第14話

夕焼け
6
2024/07/19 10:00 更新
夢だ。なんという悪夢なのだろう。初めて、夢を怖いと感じた。

覚めたとき、あさの規則正しい寝息に、これ以上ないほど安心した。
あさ
あさ
ヨル、どうしたの?
ヨル
ヨル
なんでも……ない……。
あさ
あさ
……じゃあ、なんで泣いてるの?
ヨル
ヨル
え……。
あさに言われて、ようやく、頬に水滴がつたってることに気がつく。

ヨル
ヨル
……怖い夢を見たの。それだけ。
あさ
あさ
ねぇ、ヨル、見て。
あさは、私に寄り添うようにして窓を指さした。窓の外の世界は、辺り一面茜色に染まっていた。
朝焼けとは似ているようで違う、この美しい景色はたしか……。
あさ
あさ
夕焼けだね。
ヨル
ヨル
綺麗……
昼の終わりと、夜の始まりを告げる茜色があさの横顔を照らす。
あさから一番遠い時間が訪れてしまう切なさと、あさと一緒に今日の夜空を見られる喜びを全部混ぜたような光だ。
あさ
あさ
ねぇ、ヨル、私、朝焼けや夕焼けは嫌いだったけど、ヨル会ってから、好きになったよ。青空に負けないくらい、好きになった。
ヨル
ヨル
私も。あさと一緒に見る景色なら、どんな色の、どんな空でも、大好き。
あさ
あさ
え……。もう、恥ずかしいこと言わないでよ……。
ヨル
ヨル
ほんとのことだもん。
そう言って、あさに口付けをする。
あさ、私は本当に、あさと見る空が大好き。一度しか見られなかったけど、この時も、今も、ずっと好き。

あさは今、どうしているかな。
元気でいるかな。
笑顔は枯れてないかな。


ほかの人を深く深く愛して、幸せに、この空を愛せているかな。


だけどできれば、たまに、たまにでいいから、私のことを思い出してくれないかな。

あさが思い出してくれた時、きっと私は、あさを幸せにする何かに、生まれ変われる。

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