締め切り当日の朝
僕はいつもより少し早く出社した
昨日、無理矢理返されたぶん、どこか落ち着かない
でも、今日は1人じゃない
デスクに着くと既に人事部から資料が共有されていた
本文は短い
それだけで胸の奥があったかくなる
午前中は経理側の最終チェック
僕はいつもの丁寧さで数字を追う
隣の席にはリノヒョン
今日は人事フロアじゃなくて、経理側に来ている
2人で同じ画面を見て、同じ数字を確認する
前みたいに遅れてるって焦らない
今日は、並んでる
午後、最終提出
会議室に入る前、手が少し震える
リノヒョンは短く言ってドアを開けた
プレゼンは人事側が主導
でも、経理部分の説明は僕が担当
声は少し小さい、でも止まらない
数字の裏付け
チェック体制の変更点
二重確認の削減
1つずつ、丁寧に、確実に
質疑応答
一瞬、空気が張る
でも、深呼吸して言う
はっきり
静かに、でも自信をもって
会議が終わる
沈黙の後
承認
その二文字が、胸の奥に、どんと落ちる
会議室を出た瞬間
僕はやっと息を吐いた
リノヒョンが、優しく、少し笑う
その言葉を聞いた瞬間、目がじわっと熱くなる
迷いのない声
それは僕にとって、最高の褒め言葉だった
エレベーターの中
リノヒョンは少しだけ間を置いてから言う
その一言で僕の存在が、初めて肯定された気がした
プロジェクト終了の打ち上げは、経理と人事の合同で開かれた
居酒屋の個室、人の数も声の大きさもスンミナにとっては正直しんどい空間
席に着いた瞬間から肩がぎゅっと上がってしまう
周りは職場の話や冗談交じりの軽いノリで盛り上がっている
断るたびに、空気悪くしてないかなって不安になる
グラスを持つ手が少し震える
そんな様子にいち早く気づいたのがリノヒョンだった
スンミナの隣にさりげなく席をずらしてくる
少しだけ、呼吸が楽になる
話題がプロジェクトの反省会ぽくなって、僕の名前があがる
一瞬、場の空気が止まる
僕はまた遅いって言われるんじゃないかと反射的に身構えた
でも、リノヒョンがすぐに口を開く
グラスを置いて、はっきり
場の空気がふっと和らぐ
遅い人じゃなくて、助けてくれた人として扱われる
隣で小さく呟くと、リノヒョンは気にすんなと視線だけで伝えてくれた
途中、僕はトイレにたった
廊下の静けさに、ほっと息をつく
そこに、リノヒョンが追いかけてきた
正直に言える相手がいるのは、すでに救いだった
あぁ、やっぱり優しい
2人して打ち上げを抜け、店を出て少し歩いたところで夜風にあたる
僕は足を止めて、小さく続ける
ずっと聞けなかったこと
一歩近づいて僕の目を見る
胸がどくんと鳴る
じわじわと顔が赤くなるのがわかる
声が震えるけど、逃げない
その夜、打ち上げの喧騒から離れた場所で、僕たちは仕事仲間じゃなくなった
守る人と守られる人じゃなくて、隣にいる恋人になった












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。