第21話

#21
27
2023/12/12 10:31
「やぁ朧姫おぼろひめ!久々だね。」

鳥居を歩き、穏やかな空気が漂う神社に着き、咲子は落ち葉を掃いて纏めている一人の巫女らしい女の子に声をかけた。その巫女は咲子を見るなり驚いて目を見開き、箒を慌ててその場に置いて咲子の元へ掛けて寄った。

「後織咲子様ですね!お久しぶりです!たった今御茶を御入れします。」

その巫女は礼儀正しく深々を頭を下げ、茶の用意のために建物の中へ駆け込んで行った。

「さっきの方は……」

「嗚呼、この神社の巫女ちゃまだよ。まだ若く、特別選ばれた子だ。」

ゐわりは少し感嘆の声を漏らしながら、柳の良い香りを深呼吸して吸った。
「こんにちは。ゐわりさん。」

「ッ!?」

柳の木を見上げていたところ、背後から突然声を掛けられ、ゐわりは派手に跳び跳ねて驚いてしまった。が、その声を掛けた人物を見て、また更に驚いてしまった。その人物は誠に神々しく、まるでアフロディテに完全洗脳されたかのような美しさを放っていた。

その人物は筆で、和紙のような紙一枚に何やら慣れた手つきで字を書いている。ゐわりは少し困惑したが、その文章か何かが書き終わるのを待った。

「おやまぁ、これは姫美鷺宝娘ひめびざきのたらこ姫ではないかね?」

「……今現在職務の果たしておるのですよ。その間だけは私語を慎むよう以前たき言伝ことづてをやったはずです。」

「…瀧…?その者はどいつかの?」

「貴女が間違えて漢字を読んでおぼろと言っている者ですよ。」

宝娘の背後から和紙を覗き込むようにして話しかけた咲子に対し、綺麗な声色で彼女は言い放った。目は大きく、おしとやかな雰囲気を纏っているが、どこか威厳のある美しさを放っていた。

「あの……?」

「…嗚呼、申し遅れまして…僕は姫美鷺宝娘ひめびざきのたらこと言う者です。咲子と旅仲ですか?」

「あ、はい、!」

あまりにきらきらとしたオーラに圧倒されそうにりつつも、宝娘と目を合わせて会話をする。

「(嗚呼いけない、眩し……)」
「さぁさ宝娘殿!!!今度こそ決着をつけてやる!!!」

「「!?!?」」

何匹かの真っ黒なカラスを身に纏いながら、左手奥の屋敷屋根から可憐にきびすを鳴らして飛び降りてきた者。少年らしい顔つきに、少々汚ならしく着崩した余りの多い服装。正直のところ、咲子は真っ先に「あけの里の少年だな。」と悟った。灰色に輝く黒髪が綺麗に風に靡いている。
隣の宝娘は呆れてため息をついていた。
「決闘だぁ!!!」

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