俺と尾形 は 誰がどう見ても不仲だ
分かり合える訳が無い
なのに、今2人1緒に山に入っている
今 俺と尾形 に 共通するのは
《さっさと終わらそう》
多分それは、尾形 もアシリパ達との行動で
分かっているとは思うが、
そして 俺の優しい声がけはもう一つ 意味がある
その意味ってのは ……
尾形の指さす方を見ると
黒い塊が木にくっ付いている
俺は手持ちの双眼鏡 で見てみる
久々に見た熊 それに、可愛らしい子熊 で
少し気が抜けてしまった が
小熊 の近くには親熊が居る
そして、小熊 を守る為 気性が荒いんだ という事を
思い出した
俺がもっと周囲を警戒してたら、
俺がもっと早く熊に気づいたいたら、
……俺が無能 なばっかりに
土方さん の駒を一つ壊してしまう
土方さん の邪魔をしてしまった。
後ろの熊に気づいた 尾形が銃を向けるが
熊の方が早い 尾形 が引き金を引くより早く
母熊に尾形 が殺される
俺が何とかしなくては、 銃より早いのは………
バッ
俺は尾形 を押し倒し上に覆い被さった
もちろん、羆の攻撃を受けるのは俺だ
ザジュッ グヂャッ…ボタボタボタ
痛みに耐えながら 俺は指示をした
ドッ
俺は隙間から尾形 を投げ出した
投げ出された尾形 に熊が気づく前に
尾形が引き金を引き 熊を撃ち殺した
バンッ
木々に響き 銃声が静かな雪に埋まられた山に木霊する その中 無傷な尾形が近づいてくる
ザッザッ…
少し悔しそうに、どこか気まづそうに
俺を見下ろす
熊肉を取りたい所だが 日が落ち始め
このまま歩き慣れない森を歩くのは危ない
その理由で下山の為歩いていた
ボタボタボタ… ボタボタボタ
その音に尾形が俺の方を振り向いた
怪我 は自己責任 俺もコイツもそれは知ってる
土方陣営 は実力派 弱い奴は利用して捨てられる
俺は土方さん の力になり 共に過したい
だから、強く居ようと今まで努力した
そのお陰で 今も仲間として居れる
欲を言えば 死ぬ時は土方さんに殺されたい
死ぬ場所は土方さん の胸の中が良い
土方さんの為なら俺は心臓を捧げられる
だけど、この場に土方さん は居ない
今頼れるのは 自分自身 と 目の前で血を垂らす俺を
ただ 見ているだけの尾形 だけだ
肩で息をしながらそう強く言う
何方にせよ このまま進んでも下山出来ない
だから、俺は尾形 に指示を出す
尾形が一瞬だけ無言で俺の傷を見つめ
また、周りを見渡す
そう、冷たくは言うが心做しか 何時もよりは
歩幅は狭く歩く速さもゆっくり な気がする
こんな時だけは、少しだけ
尾形を良い奴と勘違いしそうになる
そう、尾形が指を指した先には
森の岩陰に小さな洞窟がある
入口も中も 何とか入れる程の狭さだが、
雨風は凌げそうだった、
二人で潜り込み、身を寄せれば、
冷たい岩肌に血が染みていくのが分かる。
しばらくすると、洞窟の中は俺 の血の匂いで
満ちていく。
暗闇の静けさの中、頭をよぎるのは
土方 さんのことばかり
ここが、明かりの入らない様な場所だから
なのか暗い考えばかりが頭の中に出てくる
暗い場所 だからなのか、
傷が痛む からなのか、
慣れない場所でヘマった からなのか、
嫌な考えばかりが出てくる
俺は 俺は 俺は…
尾形の様に狙撃技術がある訳でも
アシリパの 様に暗号の鍵を握ってる訳でも
牛山の 様に力があって無敗な訳でも
杉本の 様に不死身でもタフネスな訳でも
白石の 様に脱獄王な訳でも
長倉の 様に剣豪でもない
キロランケの 様に真面目でもない ……
土方さん の様な訳でも無い
俺には何があるんだろう、
何が出来るんだろう、
小さな洞窟 の中にある
小石 苔 草 枝 が、俺の傷に触れ
その度に鋭い痛みが広がる
傷口も広がり 呼吸が浅く早くなる
結局 あまり寝付けず 体力は回復しないまま
夜は開けて 俺と尾形は山を下山して
仲間が泊まっている宿へと向かった













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!