第11話

告白
244
2024/06/19 22:50 更新
江口拓也
江口拓也
好きだよ、梅ちゃん
一気に静寂に包まれる。


梅原裕一郎
梅原裕一郎
…お、れも、好きですよ?
江口の「好き」は後輩としての好きだと認識した梅原は、なんてことないように返す。
否、なんてことない様子を全力で演じていた。
江口拓也
江口拓也
ふは、ありがと。
江口拓也
江口拓也
んーでもね、俺の好きは
江口拓也
江口拓也
恋愛としての好きだよ、梅ちゃん
梅原は必死に平静を装っていたのにそれを軽々と壊されてしまう。

ああもうこれで終わりかと梅原は断腸の思いで真実を告げることを決断する。
梅原裕一郎
梅原裕一郎
……ちが、いますよ、それ
呆れたように笑ったつもりなのだろうが、梅原の目の奥には悲しみが宿っていた。
目が合わない様に俯く。
目の端に見える江口の髪がぼやけて見える。
江口拓也
江口拓也
違うって何?
ぎゅうと握りしめる梅原の手に触れ、ゆっくりと手を開かせ、自分の手を合わせる江口。
梅原裕一郎
梅原裕一郎
俺の、せいなんです。






梅原裕一郎
梅原裕一郎
俺が江口さんの事好きなんです。
え、と声を漏らした江口に赤い糸を説明する梅原。

自分の想いが強くて江口の糸と自分のものを結んでしまったこと、切っても戻ってしまうこと、結ばれているから江口は梅原のことを好きだと錯覚してしまっていること。


…今も手を握られるだけで緊張してしまうし、糸が絡んでしまわないか不安だと続ける。
江口の手があったかくて、苦しいのに握っていたくて。
もう自分が何を言っているのかもわからなくなっている。
梅原裕一郎
梅原裕一郎
だから、そう言ってくれるのは嬉しいんですけど…
江口拓也
江口拓也
待って
ごめんなさいと続けようとした言葉は江口によってかき消された。

え?え?とぶつぶつと呟き首を傾げる江口。
その耳は赤く染まっている。
江口拓也
江口拓也
…今俺めっちゃ熱烈に告白されてない?
梅原裕一郎
梅原裕一郎
いえ、俺がお断りしてるんです
江口拓也
江口拓也
なんで!?!?
何でも何も、普通はこんな話を聞いて平然としていられる方がおかしいのではないだろうかと梅原は首を傾げる。

江口は手元にあった酒を煽り、ん〜と考え込むように唸りながら頭を掻いた後、パッと顔を上げる。
江口拓也
江口拓也
良くわかんないけどさ、何回も繋がるってことは運命なんじゃない?
梅原裕一郎
梅原裕一郎
いや、そういう話じゃ…
江口拓也
江口拓也
俺は梅ちゃんが好き。
梅ちゃんは俺が好き。
江口拓也
江口拓也
解決じゃん
簡単なことだと言わんばかりに言い切られてしまう。
こんなのまるで、彼がいう通りに運命みたいじゃないかと錯覚しそうになる。
江口拓也
江口拓也
今、糸繋がってないの?
梅原裕一郎
梅原裕一郎
………つ、ながっ、て、ます
江口拓也
江口拓也
じゃぁ、切っていいよ
江口拓也
江口拓也
明日また繋がっていない時に告白するし
そんなことはきっとなくて、以前のように冷めた目で向けられるに違いない。
それでも次に糸が繋がった時には、少し素直になっても良いのかもしれないと思えるほどには梅原は絆されていた。
梅原裕一郎
梅原裕一郎
約束、ですよ
震える声を何とか抑えながら、糸に手をかける。ぶちりと音を立てて切れたそれを見ても、以前ほど心は痛まなかった。





 その『次』が来るのも、本当に結ばれるのももうすぐだとはつゆ知らず。

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