第35話

バディの絆
35
2021/02/03 09:00

「先生やめてください!」
「どうしてこんなこと…っ!」

見ていられない。
生徒をこんなに痛めつけてとか楽しいのだろうか。口角が上がっている。
この先生は悪魔か何かなんだろうか。

私たちが止めようと声を出しても、先生は何も言わない。

「やめて!」

金縛りが解けて、私たちの声では無い、誰かの声が聞こえてきた。
私の…バディ相棒の声だ。

その声に反応して先生が止めたのか、彩の声も収まる。

手すりの部分にスーツを着た、私たちに金縛りを仕掛けたであろう長い髪の女性が洗濯された布団のようにぶら下がっていた。

流石、私のバディなだけある。
あいつは、空気を読んだかのように私のピンチに現れる。
本当に…悔しい。

後から晴美も来て、彩の姿に驚きを隠せずにいる。

「先生…こんなことしていいと思ってるんですか?」

利菜も飛び降りて私の隣へと降りた。
その声はとても苛立っているようだった。

「後輩を苦しめた挙句…No.1に手を出すなんて、相当な自信があるんですね。先生。」

利菜はすごい勢いで先生を睨む。

「…へぇ…。
と言う事はあなた方が私に勝てると。なら…」

そう言うと扇子を開いて高く投げた。すると散り散りに扇子が散らばり1つが小さい刃のようになった。

「そうやすやすと捕まらないか。」

私が鞘から刀を抜いて、利菜は鎖を生成した。

「一応言いますが、私はこの学校の教師ですよ。あなた方より…強くないと務まりませんからね。」

先生が言い終わった瞬間、速いスピードで私達に刃が飛んでくる。

それでも、私は動かない。だって…

ガキン!
大きな金属音が聞こえ、利菜の鎖が全ての攻撃を止めていた。

「先生、結構ちゃんとやり合わないと私たちは倒せないと思いますよ?」

利菜は腕を下ろした。
そしてにっこりと作り笑いを見せる。

「へぇ、中々やりますねぇ…一般生徒ならここら辺でもうギブアップなんですが…。」

そしてすぐに刃は飛んでくる。今度は私の方ばかりに。

「…⁈」
利菜が通じないことがわかったからか…。

それでも、利菜は私のことを助けようとしない。
それどころか「愛奈はどうやってこれを防ぐ?」と聞いているようだった。

あぁ、その挑戦受けて立とうじゃないの。

これは刀では防げない。
刀が折れるし、折れなかったとしても、刃こぼれが起きる。

私はそこまで武器直しは得意じゃない。

あなたside

『右、左斜め上、左上、上、右斜め下、目の前、左、左下…と思わせてからの背後…』

愛奈先輩にはまるでスローモーションで見えているのだろうか、と思うくらい全てを避ける。
利菜先輩が助けに出なかった時は、一瞬ヒヤヒヤしたがその必要はないみたいだった。

「…大丈夫。愛奈先輩は…予知を持ってる。」

びっくりして見ると、さっき助けた彩が半目を開けてその様子を見ていた。

「大丈夫なの?」
「うん。

……愛奈先輩の能力、予知。何がどこに飛んでくるか、自分の身にこれから何が起こるのか、それとも他の人に何が起こるのか…未来を全て予知出来る。」

そうか、予知があるから…。この攻撃を全部かわせるんだ。

「私は…愛奈先輩に攻撃を当てた事は一回しかないよ。」

そう静かに、彩は言った。

また愛奈先輩達の方を見ると、刃が朱音先輩の背後を襲っていた。

危ない!

