂しかった?
俺は、実はこの男と仲良くなりたかったのかもしれない。
恨みがあるのは禍津日神だけだから。
俺は200年生きてる。
でもこんな奴を見たのは初めてで。
俺にはあまり友達って言えるやつがいないから、
きっとこいつなら分かってくれるかなって。
このオーラ量はまずい。
色んな人に被害が出る。
俺が少しでもくいとめなければ。
必死だった。
走りながら、呼吸も惜しいほどだった。
でも、全部本心だった。
暫くは沈黙だった。
でも、俺は直ぐに気づく。
オーラ量が明らかに減っていくからだ。
怨霊らしいオーラではなく、
人間に擬態している時の量に戻っていく。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。