第22話

VS サイレンヘッド with Grey, Red, Pink
42
2025/10/14 22:08 更新








『バケモノの部落みたいな場所がある、既に人が何人も殺されている、壊滅させてくれ』
マズル・アルカラム
……という悪夢みたいな依頼が来た。シロネコ公国のお偉いさんからだ
ハンマー・アルカラム
シロネコ公国って言ったら、軍事方面に優れた国じゃない。そんな国の重鎮がどうしてアルカラムに
マズル・アルカラム
ご自慢の軍隊でも駄目だったらしいな。じゃ俺らがどうにか出来るわけなくないか!? 正規軍でも駄目だったんだぞ!一介の傭兵団に何やらせようとしてんだ!
マズル・アルカラム
良いか!? 俺は!休暇中なんだ!誰に何と言われようと俺は休暇中なんだよ!!!!!!! 

ざけんじゃねえブチ殺すぞ!と叫びながら床をゴロゴロ転がる次兄を見て、ハンマーはため息をついた。
ハンマー・アルカラム
副団長ともあろう方が、情けないですよ
マズル・アルカラム
大人だって情けない時あるだろがい!
ハンマー・アルカラム
バレル兄さんが見たら何と言うか
マズル・アルカラム
よし、何が食いたい?好きな物を買ってやろう
バレル・アルカラム
無駄だぞ。全部見ていたからな
マズル・アルカラム
イヤ──────ッ!

甲高い叫び声を上げて跳ね起きるマズル。そっくり同じ顔でニヤつく兄妹を見て、彼は悟った。

ハンマーは最初からバレルがいた事を知った上で、黙っていたのだと。
マズル・アルカラム
ハンマーお前ぇぇえ!知ってたんなら言えやぁぁああああ!
ハンマー・アルカラム
あら何の事でしょう……ッフ
マズル・アルカラム
笑うな!ハンマーのバカ、もう知らない!

ギャアギャアと文句を叫び散らしながら、マズルはドアを吹っ飛ばす勢いで出ていった。

葉巻の煙をくゆらせ、バレルは呆れたように肩を竦める。
バレル・アルカラム
まだまだガキだな。俺と同じ年のくせに
ハンマー・アルカラム
バレル兄さんと比べたら、どんな同年代の男でも子供だと思うわ

すると玄関のチャイムが鳴った。

ハンマーが応対したが、不思議そうにピザを抱えて戻ってきたのを見て、バレルは危うく葉巻を噴き出しかける。
マズル・アルカラム
俺のピザ!
バレル・アルカラム
お前か
マズル・アルカラム
ほら食いながら作戦会議すんぞ!絶対成功させて報酬ガッポリ毟り取ってやる!

早速開封してピザを貪り食う双子の弟を止める。
バレル・アルカラム
せめて皿の上で食え、掃除するのは誰だと思っているんだ








マズル・アルカラム
謎のクリーチャー、ねぇ……またSCPか何かか?
ハンマー・アルカラム
さあ、分からない。添付されている画像も暗い上に画質が粗くて、巨大で人型のような何か……という事しか判別不能

周囲の木々と比べて、そのクリーチャーは人間より遥かに背が高いと分かる。そして頭部は人間のように丸くなく、むしろメガホン感溢れる形状──。
バレル・アルカラム
サイレンヘッドか……?
マズル・アルカラム
ああ、言われてみればそう見えなくもない

サイレンヘッド、非常に背の高い人型クリーチャーである。

​最も特徴的なのはその頭部で、頭の代わりに二つの大きな警報器のスピーカーが取り付けられている。

​森や人里離れた場所に出没し、そのスピーカーから警報音、ラジオの音声、曲、または犠牲者の声などを発して人をおびき寄せたり、獲物を混乱させたりする能力を持つ。

​またこれは諸説あるが、姿を周囲の景色に溶け込ませるような、チートレベルの擬態能力を持つとも言われている。
ハンマー・アルカラム
こんな化け物どうやって退治しろってのよ……
マズル・アルカラム
しかも部落って事はソイツらは集団で行動してる訳だ。一体でも厄介極まりないのに、化け物が集団で襲ってくるのを考えると……
バレル・アルカラム
サイレンヘッドはSCPでもないから、財団の手も借りられんしな

