ソンホヒョンの部屋の前について、ゆっくりとドアをノックする。
「ヒョン、ウナクです。入りますよ」
返事も聞かずに、ゆっくりとドアを開けると
カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で、ソンホヒョンがベッドの端に腰掛けていた。
相変わらず、どこか遠くを見つめているような虚ろな目をしている。
「あ、うなが…おはよう」
「ヒョン、今日は少し早いね。ちゃんと寝れた?」
ソンホヒョンのちょうど真ん前に来るようにデスク近くの椅子を移動させて、そっと座る。
目の下のクマが少しだけ目立つヒョンの顔。
誰よりも寝るのに、クマだけは消えない。肌がとてつもなく白いから、紫色のクマは強く主張していた。
「うん、寝れたよ。うながは今日も元気だね笑」
そうやって、笑いかけてくるヒョンに少しだけ安心する。あぁ、話さないでいればすごく怖いし冷たい雰囲気もあるけれど。こうやって話しかければ笑顔で答えてくれるのがやっぱりソンホヒョンだ。
「今日さ、久しぶりのオフだから、ヒョンとゆっくりお出かけでもどうかなーとか思ったけど」
「やっぱりゲームに変更しようかな……?」
そう言いながら、ソンホヒョンの顔を伺っていると、少しだけ驚いたような顔をした。
「なんでそんなにびっくりしてるのヒョン笑笑
もしかして予定でもあった?」
「い、いや、うながが俺を誘うなんて滅多にないから慣れなくて…笑」
目元を細くして笑うヒョンに僕も少しだけ安心する。
でもきっと、ジェヒョニヒョンが言ってる通り、ソンホヒョンが何かに疲れ始めているのは本当だと思う。
前よりも少しだけ、飾ったような笑顔を見せている。
実際どうなんだろう。
今のところ、何も見当たらない。
「うなが、部屋から椅子持っておいで。ヒョンの部屋でゲームしよう」
「あ、うん。わかった!」
珍しいな。いつもはリビングでしてるのに。
その違和感に首を傾げたけれど、ヒョンの気分屋が出ただけか、とゲーム機を用意するヒョンを見て杞憂だと疑問を塗りつぶした。
自分の部屋にイスを取りに向かう途中、洗面台からひょこっとジェヒョニヒョンが顔をのぞかせた。
「あ、うなが」
「ひょん、あれどっか行くんですか?」
髪の毛が少し濡れてる。
外に出るからヘアセットでもしてるのかなと思って聞いたら当たっていた。
気晴らしに友達に会ってくるらしい。
「その、ソンホとは話した……?」
「あぁ、話しましたよ。今からゲームしようって話してて……。」
「そ、そっか……」
不安そうに目を泳がせるヒョンを見て少し焦る。
頭の中でたくさん整理して、不安にならないような伝え方を考えた。
「あの、ソンホヒョンとはゆっくり話してみるから、さ。話しかけたら笑顔で答えてくれたし。大丈夫だよ!」
そう躓きながら伝えると、ゆっくりジェヒョニヒョンの顔も柔らかくなっていった。ごめんね、なんてまた謝るヒョンに気にしないでと伝える。
僕がマンネだから、きっとヒョンも申し訳なく思ってるよね。
ゆっくり近づいてヒョンの手をぎゅっと握って、自分の出来る限りの安心を分けた。
眉を下げてゆっくり僕の顔を見るヒョンが、今まで見たことないくらい小さく感じて驚いた。
「あーもーひょん!僕は多彩多能なマンネだよー、全部僕に任せて!」
いつもより何百倍も元気な笑顔を作って笑うと、ヒョンもそうだね、そうだよねと笑い返してくれた。
「行ってらっしゃい、気をつけてね!」
ヒョンに一声かけて、僕はイスを片手にソンホヒョンの部屋へと戻った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。