私はそうクラスの前で挨拶をした。
入学式はあったものの、ほとんどの生徒は幼稚部からのエスカレーター。
いまさら、自己紹介の必要などない。
そのため、私だけが自己紹介をした。
先生はそう言って教室を出た。
私は指定された席に着いたが、全く落ち着かない。
初めて袖を通したこの緑色のブレザーもまだ、着心地が悪い。
胸元のリボンも、白いシャツも、黒いプリーツスカートも全然、似合ってないんじゃないか。
そういうふうにしか今は思えない。
話しかけてくれたのは、九さん。
薺月はそう言ってくれた。
嬉しかった。
ただただ、嬉しかった。
薺月のおかげで気がだいぶ楽になった。
その後、課題テストを受け、昼になって皆は食堂という名のカフェテラスにむかう。
私は薺月に言われるがまま、カフェテラスへ向かった。
カフェテラスのメニュを見るが普段はありえない金額のメニューが並ぶ。
もちろん、ここで食べるつもりで来たんだけど、食べるものは弁当だ。
黄色い歓声の方へ目を向けると、男子生徒が4人。
みな、私たちとは違うグレーのシャツを来ている。
さらに薺月は詳しく説明してくれた。
今の4人は小さい頃からの幼なじみ。
1人目は、漣優我(さざなみ ゆうが)。
成績はいつもトップとのこと。
続いて、御縁葉酉(みえにし はとり)。
有名な花道の跡取りだそう。
次は、呉羽蓮(くれは れん)。
唯一の3年生でこの4人のリーダーを務めるらしい。
最後に壬生薫(みぶ かおる)
大学病院の医院長の次男だそう。
漣、御縁、壬生の3人は1年生らしい。
漣グループも御縁家も呉羽ホールディングスも壬生大学病院もテレビやニュースで見たことある。
そんな人達がここにいるのか…。
薺月は壬生さんに言われるがままMAL専用の個室に入っていった。
後で聞いた話、薺月は壬生さんの婚約者らしい。
でも何となく、いいなって思った自分がいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!