人生には三度、モテ期が訪れるらしい。
この都市伝説みたいな言葉を最初に聞いたのは、
小学生のとき。
当時は「ふーん、俺には関係ない話だな」で
済ませたけど、今思えば、
あれは預言だったのかもしれない。
なぜなら――
朝の靴箱前。
爽やかな声とともに、俺の視界に現れたのは、
クラスのヒロイン・佐々木七海だった。
青くてふわっとした髪、きらきらの瞳、
女子力120%のふんわり系。
いつもほのかに甘い香りがして、
笑うと頬に小さなえくぼができる、まさに天使。
男子の8割が密かに「今日も尊い……」と拝んでいる
彼女が、なんと、俺に!
……俺に、挨拶してきたのだ。しかも笑顔で!
え? なんで??
俺、寝癖ついてないよな?
昨日ちゃんと風呂入ったし、
制服裏返してないよな!?
前世で徳でも積んだっけ?(記憶にない)
動揺しつつも、なんとか口を動かす。
声が裏返った。死にたい。
でも彼女は「ふふっ」と笑って、
そのまま教室へと去っていった。
ふ、ふふっ!?
あれ、嘲笑じゃないよな?
え、今の、微笑み、だよな?
……え? 待って、これってもしかして――
俺、モテ期来たんじゃね!?
その日は、朝から違和感まみれだった。
教室に入った瞬間、
窓際の席で本を読んでいた森下さんが、
顔を上げて俺に微笑んだ。
ぽんぽん、と自分の隣の席を叩く彼女。
森下さんといえば、クラスでも群れず、
いつも一人で本を読んでるミステリアス系。
俺なんて、
今まで彼女と会話したことすらなかったのに。
何が起きてるんだ……?
そして英語の授業。
ペアワークの相手を決める場面で事件が起こる。
「え~、私、田中くんとやりたい!」
「ちょっと、それ私が言おうと思ってたし!」
「じゃあ、じゃんけんで!」
女子3人による熾烈な田中争奪戦が勃発。
俺は「は?」と呟きながら、
目をぱちぱちさせるしかなかった。
極めつけは、昼休み。
生徒会副会長の美月先輩が、
俺のトレーに唐揚げをそっと乗せてきた。
清楚で成績優秀、運動もできて美人で、
他校の男子からも「幻の女神」と呼ばれている
あの美月先輩が、
俺に、唐揚げを。
なに? 今日は俺の誕生日?
いや、違う。
カレンダー的にも心当たりはない。
……ってことはやっぱりこれ、モテ期だろ!?
放課後、親友の木下とコンビニに寄った帰り道。
俺が息継ぎもなく一気にまくし立てると、
木下はポカリのペットボトルをくわえたまま、
じっと俺を見た。
俺のモテ期、終了のお知らせ。
いや、むしろ最初から来てなかった。
すべて、誤解と噂の産物だった。
でも……もしもほんの一瞬でも、
自分が誰かの目にキラキラと映ったのだとしたら。
それはそれで、悪くない――かもしれない。
つづく

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!