その瞬間、銃撃音が響く。
耳を塞ぎたくなるほどの爆音だったが、それより朱音先輩の状態が気になった。

「あぶないよ…!」
「わ、全然気づかなかった…。ごめん晴美」

晴美先輩が朱音先輩に不安な顔をして近づく。

…何が起こったか、一瞬わからなかった。
だがすぐに晴美先輩が銃を持っていて、理解した。

あの時、刃が朱音先輩を襲おうとした時に、晴美先輩が銃を撃った。
それが見事命中した…。刃は銃撃を受けて、砕けた。

その証拠に朱音先輩の周りにはガラス片のようなキラキラしたものが散らばっている。

そしてそれ以上にびっくりしたのは、朱音先輩と晴美先輩の態度。
朱音先輩は刺されそうになったのもかかわらず、あまり焦っていない。
晴美先輩も余裕がある。

もし1歩間違ったら…。
そう思うととても恐ろしい。

「なんで…。こんな冷静でいられるんだろう…?」

独り言だったが、樹里さんには聞かれていたみたいだった。

「私達は、毎回外に出れば死と隣り合わせで、任務をこなさなきゃいけないから…じゃないかな?」

先輩たちの様子を見ながら樹里さんは続ける。

「私はまだ1年生だし、任務も一回だけしか行ったことないけど…。
その1回だけでわかったよ。
…あぁ、ここに来れば大人の能力者達と変わらないんだ。って。

敵は他の能力者よりも子供だからといって容赦はしなかったし、皆必死。」


あなたside

「先輩達はそんな死の世界任務地に何回も行ったことがあるから…。感覚が麻痺しちゃってるんじゃないかな?」

樹里さんの横顔を見ると少し複雑な表情していた。
それは自分もああなって感覚の麻痺しまうのだろうかという恐怖なのか、はたまた違うことか、分からなかった。

こう考えている間にも先輩達と先生の闘いは続く。

先輩達が押しているようにも見えるが…。
そうではない。

なぜなら先輩の攻撃は1回も先生に当たっていないから。
なんだかんだ言って、苦しい戦いなのかもしれない。
私は専門的なことはわからないけれど、これだけは分かる。

4対1でも押されていない先生は、認めたくないけれど…確かに強い。


*・゜゚・*:.。..。.: *・゜゚・* :.。. .。.:*・゜゚・*

晴美side

この刃、なんでこんないくつもあるのに正確に操れるんだろう。
さほど威力は無いけど、それでもきっと刃だから当たったら怪我は免れない。
弾ける分には弾けるけど、ほとんど休む暇がないし。
しかも、弾かれてはまた戻ってくる。キリがない。

妖力の操り方が…悔しいけど上手すぎる。
刃が邪魔で先生に近づけない…!

私は銃だけでなく、刀も鞘から抜いた。


先生は余裕そうな顔を見せてはいるけど、こんなに刃を操っているから集中力を結構使っているはずだし、結構辛いはず。

先生自体に何か攻撃を仕掛けたりしたら、注目がそっちにぶれて少し鈍くなるかもしれない。
そうしたら、利菜や愛奈も先生自体に攻撃しやすくなる。
4人で一気に先生を追い詰めることができるはず!
それだと私1人じゃどうにもならないから…

『朱音…気づいて!』

心の中で呼びかけて、朱音の方を見ると、朱音も少し私に目配せをした。
 
気づいてくれてる。

バディになると意思疎通ができるようになって、敵に気づかれずに戦略を組むことができる。

『私が、この刃をどうにかする。だから朱音は先生に攻撃を仕掛けて!』

なるべく手短にそう呼びかける。
その瞬間にいつものようにゴーグルを渡した。

これをしないと欠片が朱音の目に入ってしまうから。

『分かった。
あと10秒数えたら、そのまままっすぐ向かっていくから。
…いくよ。』

朱音は狙いを定めたようで先生を1回見た。
カウントダウンを朱音が始めて、私も準備をする。

『10.9.8.7.6.5.4.3.2.1…0』

その瞬間朱音は先生に向かって走り出し、私は刀を地面に落とし、銃を両手に構える。

朱音の目の前に現れる刃を撃つ。






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追加情報!

根花 晴美
身長…161㎝

塚田 利菜
身長…163㎝

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