No side
相澤の個性で長期戦は不利であった。
如何に技術があろうとも、個性の弱点が拭い去れるわけではない。
結果としてはそう、みなさんもご存じのはずだ。
飯田が増援と共に戻って来るのが先か、相澤の意識が限界を迎えるのが先か。
凶悪な敵はそれを観て楽しそうに口角を上げた。
その刹那、死柄木は目を見張ることとなる。
一人の少女、のなりをした少年が現れ
脳無を蹴りとばし、僅かな隙間から相澤を担いで救い出したのだ。
オールマイト同等の力を持つ脳無が一瞬フラついたが、それは1秒も経たぬ間だ。
否その事実自体が可笑しいのだ。
死柄木は酷い歯軋りをして、声を上げる。
クソなんじゃあの怪物は、硬すぎる。
足折れたわクソ、折れた瞬間から治したけぇピンピンしとるが
自慢の逃げ足で駆けながら、背中のショータさんを担ぎ直す。
当たり前だが、成人男性は普通に重い。
僕が男じゃなかったら持ち上がりもせんかったじゃろう。
こうして走れよるのも、全身が悲鳴を上げる瞬間に”個性”で労わっとるけぇだ。
しかし、さっさと治癒して自分で走ってもらわにゃあ僕もそろそろ”気力切れ”が近い
急いで治癒を施すが、如何せん全身ボロボロなショータさんの回復にゃあ時間がかかってしまう
加えて後ろから近づいてくる大きな気配
あー絶対後ろ振り返りとうない
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!