第8話

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2021/12/14 21:36




翌朝、普段のメロディとはかけ離れたメロディで目を覚ます。




朝は優雅に目を覚ましたいから、とクラシックをアラームに設定していたはずなのに、何故か耳に入るのはとある可愛い子の可愛い声。




ミンジュ
ミンジュ
あなたのニックネームおんにぃ...もう8時...ですよ〜...




...何その可愛すぎる声は。寝たフリに限るわ。




懸命に私を起こそうと身体を揺らしてくるけど、寝返りを打つふりをして背を向けてみる。




しばらくずっと私を呼ぶ溶けたような声が聞こえるだけで、流石の可愛すぎるASMRに再度意識を手放しかけた時。




驚いた事に突然天井側の肩を引かれて無理矢理仰向けに戻される。




おっ...え、意外と強引なんですねミンジュさん...




少し薄目を開けてミンジュの様子を伺っていると、目を擦りながら早く起きて...オンニ...と寝起きの声でずっと私の手を握っては離してを繰り返してる。




...流石に、起きようか笑




わざと今起きましたよ風を装って体を起こすと、突然笑顔になっておはようございます...!と挨拶してくれる健気な子。




ミンジュ
ミンジュ
あなたのニックネームおんに、今日はどこへ行くんですか?
あなた
んとね〜...ベッド、買いに行こうか
あなた
それとミンジュの服と欲しいものとかも。あ、携帯買おっか?連絡できた方がいいよね
あなた
あとは化粧品とか?ミンジュが化粧したら絶対可愛いよね
あなた
あ、そうだ、美容院行ってトリートメントもしてもらお。せっかく綺麗な髪してるのに傷んでるの目立っちゃもったいないし。
あなた
後は〜......なんかある?欲しいもの
ミンジュ
ミンジュ
い、いえ...逆にそんなに沢山大丈夫ですか...?
あなた
勿論。一人暮らしだったからお金は余るほどあるしね笑
あなた
じゃあまずは朝ごはん食べましょうか。今日は私が作るよ
ミンジュ
ミンジュ
いやっ!ダメです!朝ごはんは私が!
あなた
でもここ二日ずっと作ってもらってるし...
ミンジュ
ミンジュ
私が作りたいんです、お願いですからまだ寝ててください!
あなた
え、いや寝てちゃだめじゃ...ぅわっ!
ミンジュ
ミンジュ
いいですか?絶対手伝いに来ようとか思わないでくださいね、起こしに来るまで寝ててくださいね?
あなた
あ......了解です...




せっかく起こした身体を勢いよく押し倒されてしまえば、きっと無意識なんだろうけど彼女が私を襲ってるような構図が出来上がる。




全くその事に気付いていない様子の彼女は、そのまま私の肩をベッドに押し付けながら絶対に手伝うなよと。




2、3回程念を押してから彼女は私の上から降りて、わざわざご丁寧に掛け布団をかけてキッチンへと向かっていった。




...下から見ても可愛いって何?




ローアングルってどんな美人でもブスになるって思ってたけど、あれはもしや美人を超越した美人なのでは?




あ〜...もうちょっと押し倒されてたかったな〜...




あんなにオドオドしていた彼女が、ここまでストレートに意見してくれたのは初めてだったから少し戸惑いもある。




まぁそれよりも何よりも可愛さが勝ってるんですけどね




あまりの可愛さに加えそのギャップを突くような寝起きの低音ボイスにやられて寝ようにも寝られない。




開いたままの扉から聞こえてくるキッチンの動く音と彼女の機嫌のよさそうな独り言に耳を貸す。




どうしても私には分からないな、なんであんなにいい子があんな人生を送る羽目になったのか




ていうか、あの美人に手を出す輩がいたのにも驚きだわ。自分如きが触れていいのかって心配にならなかったのかな




そんなことを考えていると、すぐ隣の充電完了した携帯が特有のメロディを鳴らしながら震えた。




朝から電話って誰だ...と、少し瞑りかけていた目を開き液晶に目を向けるとどうやら咲良の心配が的中したよう。




布団の中に潜り、キッチンの音を遮断してからその着信をとる。




あなた
もしもし...?
チェウォン
チェウォン
おぉ〜...珍しいね、休みの日にこんな早くから起きてるの
あなた
おはよ...まぁね...笑
あなた
どしたの?朝から電話なんて
チェウォン
チェウォン
あ〜...あの、さ。今入ってもいいかな...?
あなた
......は?家?私の?
チェウォン
チェウォン
...家出、してきました
あなた
いやっ...は?!





















家出...大学生が、家出...?









































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