「こんにちは。ゐわりさん。」
「ッ!?」
柳の木を見上げていたところ、背後から突然声を掛けられ、ゐわりは派手に跳び跳ねて驚いてしまった。が、その声を掛けた人物を見て、また更に驚いてしまった。その人物は誠に神々しく、まるでアフロディテに完全洗脳されたかのような美しさを放っていた。
その人物は筆で、和紙のような紙一枚に何やら慣れた手つきで字を書いている。ゐわりは少し困惑したが、その文章か何かが書き終わるのを待った。
「おやまぁ、これは姫美鷺宝娘姫ではないかね?」
「……今現在職務の果たしておるのですよ。その間だけは私語を慎むよう以前瀧に言伝をやったはずです。」
「…瀧…?その者はどいつかの?」
「貴女が間違えて漢字を読んで朧と言っている者ですよ。」
宝娘の背後から和紙を覗き込むようにして話しかけた咲子に対し、綺麗な声色で彼女は言い放った。目は大きく、おしとやかな雰囲気を纏っているが、どこか威厳のある美しさを放っていた。
「あの……?」
「…嗚呼、申し遅れまして…僕は姫美鷺宝娘と言う者です。咲子と旅仲ですか?」
「あ、はい、!」
あまりにきらきらとしたオーラに圧倒されそうにりつつも、宝娘と目を合わせて会話をする。
「(嗚呼いけない、眩し……)」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。