第7話

5 粟田口派
89
2026/02/19 13:07 更新
in 本丸   審神者の自室[離れ]

零夜 side


零夜(審神者)
零夜(審神者)
……さすがにしんどいわ
学生時代“体力おばけ”と呼ばれていた俺でも


疲れた、さすがに


荷物の整理は……明日でいいか


寝台の上に寝転がり


天井のしみをみる



……なんかあれ梅干しみたいだな


こっちは海老かな


とかくだらないことを考えていたら


襖を控えめに、すごく控えめに叩いてきた
あのー、いいですか?
零夜(審神者)
零夜(審神者)
どうぞー
寝台から起き上がりながら言う
ガラッ
えっと、こんばんは……
零夜(審神者)
零夜(審神者)
こんばんは
零夜(審神者)
零夜(審神者)
一期一振、で合ってるか
一期一振
はい、
一期一振
分かるんですか
零夜(審神者)
零夜(審神者)
ここへ来る前に
零夜(審神者)
零夜(審神者)
この本丸にいる全刀剣男士の顔と名前は覚えた
零夜(審神者)
零夜(審神者)
ある程度の性格も
一期一振
一期一振
……本当に言ってます?
零夜(審神者)
零夜(審神者)
もちろん
零夜(審神者)
零夜(審神者)
そのあたりの嘘はつかない
零夜(審神者)
零夜(審神者)
つく意味が無い
一期一振 side
本丸の刀、全部覚えてるって言いました?


え?


結構いますよ?この本丸。


2番目の審神者は美しい刀を集めるのが好きだったため


一時期、一気に刀が鍛刀された。


粟田口派や長船派は全て揃っている。


その他たくさんいるのに


それを全部覚えている?


嘘ですよね?


この人どんな脳してるんですか?


前職なんだったんだろうか……
零夜(審神者)
零夜(審神者)
零夜(審神者)
零夜(審神者)
用事、何?
危ない。


記憶力に気を取られて用事を忘れるところだった。
一期一振
あの
一期一振
……
一期一振
弟たちに、近づかないでくれますか
零夜(審神者)
零夜(審神者)
……
弟たちを守るために。
一期一振
弟たちの分も、私がやりますから…
土下座する勢いで頭を下げる。


一瞬の沈黙。
零夜(審神者)
零夜(審神者)
……首を縦に振りたいのは山々なんだけど
零夜(審神者)
零夜(審神者)
聞き入れられない
一期一振
え?
暴力で従える、ということだろうか。


そうしたら、弟たちが傷つけられる。


傷つく前に殺るしか――――――
零夜(審神者)
零夜(審神者)
俺の事、殺したいだろ
一期一振
っ!
零夜(審神者)
零夜(審神者)
すまない、言葉が足りなかったな
零夜(審神者)
零夜(審神者)
俺を殺すのは別にいいよ
零夜(審神者)
零夜(審神者)
覚悟はとうの昔にできている
零夜(審神者)
零夜(審神者)
だが、今じゃない
零夜(審神者)
零夜(審神者)
この本丸にいる刀全てを手入れして
零夜(審神者)
零夜(審神者)
元の状態に戻すまで
零夜(審神者)
零夜(審神者)
死ねない
零夜(審神者)
零夜(審神者)
死ぬわけにはいかない
今日の天気を話すように


淡々と言う。


さっき清光くんから聞いて信じられなかったけれど


この言葉を聞いて、気づいた。


この人、死ぬことをなんとも思ってないんだ。


“死んだらそこで終わり”


この人は


死ぬことを


明日の夕飯を考えるように


軽く


小さなこととして


考えている。


一体、何を経験したらこんな考えを持つのだろうか
零夜(審神者)
零夜(審神者)
それと
零夜(審神者)
零夜(審神者)
その言葉で傷ついている刀がいる
一期一振
……え?
零夜(審神者)
零夜(審神者)
入ってもいいぞ
零夜(審神者)
零夜(審神者)
気づいてないと思ったのか
ガラッ
おそるおそる、という感じで顔を出したのは―――――
一期一振
な、んで
…やっぱり気づかれてたか
いつから気づいてた?
気配消すの、得意なんだが
零夜(審神者)
零夜(審神者)
最初からだ
零夜(審神者)
零夜(審神者)
薬研藤四郎
零夜(審神者)
零夜(審神者)
後ろの奴らも入っていいぞ
薬研だけじゃない。


乱、秋田、信濃……


粟田口派の刀全員がおそるおそる顔を覗かせた。
乱藤四郎
いち兄……
厚藤四郎
いち兄……
今にもこぼれ落ちそうなくらい


目に涙をいっぱい溜めて


みんなが


私の名を呼ぶ。
零夜(審神者)
零夜(審神者)
お前が兄ならば
零夜(審神者)
零夜(審神者)
弟たちにこんな顔させていいのか
こんな顔をさせたくて


この人に頼みに来たのではない。


みんなに


笑ってほしいから


頼みに来たのに
一期一振
うっ……あ……
泣くはずではなかったのに


泣いてしまう
信濃藤四郎
いち兄、いいよ
薬研藤四郎
俺らは、いち兄が守ってくれて嬉しいぜ
後藤藤四郎
いち兄、ありがとう
みんなして、声を上げて泣く。


今まで我慢していたものが


溢れたように。
ひとしきり泣き終わってから


審神者がいないことに気づく。


みんなで離れを探すと


縁側に座っていた。
一期一振
……あの
零夜(審神者)
零夜(審神者)
気は済んだか
零夜(審神者)
零夜(審神者)
俺がいたら邪魔だったろうから
零夜(審神者)
零夜(審神者)
部屋を出た
一期一振
すみません
一期一振
部屋で泣いてしまって
零夜(審神者)
零夜(審神者)
構わん
零夜(審神者)
零夜(審神者)
話せたのならそれでいい
零夜(審神者)
零夜(審神者)
話したいことをちゃんと話さないと
零夜(審神者)
零夜(審神者)
一生後悔するかもしれんからな
この人は、あるのだろうか。


大切な人と


話せなくても話せなかったことが
作者
切るところが見つからなくて
作者
長くなってしまった
作者
すまぬ
作者
では
作者
次へどうぞ!

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