ライブ当日 ──────────。
朝から現場は慌ただしかった
最終リハ前、急な演出変更が入る
スタッフが説明を終え、空気が少し張り詰める
ユジンは一度深呼吸してから言った
ウォニョンの指先が一瞬止まる
その導線は、
ウォニョンがこだわって何度も話し合った部分だった
メンバーも「いいね」って言ってくれたし、
ユジンも知っている
淡々とした声。
いつもなら
“ごめん、急で” の一言がつく
今日はない。
ウォニョンは一瞬だけユジンを見る
間。
ウォニョンの表情がすっと消える
空気が凍る
他のメンバーたちもスマホをいじったり、
話したりしていたのだが一瞬手が止まる
聞き耳を立てる
ユジンの眉がわずかに動く
リーダーの顔
ウォニョンは数秒黙る
ENTJの理性が働く
今は本番前、最終リハの前
その一言。
静かだけど、明らかに冷たい
普段のウォニョンならそういう言い方をしない
だからこそユジンの中で何かが引っかかる
別に、は別にじゃない
普段のユジンもこんな言い方をしないだろう
だけど本番前
やっぱりライブは成功させたい
IVEの一員として。リーダーとして。
だからピリピリしてしまっていた
声は荒げない
でも空気が硬い
ガウルは何事?と2人のやりとりを
レイは心配そうに2人を見つめる
リズとイソは目を合わせて固まる
ウォニョンは静かに言う
ユジンは一瞬言葉を探す
本当は焦っていた
会社の意向も理解できる
でもメンバーの気持ちも守りたい
中立でいなきゃ、と思っていた
それが最適解だった
でもウォニョンには届かない
もうそれ以上言わない
ウォニョンはそのまま立ち上がり楽屋から静かに出て行った
それがユジンにとって1番痛い
ウォニョンの気持ちを優先してあげたい
だけどライブはみんなで作り上げる
ファンに満足してもらわなければならない
もちろんリーダーとして中立的な立場で、
ウォニョンの気持ちのことも考えて無くすではなく
短縮で話し合いを進めた
だからこそ、ユジンもイラッときてしまった
そして最終リハは始まる
2人とも完璧にやる
プロだから
でも目が合わない
タイミングは揃うのに、呼吸が揃わない
楽屋 ───────。
重たい沈黙
ガウルがユジンに小声で聞く
メンバーたちは2人が喧嘩するところを見たことがない
だから今の事態が普通ではないと分かっている
普段ならお互いを想い合って、寄り添いあって、
擦り合わせあっている2人
のはずなのに今日違う
ガウルは最年長としてどうにかして
本番に望まなければと思ったのだ
即答。
でもペットボトルを握る指が強い
クシャっと音を立てて凹んでいる
レイがウォニョンの隣に座る
笑う。
でも目が笑ってない
イソが小さく呟く
リズがそっとイソの手を握る
本番直前 ───────。
ユジンはメンバーを見渡す
────────── アイティン ──────────
全員の声が揃う
ユジンはいつものムードメーカーの声
でもウォニョンだけ、ほんの少し距離がある
その距離にユジンが気づく
胸がざわつく
“まぁいいよ”
あの言い方が頭から離れない
ステージは成功 ───────。
歓声が響く
ウォニョンはちゃんと変更通りに対応した
普段ならみんなわいわいと楽屋に戻る
今は少しぎこちない
ユジンはレイやガウルと
ウォニョンはリズとイソの1歩後ろを
そして楽屋に着く直前、
ガウルがユジンを肘でつついた
それだけ言い、ユジンに目で圧をかける
ちゃんと話し合いなさいとでも言いたげに
全員が楽屋に入った後、ビハインドのための撮影を終わらせ
各自片付けや帰り支度を始めた
ユジンはウォニョンの元へ近づく
ウォニョンはそれに気づく
2人の視線がかち合う
2人は同時に同じことを
止まる
少しだけまた目が合う
ウォニョンは笑った
ウォニョンは一瞬だけ目を伏せる
ウォニョンは空気が悪くならないようにか分からないが
いつものように愛嬌たっぷりに言う
その言葉にユジンの肩がわずかに下がる
ウォニョンは小さく笑う
少し離れたソファーに座っているメンバーたちは
ほっと安心したようだ
ユジンが少しだけ照れたように言う
ウォニョンが頷く
距離が戻る。
ぴったりではないけど、いつものようにちゃんと隣
最初からお互いの隣は決まっていたかのように
運命 ──────────
この言葉がよく似合っているのかもしれない
本人たちも“運命だ” そう思っている
同じ身長
同じ事務所
1日違いの誕生日
IZ*ONEでのデビュー
そしてまたIVEで共に再デビュー
STARSHIPのキャスティングスタッフが
ウォニョンの姉の卒業式に出向いていなかったら
ウォニョンを見つけていなかったら
ウォニョンに声をかけていなかったら
ユジンがあのまま教師を目指していたら
14歳の時、年末歌謡授賞式を見に行ってなかったら
ペンライトが私に向けた光であって欲しいと思わなかったら
自ら会社にメールを送っていなかったら
STARSHIPが1番にユジンに連絡していなかったら
もしかしたら2人は今の形で出会えていなかったかもしれない
いや、2人ならどんな形でも出会っていたかもしれない
2人は運命なのだから。
アンニョンズは喧嘩しない
お互いがすごく大切な存在だから
でも、衝突してもちゃんと戻れる
お互いに反省して、話し合える
それが8年目の関係だった

リクエストありがとうございました!!
本当はもっと大喧嘩シチュエーションで書こうと思ったのですが、アンニョンズの関係性、2人のそれぞれ相手に対する考え方だと怒鳴り合う、言い合うような喧嘩はしないだろうなと思って。冷戦くらいにしちゃいました🙏🏻



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!