先程からお姉様が私の耳を塞いでいる…
どうしたんだろう…??
これじゃあ,アダムさんのお話が聞き取れないじゃないか…
そう不服そうに思いながらもお姉様は何か思うことがあるようで,「お願いだから!」と訴えかける目がこちらに向くと私は大人しくなるのだった…
アダムさんは高速で喋るのをやめない…
何を言っているのかはさっぱり聞き取れないが…お姉様の顔色を伺うと何だか不適切な言葉を引用しているのは私にも察することが出来た…
暇だ…話をしに来たのに…
何故こんなに話を聞くのだろう…?
アダムさん…なんだか動物みたいだ…
いつかの本で読んだ事がある…
生者の国…には様々な生命を宿した生き物がいるんだとか…フワフワで温かく…触り心地が良い…そう書いてあった…
アダムさんはフワフワではないけれど…
エサをねだる牧場の動物みたいで…そう思うとなんだか暇じゃなくなったような気がした…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!