第78話

77.
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2024/05/20 14:00
   狐崎side











その帰り道に加山たちの溜まり場に行った


堂々と入ってくる私に


そこらじゅうの雑魚はみんなして構えるから



「お前らなんかに興味ないから」



とだけ吐き捨てた。


大きな部屋に出て、すぐ近くにいた男に



「加山呼んでこい」



そう伝えただけなのに


鉄パイプをふりかざして襲ってくるから


ガラ空きの鳩尾目掛けて膝を入れた


女が一人で丸腰できてんのに


恥ずかしくないのか、と笑えてくる。



「猿が、」



うずくまる体にそう吐き捨てれば


その後ろからノロノロと大きな身体が近づく



加山「よお、狐崎、餌もたらしてないのに、お前からくるとはなあ」

「何?嬉しい?」

加山「もちろんだよ、あいつの調子はどう?俺らが一回思い知らせてやったんだよ」



殺意は増すばかりだったけど


今やるには準備不足すぎる



「そのお返し、申込に来た」

加山「懲りねえんだな」

「明後日の10時にここで」



ダラダラと話し込む気もない


背を向けた私を


加山は呼び止める



加山「俺は、お前のこと許したつもりはないし、お前が正しいとは絶対に思わねえから」



ゆっくりと振り向いて


目を合わせる


加山とだって、もう少し上手く付き合う方法があったかもしれない


そんなこと考えたって無駄だけど、


思ってしまう


もしかしたら、全部私が悪いのかもしれないと、


でももう引き返せないし、過去にも戻れない。


それが現実で、それが今。


この現実で私が守りたいのは


北斗の隣にいる時間。


ただそれだけだ。



「あっそ」



それから廃工場を出た


わざと明後日にしたのは


なんんとなく北斗との一日を過ごして


やっぱりここしかないと再確認したかったからだと思う


次の日、いつもと同じように学校に行って


加山たちは来ていなかった。


北斗とおはようと言葉を交わし


奢るから、と店に連れて行って


いつもみたいにおっさんたちにもまれながら


北斗は楽しそうだった。


会計をしようとすれば、連れの子からもうもらったなんて言うから


すごく驚いた。


北斗がどうゆう意図で払ってくれたのは知らないけど


ありがとうの返事はいつも通りそっけなかった。


バイクに乗せて、北斗の家まで


この時間は割と好きだ


会話もなく、家に着いて


その後ろ姿を反射的に呼び止めていた


明日、会わないことは分かっていたけど


いつもみたいに、言わないといけない気がした



「また明日ね、」



北斗は笑って返してくれて


なんかもうそれだけで一杯一杯で


もしも、明日で全てが終わっても


私と北斗のこの関係とかまで


全てが何も残らずになくなってっも


もうそれでいいと思えるほど


幸せでもう何も要らなかった。












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