第5話

06:00
106
2026/09/17 09:00 更新












水紋.
みんなやっほー!!





 自殺予告により荒れ狂ったネットの海に、
 またスイが現れた。




リスナー
やっほーじゃない
リスナー
やっほーじゃないんだけど
リスナー
なんでそんな呑気なの
リスナー
1時間空けてすぐ配信?





 コメント一つ一つにリスナーの感情が滲み、
 伝わってくる。




水紋.
あっはは笑
みんな動揺しすぎ!





 流れるコメントの海を嬉しそうに目で追っていく。
 困惑、怒り、恐怖、逃避、様々なリスナーの様子を
 感じ取れる。

 ふと同接数に目が行けば、同接数10万の数字が
 見えた。

 珍しい、その程度に考えた。
 普段の同接数はピーク時間でも数万程度。二桁万は
 心底珍しい。

 ましてや朝。
 ネットの人間なんて今の時間はほとんどが寝ていて、
 この時間帯は数千いれば良いほうだろう。




水紋.
いっぱいいるね〜!
いつも皆寝てる時間じゃないの?あっ、もしかして夜更かし?笑
仲間じゃ〜ん。
リスナー
違うて
リスナー
反応おかしい
リスナー
はよ説明
リスナー
ねぇ冗談だよね?
水紋.
まぁまぁ落ち着きなって。





 リスナーとこのライバーの温度は天地ほどの差が
 あった。

 この配信を見ているであろうリスナーたちは今、
 現実を受け止めきれず、必死にこれが現実ではない
 証拠を探しているはずなのに。

 当の本人は何を考えているのか。




水紋.
みんなこの数時間どうだったー?
僕のこと考えてくれた?そうだったら嬉しいなぁ。
リスナー
考えるよそりゃ
リスナー
寝れてないんだけど
リスナー
ふざけんなって
リスナー
気引きたかっただけ?
水紋.
僕9月1日に死ぬから。自殺します。





 配信上に乗る彼はひどく笑顔だった。
 この数年の中で最も清々しく見えた。

 声色は優しさそのものなのに、リスナーに現実を
 突きつける鋭い一言だった。




リスナー
なんで?
リスナー
頼むから嘘だって言って
リスナー
今ならネタバラシしても許してやるって
リスナー
やめてお願いだから
水紋.
あと〜……20時間ないくらい?かな。
それまでは出来るだけ配信取るから!
最後までいっぱい話そーねー!
リスナー
無理だろ
リスナー
まだスイの配信いっぱい見たいよ
リスナー
考え直して
リスナー
なんで死ぬの?
水紋.
なんでって……理由はないよ。ただ死にたいから、それだけ。
水紋.
やりたいことやる!それだけだよ。
リスナー
やりたいことって……
リスナー
死ぬことは別だろ
リスナー
衝動的なことならまだ間に合うよ
水紋.
みんな引き止めてくれて嬉しいよ。


















水紋.
でも僕決めたからさ。





 その言葉が落ちた瞬間、わずかにコメントが止む。

 いつもと変わらない声色でなんでもないことの
 ように衝撃的な言葉が次々と落ちていく。

 その間もスイの表情も声色も変わらない。




水紋.
そろそろ気が済んだかなー。
質問タイム終わりにしていーい?
リスナー
まだ聞きたいことある
?
なにか辛いことでもあった?
リスナー
だめ
水紋.
……あれ、





 コメント欄にふと見覚えのある名前が通り過ぎた。

 マウスを掴んでコメントを遡るようにスクロールを
 していく。

 見間違いじゃなければ、あの人が見に来ていた。




水紋.
あ、やっぱり。叶さんだ。














 現在、2026/08/31/06:00。
 残り、18時間。

プリ小説オーディオドラマ