第14話

#3-4 嫌な予感
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2025/10/19 13:00 更新









重くなった玄関のドアを 、
手に力を集めて開ける 。

20 秒ほど待ってみたけど 、
あの元気なおかえりが聞こえないから 、
多分なつはまだ帰って来ていない 。

I
今日も 、俺が先だったか 。

つまり 、この広い家に今居るのは 、俺だけ 。
誰からも 、見られてないんだよ 、な ?

靴を乱雑に脱ぎ捨てて 、
重い足取りでリビングへ向かう 。

リュックをローテーブルの上に置き 、
バタンと大きな音を出して 、ソファに倒れる 。

I
疲れた …

夕方だから 、テレビをつけても 、
ほぼニュースしかあっていない 。
おもんないやん 。

ただでさえ現実世界に疲れてるってのに 、
まだ真面目に生きろって言ってんのかよ 。
くそだる 。

腹減ったけど 、まだ夜飯には早いし 、
かといって甘いお菓子を求めてる
わけでもない 。

難しい 。
我儘わがままな自分だな 。

ガチャリ 、とドアが開いたような
音が聞こえた 。

こんな小さい音 、両親が生きていた
頃には聞こえなかったな 。

両親が死んでから 、
なつを幸せに生かすことだけ考えてた 。

中学の時 、なつは 、
いじめられて不登校になった 。

なつは 、小さい頃から 、バッタがとんでる音が
する やらなんやら 、他の奴らにはない 、
聴覚を持っている 。

なつには 、音が過敏かびんに聞こえている 。
だから 、それが原因で 、いじめられた 。

なつにできるだけ寄り添おうと思って 、色々な
話を聞く度 、なぜか俺も聞こえるようになった 。

なつのおかげ 、と言うと 、絶対怒る
だろうなと思って 、直接言ったことはないが 、
そう感じていることは確かだ 。

N
ただいま 、
I
おかえり 。

重い足取りで 、なつがリビングにやって来た 。
やっぱり 、さっきの音はなつが
帰ってきた音だった 。当たり 。

ただいま 、おかえり 、なんていう 、
他愛のない会話を毎日繰り返す 。

俺は 、両親みたいな 、
深い愛情を注ぐことはできないから 。

なんというか 、両親が死んだあの日から 、
どうも感情がなくなってしまったかのようで 。

自分では笑ってるつもりなのに 、
うまく人に感情が伝わらない 。
あの日から 、精一杯なんだ 。

俺も 、できる限りのことは 、多分やっている 。
だけど 、伝わっているかは知らない 。

なつのことだから 、多分 、
気無けない奴だと思われている 。

ごめんな 。
こんな俺が 、兄だなんて 。
なつを守れないよな 。

I
どこ行くん ?
N
部屋 。

そう言って 、なつは 、2 階への階段を上る 。
しっかり手洗いうがいしてから行ってるから 、
別に問題ないけどな 。

昔 、学校帰ってきたら 、なつが 、
お菓子ねだってきてたっけ 。

家には杏仁豆腐あんにんどうふしかなくて 、
いつも一緒に同じやつ食ってた 。

最近は 、そんなことがない 。
高校生だもんな 。
流石に子供すぎるか 笑

というか 、最近よく部屋に居るよな 。
学校に行く時以外は 、ずっと居る気がする 。

なんか 、嫌な予感がする 。
多分間違いじゃない 。
以前の経験があるから 。

なつが 、不登校になる直前くらい 。
ずっと部屋に籠って 、
珍しく俺を部屋に入れさせない時があった 。
あの時は 、まだお菓子ねだってたからな 。

それから少し時間が経つと 、ご飯も食べず 、
風呂にも入らなくなった 。

一応学校には行っていたけど 、
俺とまともに会話することはなかった 。

流石におかしいと思って 、
なつの部屋に強制進入 。

そして 、いじめられてることを知って ...
みたいな 。

今回も 、同じような感じじゃないか ?
ご飯とか風呂はちゃんとしてるけど 、
まともに会話できていない 。

でも 、絶対なんかあってるとは 、
言いきれない 。

高校は 、別室登校だから 、
いじめは起きないはず 。

高校は授業参観がないから 、本当かどうかは
わからないが 、なつが言うに 、
クラスはこさめさんと先生だけらしい 。

先生は 、めっちゃ若いらしくて 、
タメで話すくらい仲が良いらしい 。
一応先生なんだから 、敬語使えよ ...

こさめさんは 、家が近いらしく 、
いつもなつの家まで一緒に来てくれる 。

電車とか 、1 人で乗らせるん怖いから 、
まじで助かってる 。
2 人共 、良い奴っぽい 。

じゃあ 、なぜだろうか 。
俺には 、全くわからない 。

気がつくと 、俺は 、
なつの部屋へ向かっていた 。

さっきまでの疲れは取れたが 、
重い足取りなのは変わらない 。

しかし 、できるだけ早く行きたいという
気持ちを意識して 、
意外と段差が高い階段を上る 。

コンコンコン 、と 3 回ドアをノックする 。
お母さんに教えてもらい 、小さい頃から守る
ようにしている大事な約束事だ 。

ドアをノックしたが 、部屋の中にいるで
あろう 、なつからの返事はない 。

いつもは 、入って良いよと返事をくれるか 、
なつ自身からドアを開けるかしてくれる 。

やはり 、俺の嫌な予感に 、間違いはなさそう 。
前回と同じような状況だ 。

🚪

不安な気持ちがぬぐえず 、前回と同様 、
なつの部屋に強制進入する 。

この方法しかないんだ 、
なつを助けるためには 。

久しぶりに見るなつの部屋は 、
俺が知っていた頃と比べ 、随分荒れていた 。
特に 、ベッドの上 。

俺が昔あげた熊のぬいぐるみは綺麗に
残っている 。
しかし 、それ以外が問題だ 。

薬の瓶の空 、
血のかたまりが 、所々ところどころに濃くついた白のシーツ 、

少ししか中身が減っておらず 、パッケージ以外
まだ綺麗なコスメ 、荒々しく割れた手持ち鏡 。
散々汚れていて 、まるで事故現場のようだ 。

元々なつは整理整頓が苦手な性格だが 、
こんなに散らかるのは 、あの時以来ではない
だろうか 。

それに対して 、勉強机の上は 、とても綺麗に
片付いている 。

昔の教科書やワーク類は 、
見事に教科ごとにわけられている 。

I
おい 、なつッ !!

珍しく 、部屋の窓が開けられていて 、
車の走る音などの外の音が 、よく聞こえる 。

なつは 、大きい音が苦手だから 、窓を
開けたり 、エアコンをつけたりすることも
あまりない 。

なつが 、窓枠に腰掛けている 。
足を大きく揺らしていて 、
今にも落ちそうで恐い 。

勉強机には白い封筒に丁寧な遺書の文字 。
それは 、昔からよく見る 、なつの字だった 。

気付いてしまった 。
なつは 、自殺しようとしている 。










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