周辺の土地ごと焼き払うか、と物騒な事を言い出すバレル。
マズル・アルカラム
っつかサイレンヘッドって、倒せないタイプの化け物じゃなかったか?
ハンマー・アルカラム
確立された倒し方はなかったと思う
バレル・アルカラム
そうだな。ゲームやら何やらでは、罠を仕掛けて掛かった隙に集中砲火で一時的に無力化する、という手法を取っていたはずだが
マズル・アルカラム
一旦それで行ってみようぜ。本当にサイレンヘッドだったら、その辺一帯を開発禁止・立ち入り厳禁区域に国に指定させれば良い
マズル・アルカラム
依頼自体は『化け物の部落の壊滅』だが、命大事に。生きて帰る事を最優先にして、倒せそうであれば倒す、無理なら何が何でも帰る。これで良いよな、団長

バレルは無言で頷く。
ハンマー・アルカラム
じゃあ留守をよろしくね、バレル兄さん
バレル・アルカラム
必ず無事で帰ってこい

実はバレル、ヴァイスとスターが婚約した瞬間から、長老会の命令で戦場や任務に出向く事を一切禁止されていた。

理由は単純、死なれると困るから。
マズル・アルカラム
行ってきま~す
バレル・アルカラム
……死ぬなよ
ハンマー・アルカラム
兄さんこそ死なないでね

こうして長男を灰色の邸宅に残して、次男と長女はシロネコ公国へ旅立った。















とある森の中。
ハンマー・アルカラム
何だこの霧は、マズル兄さんともアッサリ離れてしまったし……サイレンヘッドの策略に見事にハマったわ。罠にかける暇すらなかった

枯葉の上で立ち往生しながら、ハンマーは森の出口を目指して歩いていた。

しかし歩けど歩けど、出口が見つかる気がしない。

救急車のサイレンのような、獣の唸り声のような奇妙な音がかすかに聞こえる。おそらくサイレンヘッドの声だろう。
ハンマー・アルカラム
歩いていても埒が明かない。座って待機する

側にあった木の根っこに腰掛け、機関銃を抱きしめる。







マズル・アルカラム
…………………………………………ぃ、おーい…………







ハンマー・アルカラム
!!!!!!!!

ガバリと顔を上げるハンマー。

間違いなく兄の声だが、今自分がいるのはサイレンヘッドの巣窟。

機関銃のセーフティを外し、いつでも撃てるよう構える。







マズル・アルカラム
……………………どこだー?…………ぉぉぉぃ……………………








サイレンヘッドは『犠牲者』の声を真似ると聞く。
ハンマー・アルカラム
マズル兄さん……っ!

しかしハンマーは冷静さを失わない。引き金に指をかけたまま慎重にあたりを見回す。いかにもサイレンヘッドが擬態しそうな街灯やスピーカー、柱状の人工物は見当たらない。

静かに立ち上がり、静かに移動し始める。兄の声と反対方向に。

しばらく歩いていると、何の前触れもなく轟音が彼女の耳を貫いた。





   ゴオォォオオォオォオオオ!!!!!!!!!





さっきまで聞いていた獣みたいな唸り声だ。
ハンマー・アルカラム
私からは遠い……ターゲットになったのは兄さんか

救急車のサイレンみたいな音がどんどん遠ざかっていく。

それと同時にハンマーはスピードを上げ、兄の声がした方向から遠ざかる。
ハンマー・アルカラム
当たった、出口だ!








その頃、マズルはハンマーがいた場所よりもずっと奥深くの森にいた。
マズル・アルカラム
何でだよ。ハンマーもいねえし、霧で視界が悪いし、何か寒いし。踏んだり蹴ったりだぜ

軽口を叩きつつ、その目は忙しく動いている。限られた視覚から最大限情報を集め、次にどう動くべきかを探っている。







ハンマー・アルカラム
…………………ぃ、お~い……ぃ……………………ぉ………ぃ…………







そよそよと風に乗って聞こえてくる妹の声に、マズルは思わず苦笑した。
マズル・アルカラム
ハハ、悪趣味な化け物だよな、ったくよぉ

マズルはそう呟き、懐から何かを取り出す。

素早くマッチを擦って火を点け、辺りに派手にばら撒いた。すると激しい光を放ち、バチバチ弾けながら地面の枯葉を跳ね上げ暴れ出す。

ネズミ花火だ。
マズル・アルカラム
もし近くにいるなら、こっちに来るなよハンマー。お前は森を出て助けを呼んでくれ




   ゴオォォオオォオォオオオ!!!!!!!!!




