翌日。
私はというと、昨日の出来事を意識しすぎていた。
目が合いそうになるだけで逸らしてしまう。
話しかけられそうになると挙動不審に。
自分でも分かるくらい不自然だった。
休憩に入った時、後ろから小さく声がする。
振り向くと、天飛さん。
連れて行かれたのは、人気のない廊下の奥。
胸の鼓動がうるさい。
彼女はまっすぐ私を見つめて言った。
一瞬で空気が変わる。
驚きで言葉が出ない。
あの偶然は、偶然じゃなかった。
彼女は少し息を吸って、続けた。
真剣な目。
舞台で見る強い光とは違う、少し不安を滲ませた瞳。
私は、しばらく固まっていた。
でもずっと前から、心は決まっていたのかもしれない。
声が震える。
一瞬の沈黙。
勢いがすごい。
その時、
低くてよく通る声が廊下に響いた。
振り向くと、腕を組んだ礼さん。
私と天飛さん、同時にビクッ。
そして、揃ってシュン。
礼さんは大きくため息をつくけれど、
口元はどこか緩んでいる。
一歩近づいて、真剣な顔。
その言葉は、トップスターとして、
後輩である私達に向けられたものだった。
背筋が伸びる。
礼さんはクルリと背を向け、動き出す。
去り際、小さく。
そう言って、手をヒラリと振る。
その背中があまりにもかっこよくて、
私と天飛さん、顔を見合わせて同時に囁く。
「「かっこいい〜……」」
そして小さく笑い合う。
ギュッと繋がれた手。
これからは、恋人として、
でも舞台や稽古場では、あくまでも星組の仲間として。
天飛さんがそっと囁く。
その言葉に、私は笑顔で頷いた。
星の下で始まった恋は、
誰にも気づかれないように、でも確かに強く輝き始めた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!