第25話

21.川底の洞窟
18
2026/01/31 02:00 更新
怪しげな森を抜け、彼らが次に向かったのはなんと洞窟だった。ここの洞窟はブラックホールのように光すら取り込む真っ暗闇の狭い洞窟とは違って青白い光がほのかに光るコケがあちこちに生え、あらゆる場所から水が流れ、 鍾乳洞しょうにゅうどうのように広い洞窟だ。
シンラ
でっけえぇぇ!!?
あまりの広さに驚いたシンラの叫び声はやまびこのように跳ね返えり、段々と小さくなりながら神秘的な洞窟内を響いた。
奥に奥にへと恐れず進む大はしゃぎな茶髪の跡を追いかけるように洞窟の出口を探していた。
どうやら地図によれば、この先を越えれば私たちの目的地に到着するらしい。
地図を開きながら歩いていると、突然誰かに肩をツンツンとされ、振り向くとサクラだった。
サクラ
ねぇあなたってさ決め台詞とかあるの?
あなた
決め台詞?
思わぬ質問にあなたは一瞬思考が停止しかけた。
決め台詞か…。
小さい頃にそこら辺に落ちてた木の枝でヒーローごっこをしながらカッコいい決め台詞言ってたっけ。
今では懐かしくも痛い思い出だったなぁ。
スイ
僕も気になります
シンラ
俺も気になるなー
サクラ
教えて教えてー!
彼女達は純粋な子供のようにキラキラと目を輝かせた。
本当は言いたくないあなたは他の話題に切り替えてやり過ごしたいのだが、この様子で逃れるのは無理そうだ。
あなた
『あなたのキメ台詞』…とかかな///
全員
おーっ!(−あなた)
躊躇ためらいの末、遂に彼は恥ずかしがりながら言った。
するとシンラとサクラは急に茶番を始めた。
サクラ
えいっ!
シンラ
やられたー
サクラ
『あなたのキメ台詞』
あなた
やめて…恥ずかしいから…/////
あなたをいじってからかっている2人を他所に、スイはキョロキョロと辺りを見回している。何か違和感を感じたらしい。
スイ
何か聞こえません?
彼らも耳を澄ますと洞窟の奥から微かに声が聞こえる。音を頼りに進んでいくと湖の水面に座り込んだ青黒い長髪の女性がシクシクと泣いていた。
サクラ
あのーすみませーん
サクラはゆっくりと歩み寄り、女性に声を変えた。
気がついたのかその女性は振り向くと、大粒の涙を流して目をゴシゴシと拭っていた。
サクラ
うぇぇぇ〜ん
だが、突然サクラは滝のように涙を流して泣き始めた。
さっきまでの彼女の笑顔は一瞬にして泣き顔へと変わってしまった。
あなた
何で急に泣いてるの!?
サクラ
何か勝手に涙がぁぁ
ポケットからハンカチを取り出し何とか涙を拭っても、次から次へとまるで噴水のように止まらない。
ひとまず彼女を安全地帯に避難させることにした。
そやつはバンシーじゃな
泣き顔は見ない方が良いぞ
サクラ
それ早く言ってよぉぉぉ〜
バンシー。
青黒くて長い髪の毛、少しボロい服装、宙に浮いているのが特徴。
主に薄暗い洞察で発見されており、神々しい美声で人々を誘き寄せる。彼女の泣き顔を見た者は、個人差によってはずっと涙が止まらないらしい。
by神さま
あなた
てりぁッ!
魔物だといち早く理解したあなたは剣を抜き、首を狙って素早く振るった。
しかしバンシーの綺麗に手入れされた長い髪で糸も簡単に防がれてしまった。敵の髪の毛は鋼鉄のように硬くて自由自在に伸び縮みできるようで、そう簡単には貫くことは難しい。
スイ
これならどうだッ!
お次にスイがバンシーに魔法を放った。
流石のバンシーでも防ぐのは不可能だと判断したのか急いで攻撃を避け、自身の細い髪の毛同士を束ね合わせてドリルのような形をした髪の毛が空気を切り裂くほどの勢いで私たちめがけて飛んできた。
バンシーとの距離が離れていたためすぐに避けることが出来たが、洞窟の壁に激突した髪の毛は壁の深く刺さってしまい、身動きがとれないようだ。
今がチャンスだと思い、間合いを詰めて攻撃を試みたが、いつの間にか新たに髪の束が数本作られていて安易に近接戦に持ち込むことが出来そうにない。
スイの魔法は簡単に避けられ、私の攻撃は届かず、攻守ともに最強の敵だ。
戦力外のシンラは苔むした岩の後ろに隠れて、敵に見つからないように小さい声で2人を応援している。万が一誰かが怪我をしてもすぐに回復できるように杖を両手で大事そうに持っていた。
一緒に戦いたいという意志はあるのものの、足手まといになるのではと恐れてしまい武者震いが止まらない。
何かないかと周りを見回していると、彼は遠くの方で何かを見つけ、奥の方へ1人で向かった。
サクラ
こっちかな?あっちかな?
なんと安全地帯で休んでいたサクラが加勢しに来た。
未だに涙が止まらないが少しでも戦おうと涙でぼやけた視界でふらふらと千鳥足でバンシーに向かっていた。
サクラ
あだッ
何もないところでつまずいて転んでしまい、愛用のフライパンが宙に舞うと、何と奇跡的にバンシーの頭目掛けて命中した。敵は目を回しながら戦闘不能になった。
サクラ
あれ、フライパンどこ?
涙が止まらないサクラは目が滲んで今の状況を把握できていないようだ。ちなみにあなたとスイは彼女のミラクルに唖然としていた。
シンラ
おーい
奥に変な箱があるよー
洞窟の奥からシンラの大声が響くように聞こえた。
さっきまであそこの岩の後ろに隠れていたはずなのにと少々驚いたが、3人は駆け足で向かった。
くねくねとした道を音を頼りに無事到着すると、そこにはシンラと鍵穴のついた一回り大きな箱がポツンと置いてあった。
あなた
これってもしかして…
スイ
宝箱!?
シンラ
見つけたのは良いんだけどさ
鍵が掛かってて開かないんだよねー
なんとそれは宝箱だった!
しかし残念ながらシンラによると、鍵が掛かっていて開ける事は無理だと言う。鍵なんて道中歩いていたがそれらしきものは見かけてない。
宝箱ごと破壊しようとしても、中身まで壊れてしまう危険性があるので諦めるしか無さそうだ。
残念そうに肩を落として落ち込んでいる3人とは違い、サクラは宝箱の鍵穴を見て何か不思議そうに考え込んでいた。
サクラ
鍵ってもしかしてこれかな?
彼女のポケットからは少し錆びついた鍵が出てきた。
驚いた3人は何故持っているのかサクラに問い詰めると、倒したバンシーから転がり落ちたそうだ。
何に使うか分からなかったようだが、後に使うかもしれないと思いポケットに入れていたそう。
宝箱の鍵穴に鍵を入れて回すとガチャリと音が鳴り、箱をゆっくりと開けると、中には大量の金貨が詰め込まれている。軽く数えても1000G近くありそうだ。
倒した魔物の買取でもせいぜい200Gにも届かない。
全員
おおぉぉぉ〜〜〜!!!
思わぬ収穫に、全員目を輝かせながら宝箱に詰まった金貨を眺めていた。その後金貨を4つの皮袋にぎっしりと詰め、全員一つずつ大事そうに手で抱えて、出口へと目指して運んだ。

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