1時32分
時計を確認した丁度その時
さっきまで座って見ていただけの友人が口火を切る
コンクリートの地面にジリジリと熱が籠る日
画面越しに見ていた青空が揺れる
そう言ってブランコの安全柵に腰を置き
無造作に足を揺らす
不満気な顔を隠そうともしない
こうなれば相手をしないと、そのうち邪魔をしてくるのだ
長い付き合い故か、こういう予感は当たってしまう
溜息を1つ吐いて、手元の画面に向き直り口を開く
もしも、明日世界が終わるとしたら
1日、時間が残されていたとしたら
パシャ
人が居ない公園は思ったより静かで、音が響いた
撮った写真はまだ白飛びしていて、空の青が斑に見える
また失敗だ
もう少し光量を下げないと
あぁ、そうだ
話の途中だった
お寿司屋さん行って、そしたら……
パシャ
さっきよりもマシになったけれど
まだ写真は白に染まって、被写体はよく見えない
光量をありったけ下げて
もう一度空にスマホを構える
今度は、よく見える
パシャ
三度目の正直、とばかりに
写真にはくっきりと、溢れんばかりの流星群が写っている
そのどれもが
見たことないほど大きく
眩い光を纏って
こちらに向かってきていて
午前1時台とは思えないほどの青空は
光量を上げすぎた写真のように白み始めている
そう言いながら、画像を片手に隣に腰を降ろす
空を見上げる
さっきよりも白く光っている
それでも、墜ちてくる光のひとつひとつが
くっきりと、煌めく
コォォォォォ____
さっきまでは無かった、音が聞こえる
聞いたことはないけれど
何となく、星々が墜ちてくる音だと理解した
時計の長針は、もうとっくに10を過ぎている
まもなく、あの光達がここに墜ちて
人間も、動物も、植物も、いなくなってしまうのだろう
美味しいお寿司も、チューリップの花畑も
このスマホも、中に入ってる写真も
なんてことない会話も、初めて見た涙も
私達がいた証は、どこにも遺らない
不思議な感覚だ
漠然とした諦めと、深い悲しみと
少しの後悔が胸の奥でぐちゃぐちゃに蠢いている
もしも、世界が終わるのが明日だったとして
あと1日、猶予があったとして
果たしてこれは、少しでも落ち着くのだろうか
何度も聞いた声のトーンに、横を向く
深い水色の瞳が、こちらを見据えている
もう時間は殆どないのだと
頭上の流星群の大きさを見れば明らかである
そして
何となく、名前を呼ばれるのは最後なのだろうと
そんな気がした
白の空の下で、光の世界の中で
地面と一緒に、じりじりと身体が熱を帯びて
動いて、上がって、集まって
深い水色が、期待とも言えるような光を纏う
世界が終わるまで、あと5分
![みるくる[暇T中毒]さんのアイコン画像](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/4f90d383eb7f955de5a7d487aae6bba726747d85/user-icon/01JQ6YAXBRV2XCKY2TTQ0XRQ5Q_resized_192x192.jpg)











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!