不気味なサイレンの音が次々と近寄ってくる。

光、音、人間の気配、どれに引き寄せられたか知らないが、マズルは機関銃のセーフティを外し、引き金に指をかけた。
マズル・アルカラム
おう化け物、妹の所には行かせねえぞ。食うなら俺を食え……抵抗はするがな

ついに見えた、頭が警報機の化け物サイレンヘッド

マズルは不敵に笑い、用意しておいた耳栓を耳に突っ込む。そして機関銃をサイレンヘッドの頭に向けた。
マズル・アルカラム
アギア傭兵団の切り込み隊長トリガーハッピー、マズル・アルカラム様を舐めるなよ!ヒャッハー!

常人が受けたら頭どころか、一瞬で上半身の原型がなくなるくらいの勢いで連射し続ける。

それでも、サイレンヘッドには少し怯ませる程度しか効果がない。
マズル・アルカラム
ケッ、これだから人外様は嫌いなんだよ。まともな武器じゃ殺せもしねえ

おまけに一対多、もちろんサイレンヘッドが多である。

自分の方が弱い上に数的不利とは、世の中とは理不尽だよなと呟くマズル。

が、諦めるような事はしない。
マズル・アルカラム
ピーポーだのギャアギャアだの、うるせぇな。黙れねぇのかよ

上から降ってくる巨大な手を転がりながら避け、巨大な足を飛び越え、隙あらば斬りかかり乱射する。

辺りにメキメキ、ズズン、と木の折れ倒れる音が響く。
マズル・アルカラム
一応『お前らをぶっ殺せ』って依頼だから、一匹くらい倒さねぇと信用失っちまうんだわ。っつーわけで、俺のために死んでくれ!

悪役のセリフである。

それにサイレンヘッドが「オッケー」と言うはずもなく、ますます熾烈になる攻撃。ギリギリで上からの手を避け、サイレンヘッドたちの死角まで跳ね転がる。
マズル・アルカラム
頼むハンマー、応援を呼んどいてくれよ……
















マズル・アルカラム
ハーッ、ッカハ、くっそ……

戦い続けたマズルだが、さすがに体力の限界が来た。

左腕は折れ、肋骨も何本か逝っている。サイレンヘッドの腕で殴り飛ばされたのに走れる頑丈さには「お前が人外だろ」と言う他ない。




   ゴオォォオオォオォオオオ!!!!!!!!!




後ろからは付かず離れず、サイレンヘッドの雄叫びが追ってくる。速く動けないマズルを嘲笑っているようだ。
マズル・アルカラム
ムカつく、化け物だ、な……本当に……!

垂れてきた鼻血を乱暴に拭い、マズルは木の影に入る。

さっきまで戦っていた場所とは違い、周囲は木が鬱蒼と生い茂る森。戦っていた所も鬱蒼とした森だったが環境破壊により消滅した。

荒くなった息を整え、落ちていた枝を左腕に添え、服を裂いて紐代わりにして縛る。




ハンマー・アルカラム
おおおおおおにいいいいいちゃあああああ




マズル・アルカラム
いい加減にっ、死ねや!

覗き込んできたサイレンヘッドの喉奥に、マズルは手榴弾をまとめて投げ込む。ボフンとくぐもった音で爆発したが、大したダメージはないようだ。
マズル・アルカラム
ッはークソ、死に場所が誰もいねぇ森の奥深くかよ……ツイてねぇ

再び立つが、走る気力も体力もない。機関銃を杖代わりに歩き出す。

頭部の出血も酷いせいで、マズルの意識は段々薄れてきた。
マズル・アルカラム
何とか仕留めたサイレンヘッドはたった一匹……個人戦にしちゃあ大収穫か……?
マズル・アルカラム
ハハ、兄貴に「生きて帰る」ってカッコつけたのに……これ俺マジで死ぬかもしれんわ……
ハンマー・アルカラム
……ぃさん
マズル・アルカラム
またハンマーの声真似しやがって、あのクソキモスピーカー……
ハンマー・アルカラム
副団長、私は本物です
マズル・アルカラム
ファッ!? 

