昔、とある湿地帯の一角に《幻想郷》と呼ばれる場所があった。
そこは、エメラルド色の大きな池には色とりどりの蓮の花が咲き誇り、中央にある桟橋はポツンと建っている白い小さな家に向かって伸びていた。
そんな幻想的な風景の中、まだ若い夫婦と赤子が住んでいた。
父親は黒髪を肩に流し、ハンサムだ。
父親を知るものは「普通にハンサム」
「悪戯好きだけど頭が良い」だと言う。
そんな彼の名前はシリウス・ブラック。
母親は絹のような白髪にエメラルドの目をしており、その母親を知るものは「慈悲深く損をするタイプ」「美人で可愛らしい」「賢いのに鼻につかない」「明るく太陽のような人」だと言う。
そんな彼女の名前は、ローズ・ウィンクルム。
ウィンクルム一族は魔法界では有名な旧家であるが、聖28一族に名乗り挙げず辞退を申し込む変わった一族だと言われている。
ーーーそれは、皆に知られてはいけない《秘密》があったからだ。
母の不調を按じる赤子の頭を優しく撫で、ローズは机に向かって手紙を書き出した。
その文面は十枚にものぼる長文で封筒が膨らんでいたが気にもとめず、フクロウを呼び出しては手紙を渡して外へと手放した。
ーーーウィンクルム一族は、一人に一つだけ、あらゆる能力が与えられるーーー
この事が知られれば、魔法界のパワーバランスが崩壊するとさえ言われているのだ。
この秘密を知っているのは、今の時代では本人と血族者、そしてーーー
昔通っていた学校の校長先生。
一癖も二癖もある人だが、この魔法界で最強と謳われる人でもある。
そんな人物に娘に対するお願いごとを書いた手紙を送ったのだ。
ーーーそう、彼女は死を受け入れていた。
窓際に置かれた卓上型カレンダーの今日の日付には大きな丸が付けられていて、カレンダーの隣にある白い百合は綺麗な花瓶に活けられてるものの、じわじわと紅く染まってきていた。
その二つをぼんやりと見つめては悲しい顔をして、ローズとシリウスは今日で一歳の誕生日を迎える娘に言った。
そう言ってローズとシリウスは、娘を一人置いて何処かへと消え去った。
ーーーそして、彼女達はこの家に戻ってくることは無かった。
ダンブルドアは、校長室にて届けられた手紙を読んでは頭を抱えていた。
手紙の内容には、変えられなかった未来の話と送り主である娘の話、そして送り主自身の犠牲ともとれる動向が綴られていた。
その前でセブルス・スネイプが
旧友であり、手紙の送り主…ローズの死を嘆いていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!