一気に静寂に包まれる。
江口の「好き」は後輩としての好きだと認識した梅原は、なんてことないように返す。
否、なんてことない様子を全力で演じていた。
梅原は必死に平静を装っていたのにそれを軽々と壊されてしまう。
ああもうこれで終わりかと梅原は断腸の思いで真実を告げることを決断する。
呆れたように笑ったつもりなのだろうが、梅原の目の奥には悲しみが宿っていた。
目が合わない様に俯く。
目の端に見える江口の髪がぼやけて見える。
ぎゅうと握りしめる梅原の手に触れ、ゆっくりと手を開かせ、自分の手を合わせる江口。
え、と声を漏らした江口に赤い糸を説明する梅原。
自分の想いが強くて江口の糸と自分のものを結んでしまったこと、切っても戻ってしまうこと、結ばれているから江口は梅原のことを好きだと錯覚してしまっていること。
…今も手を握られるだけで緊張してしまうし、糸が絡んでしまわないか不安だと続ける。
江口の手があったかくて、苦しいのに握っていたくて。
もう自分が何を言っているのかもわからなくなっている。
ごめんなさいと続けようとした言葉は江口によってかき消された。
え?え?とぶつぶつと呟き首を傾げる江口。
その耳は赤く染まっている。
何でも何も、普通はこんな話を聞いて平然としていられる方がおかしいのではないだろうかと梅原は首を傾げる。
江口は手元にあった酒を煽り、ん〜と考え込むように唸りながら頭を掻いた後、パッと顔を上げる。
簡単なことだと言わんばかりに言い切られてしまう。
こんなのまるで、彼がいう通りに運命みたいじゃないかと錯覚しそうになる。
そんなことはきっとなくて、以前のように冷めた目で向けられるに違いない。
それでも次に糸が繋がった時には、少し素直になっても良いのかもしれないと思えるほどには梅原は絆されていた。
震える声を何とか抑えながら、糸に手をかける。ぶちりと音を立てて切れたそれを見ても、以前ほど心は痛まなかった。
その『次』が来るのも、本当に結ばれるのももうすぐだとはつゆ知らず。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。