瀕死の重傷とは思えない驚き方をするマズル。

マズル・アルカラム
おま、何でここに!? 
ハンマー・アルカラム
兄さんなら援軍を欲するだろうと思って、他の一族に助けを求めました。赤の兄弟で暇しているカカオ兄さん、ミサイルを撃ちたくてウズウズしていたシファル姉さんが助けてくれるそうです
マズル・アルカラム
いやシファル怖……ミサイル撃ちたくてウズウズって何
カカオ・アルカラム
やあマズル、ハンマー。久しぶりだね……って瀕死じゃないか。よく動けるね
マズル・アルカラム
よおカカオ……ぶっちゃけそろそろ限界だ、万が一俺が意識不明の重体になったらパソコンの中身を厳重にロックしたあとで病院に持ってきてくれ
カカオ・アルカラム
それだけ喋れたら死なないね、死ぬ気も無さそうだし。という訳でこんな物を持ってきたよ

カカオが取り出したのは、何の変哲もないスピーカー。どこに隠し持っていたのだろうか。
ハンマー・アルカラム
それは何ですか、カカオ兄さん
カカオ・アルカラム
周囲の音を解析して、それと逆位相の音波を流せるスグレモノだよ。これであの煩わしいサイレンも無用の長物になる、いくら叫ばれても何も聞こえない
マズル・アルカラム
なるほど、音響兵器には……音響兵器って、か……

カカオがスピーカーのスイッチを入れる。




   ゴオォォオオォオォオオオ!!!!!!!!!




という雄叫びが、一瞬にして静かになった。

サイレンヘッドも心なしか、辺りを見回しながら戸惑っている。
カカオ・アルカラム
更にガーナが最近開発したトリモチ爆弾を持ってきたよ。もちろん本人の許可は取ってある

本当だ。カカオが事情を話すと快諾してくれた。
カカオ・アルカラム
これをサイレンヘッドに投げつけて爆発させよう、木や自分の体にくっついて身動きが取れなくなる
ハンマー・アルカラム
何から何までありがたい
マズル・アルカラム
おぅ……。ハンマー、二時の方角……サイレンヘッドが三体いる、チャンスだ……よく狙え
ハンマー・アルカラム
はい、副団長!

狙いを定め、ハンマーが爆弾を投げる。

正確無比の投球は見事標的に着弾、爆発で飛び散った超強力トリモチがサイレンヘッドにへばりつく。

勝利を確信したような雄叫びが、戸惑ったようなへニャリとしたピーポー音に変わった。それすらスピーカーの効果ですぐに打ち消されたが。
カカオ・アルカラム
よし、今のうちに逃げるよ
ハンマー・アルカラム
はい、カカオ兄さん。そういえばシファル姉さんは
カカオ・アルカラム
ミサイル撃ちたくてウズウズしてるって言われただろう?

カカオはニヤリと笑う。
カカオ・アルカラム
今頃は発射準備を終えて、僕たちが森から脱出するのを今か今かと待っているはずだよ
マズル・アルカラム
ハンマー。俺は今後、桃色の奴らにだけは喧嘩を売らんことにした
ハンマー・アルカラム
それが良いと思う

マズルを背負ったカカオと、自分と兄の銃を持ったハンマーは、森の中を全力で駆け戻る。

スピーカーはマズルが抱えている。効果は続いているので、サイレンヘッドも下手に追うと深手を負うかもしれないと判断したのだろう、追手は来ない。
ハンマー・アルカラム
出口だ!
カカオ・アルカラム
シファル、出たよ!全員無事だ!
シファル・アルカラム
『了解。さあサイレンヘッド、全員まとめて吹き飛んでちょうだいな!』

カカオから連絡を受けたシファルは、意気揚々とスイッチを押す。

空からミサイルが森に落下、爆発し大炎上を起こした。その衝撃で地面が大揺れし、カカオたちまで吹っ飛ぶ。
シファル・アルカラム
『あら、ごめんなさいね』
カカオ・アルカラム
ごめんって思ってないだろ……
シファル・アルカラム
『まあ赤も灰色もこの程度で死ぬ人間じゃないから。さ、マズルはウチに運びましょう。すぐにドクターヘリが着くわ』

シファルの通信が入ると同時に、空からヘリコプターが現れ着陸。パイロットは空色の一族のヘンリーだ。
ヘンリー・アルカラム
本当に瀕死じゃん。灰色は体が鉄か何かで出来てるって思ってたけど、マジで人間だったんだ
マズル・アルカラム
軽口叩いてねぇで……さっさと運べ……
ヘンリー・アルカラム
この状態で喋れるとかやっぱ人間じゃなくない?

