第25話

蝶屋敷
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2024/12/17 07:47 更新
<胡蝶side>
それから私は、柱合会議に最後まで参加し、蝶屋敷に帰った。

外はすっかり暗くなっており、私の仕事の時間が近づいてくる。

だが、まだ任務地に行くのには時間がある。

その間、先に行かせた竈門くんの様子を見に行こうと思ったのだ。

彼には、『あること』ができると思ったから。

そう、鬼殺隊柱合裁判の様子を見て思ったから。
胡蝶しのぶ
ただいま。
私は、蝶屋敷に入って中にそう声をかける。

すると、ひとつの病室の中から、ひょっこりと1人の少女が顔を出した。

頭の横で高い位置にふたつ結びをしており、その結び目に青色の蝶の髪飾りをつけた、少し厳しそうな顔の少女。
神崎アオイ
おかえりなさいませ、しのぶ様。
アオイだ。
胡蝶しのぶ
ただいま。お留守番ありがとう。
私が礼を言うと、アオイは微かに頬を染めた。
神崎アオイ
いいえ、これくらい大したことではありません。
だが、すぐにそんなことを言ってそっぽを向いてしまう。

私はその相変わらずの様子に少しだけ笑みを漏らした。

だが私は、自分が何のために任務に行く前に蝶屋敷に帰ってきたのかを思い出し、口を開く。
胡蝶しのぶ
アオイ。今日、新たに1人患者が来たでしょう?その人の様子はどう?
私が聞くと、アオイは少し考えた後、「ああ、あの人か」と言うような顔をした。
神崎アオイ
炭治郎さんですね。炭治郎さんなら、同期らしかった善逸さんと伊之助さんと同じ病室で、喜んでおられましたよ。その後は、疲れからかすぐに眠ってしまいましたが。
胡蝶しのぶ
そうですか。
炭治郎くんの病室は、私が決めたわけではない。

私は、空いているところを選んでそこに運ぶようにアオイに言っておいただけだ。

だが、その病室に、同期の、もう死んだかもしれないと思っていたはずの人達がいれば、それは喜ぶだろう。
胡蝶しのぶ
禰豆子さんは?
神崎アオイ
言われた通り、部屋を一室、暗くして貸し出しました。箱ごと置いてきたので、好きなようにしているかと。
胡蝶しのぶ
そう、ありがとう。
私が礼を言うと、アオイは少しだけ微笑んだ。

だが、すぐにいつものツンとした表情に戻り、「では」と口を開く。
神崎アオイ
では、私は明日の朝餉の下準備をしてきます。しのぶ様、任務、お気を付けて行ってらっしゃいませ。
アオイは、少し早口でそう言った後、私に会釈をしてキッチンへ向かった。

私はその背中を見送りながら、任務へと向かう準備をする。

早く終わらせて帰ってこよう、と思った。
その次の週の昼間。

私は機能回復訓練の説明ついでに炭治郎くん達の様子を見に行こうかと、診察室を出た。

そして、炭治郎くん達のいる病室に入る。

そこでは、那田蜘蛛山で女の鬼に繭玉で囚われていた隊士が、炭治郎くん達のお見舞いに来ていた。
男性
……柱合会議に呼ばれてさ。最近の隊士は質が落ちてるってみんなピリピリしててさ。あいつの育手は誰だ、こいつの育手は誰だって。そんなの俺に聞かれてもわかんねぇしなぁ。ホント、怖すぎだよ、柱。
そんなことを炭治郎くん達に愚痴っている男性隊士に、私はそっと近寄って行った。

私に気がついた炭治郎くんの顔が、みるみる強ばっていく。

男性隊士が、柱のことを愚痴っているのを私に聞かれることを気にしているんだろう。

_____残念、もう聞こえてしまっていますよ。

そう思いながら、私は男性隊士に声をかける。
胡蝶しのぶ
こんにちは。
すると、男性隊士は面白いほど飛び上がって、慌てて椅子から立ち上がった。
男性
アッ!柱!胡蝶様!!
その慌てように私は思わず吹き出しそうになる。

そんなに慌てなくても平気なのに。

だが、私はそんなことを表情には出さず、にっこりと微笑んで男性隊士にもう一度同じことを言った。
胡蝶しのぶ
こんにちは。
男性
アッ、どうも〜、さようなら〜!!
男性隊士は、柱のことを愚痴っていたことを自覚しているのか、顔を引き攣らせながらそう言って、物凄い勢いで帰って行った。
胡蝶しのぶ
あらあら、さようなら〜!
そして私は、炭治郎くん達に向き直って、機能回復訓練の話をする。

炭治郎くんと伊之助くんは明日から、善逸くんは少し遅れて参加することを伝えると、私はその病室を出た。
炭治郎くん達は、あの訛った身体には地獄のような訓練に、どのような姿勢を見せてくれるのだろう。

それを想像して、私は廊下で小さく笑い声を零した。
機能回復訓練の様子は、散々だった。

3人共、最初はやる気があったようだけれど、負け続ける日々にとうとう心が折れてしまったのか、最終的に炭治郎くん1人になってしまった。

でも、炭治郎くんは諦めずに毎日訓練に参加し、私は凄いと思う。

ある日から、炭治郎くんは全集中の呼吸をしながら訓練に参加するようになった。

きよ達に何があったのか聞いてみると、「四六時中、全集中の呼吸をしながら生活していると、もっと強くなれる」と教えたらしい。
私は、それを早速実践する炭治郎くんに目をやりながら、微笑む。

何度負けようとも、何度全集中の呼吸が途切れてしまっても、諦めずに努力する炭治郎くんを見て、やはり『あのこと』を言ってみようと思った。
もし、『あのこと』を言ったら、炭治郎くんはどんな反応を示すだろう。

きっと、あの優しい少年のことだ。

私の考えも全て認めて、協力してくれるに違いない。

私はそう思い、ふと目を伏せた。
聞けば、炭治郎くんは毎晩、蝶屋敷の屋根の上で全集中の呼吸を四六時中するための練習をしているらしい。

今夜、任務の合間を縫ってそこに行ってみようと思う。

炭治郎くんに、『あのこと』を話すために。

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