in 本丸 審神者の自室[離れ]
零夜 side
学生時代“体力おばけ”と呼ばれていた俺でも
疲れた、さすがに
荷物の整理は……明日でいいか
寝台の上に寝転がり
天井のしみをみる
……なんかあれ梅干しみたいだな
こっちは海老かな
とかくだらないことを考えていたら
襖を控えめに、すごく控えめに叩いてきた
寝台から起き上がりながら言う
ガラッ
一期一振 side
本丸の刀、全部覚えてるって言いました?
え?
結構いますよ?この本丸。
2番目の審神者は美しい刀を集めるのが好きだったため
一時期、一気に刀が鍛刀された。
粟田口派や長船派は全て揃っている。
その他たくさんいるのに
それを全部覚えている?
嘘ですよね?
この人どんな脳してるんですか?
前職なんだったんだろうか……
危ない。
記憶力に気を取られて用事を忘れるところだった。
弟たちを守るために。
土下座する勢いで頭を下げる。
一瞬の沈黙。
暴力で従える、ということだろうか。
そうしたら、弟たちが傷つけられる。
傷つく前に殺るしか――――――
今日の天気を話すように
淡々と言う。
さっき清光くんから聞いて信じられなかったけれど
この言葉を聞いて、気づいた。
この人、死ぬことをなんとも思ってないんだ。
“死んだらそこで終わり”
この人は
死ぬことを
明日の夕飯を考えるように
軽く
小さなこととして
考えている。
一体、何を経験したらこんな考えを持つのだろうか
ガラッ
おそるおそる、という感じで顔を出したのは―――――
薬研だけじゃない。
乱、秋田、信濃……
粟田口派の刀全員がおそるおそる顔を覗かせた。
今にもこぼれ落ちそうなくらい
目に涙をいっぱい溜めて
みんなが
私の名を呼ぶ。
こんな顔をさせたくて
この人に頼みに来たのではない。
みんなに
笑ってほしいから
頼みに来たのに
泣くはずではなかったのに
泣いてしまう
みんなして、声を上げて泣く。
今まで我慢していたものが
溢れたように。
ひとしきり泣き終わってから
審神者がいないことに気づく。
みんなで離れを探すと
縁側に座っていた。
この人は、あるのだろうか。
大切な人と
話せなくても話せなかったことが













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!