小競り合いをしつつ、ヘンリーはマズルの体を手際よくストレッチャーに固定する。さすが何でも屋だ。

ヘリコプターにはハンマー、カカオも同乗し、桃色の一族の拠点に急行する。















ティオ・アルカラム
何があったんだ!どう控えめに見ても瀕死だが!? 
マズル・アルカラム
サイレンヘッドに吹き飛ばされて……肋骨と左腕と頭がやられた
ティオ・アルカラム
頭に関してはイカれたようだな、その状態で動くとか馬鹿のする事だぞ馬鹿野郎!まあ動かなかったら死んでいたが!

口はマズルに説教しつつ、その手は的確に応急処置を進めていく。麻酔薬の投与も素早い。

さすがプロの看護師である。
ティオ・アルカラム
ったく面倒かけやがって、すぐに手術だ!ラッキーな事に外科医の母さんがいるから本職の手術だぞ、喜べこの野郎!助手には俺とカカオだ!
カカオ・アルカラム
え、僕が?この病院のプロの医者に任せたいんだけど?
ティオ・アルカラム
手術くらいやった事あるだろ、我が従兄弟よ。ウチの医者たちにこの重症大馬鹿患者を手術させたら質問攻めに遭うからな。俺が
カカオ・アルカラム
なるほど
ハンマー・アルカラム
マズル兄さんを頼みます
ティオ・アルカラム
任せろ、必ず生かす。俺の前で死ぬ事は許さん、もし死んだら生き返らせてから殺してやるから覚悟しろ
マズル・アルカラム
いや、生き返らせたらそれで良いだろ……

その言葉を最後に、やっと麻酔が効いてきたマズルは意識を飛ばす。
ヘンリー・アルカラム
麻酔効くのに時間かかり過ぎでしょ、やっぱコイツら化け物だよ
ハンマー・アルカラム
失礼な








十数時間後、マズルの手術は終わり、集中治療室に放り込まれた。

カカオはそれなりに疲れたようでチョコを食べまくり、母の助手を務めたティオは、
ティオ・アルカラム
次重傷を負って入院してきたら殺す……

とブツブツ呟いている。
ヘンリー・アルカラム
お疲れ様、ティオ兄さん。はい、甘めのコーヒー。カカオにはカカオ60%のチョコレート
ティオ・アルカラム
気が利くなぁ
カカオ・アルカラム
ありがとう、ヘンリー
ハンマー・アルカラム
本当にありがとうございました……

二人がヘンリーの差し入れに感動していると、マズルの全身に着けられたバイタル機器が警告音を上げ始めた。
ハンマー・アルカラム
兄さん!? 
ティオ・アルカラム
おいおい嘘だろ……
カカオ・アルカラム
ハハハ、ヘンリーが化け物って言った理由がよく分かったよ

なんとマズル、ちょっと長い昼寝から覚めたくらいの気軽さで、
マズル・アルカラム
よう

と全身管まみれのまま目を覚ましたのである。

さすがに起き上がるような事はしないが、それでもこの短時間で目を覚ましたのは化け物だ。
ヘンリー・アルカラム
ハンマーには悪いけど、お前ら灰色ってマジでキモい
マズル・アルカラム
言うじゃねぇか……八つ裂きにしてやる……
ティオ・アルカラム
お前ら二人とも、喧嘩を止めないなら両手足を縛って川に沈めるぞ
マズル・アルカラム
すみませんでした
ヘンリー・アルカラム
退院してからにします








ちなみにその後の経過も極めて順調で、マズルはわずか三週間で退院した。
ティオ・アルカラム
まだ骨にはヒビが入っている状態だから、十分気をつけて過ごすように。脳震盪になるかもしれない事──戦場に出て戦うとか銃を乱射するとか──そういった行為も禁止だ
ティオ・アルカラム
免疫力も低下している可能性があるから、毎週火曜の通院を二ヶ月続けような。命令だぞ
マズル・アルカラム
ハイ
ヘンリー・アルカラム
ド突き合いが出来るのはまだまだ先か……
ティオ・アルカラム
するな。下手したらヘンリーがウチに入院するじゃないか。ハンマー、この馬鹿ツートップをしっかり見張っておけよ
ハンマー・アルカラム
はい、ティオ兄さん
カカオ・アルカラム
凄まじい回復スピードだったねぇ








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