第153話

らしさ。
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2024/04/29 12:00 更新
険しい表情の悟はどう見ても機嫌が悪く、重い雰囲気に居心地が悪い。

本人の前では前当主の話題は振らない方がいいと改めて理解する。
実際自分にされた過去の出来事は決して許されるものじゃないから。
自分達のために良かれと思って配慮された事だとしても。


私としては応援してくれている前当主とは前向きに進んでいきたいけれど·····。



「グゥ·····」と再び音が鳴ると琉奈は顔を悟から逸らした。


その姿に口元を緩ませ、
五条悟
五条悟
夜ご飯食べに行こうか。
久遠琉奈
·····だからさっきからお腹空いてるって言ってんじゃん。
琉奈の手を取り、玄関へと向かって歩いて行く。
久遠琉奈
SNSの件は許してくれたって事でいいんだよね?
五条悟
五条悟
まぁ·····会社からの指示なら仕方ないんじゃない?
小さな声で「気に食わないけど。」と聞こえた。
久遠琉奈
心の声漏れてますけど?
五条悟
五条悟
個人的な発信?投稿?公開?しなければ僕も目を瞑るから大丈夫だよ。
久遠琉奈
悟さんって、なんだかんだこっち側の言葉把握しててくれて少しずつ染まってきてるよね。
五条悟
五条悟
まぁ誰かさんには負けるけど、情報収集を悠仁に聞いたり調べたりしてるからね。ある程度は分かってきてるよ。
久遠琉奈
誰かさん·····
誰の事だろうと一瞬思ったが、前当主だとすぐ理解する。
五条悟
五条悟
今まで通り音楽活動に制限かけるのも良くないかなとは思ってるけどね·····。
久遠琉奈
え?
悟の口からは聞く事のないような言葉に琉奈は耳を疑った。
五条悟
五条悟
それより何食べる?
もう一度確認しようとしたが、悟の急な対応の切り替わりに話を元に戻す事が出来なくなった。
久遠琉奈
あー·····えっと·····悟さんは?
五条悟
五条悟
琉奈が食べたいものでいいよ。
久遠琉奈
えー?いつもそうじゃん。
たまには悟さんが食べたいものにしようよ!
五条悟
五条悟
僕が食べたいもの?
久遠琉奈
うん。悟さんが今食べたいもの。
エレベーターの前に着き、自分達の居る階数まで到着するのを待つ。
五条悟
五条悟
じゃあ、琉奈が作った料
久遠琉奈
私は和食かな~。
五条悟
五条悟
僕は琉奈の手料
久遠琉奈
それ、カレーしかないじゃん。
五条悟
五条悟
今からだと時間がかかるか·····。
「食べたいんだけどな·····」と呟いている。
久遠琉奈
っていうか·····私が1番お腹空いてるのに何で作らされるの!?
五条悟
五条悟
だって琉奈が、僕が食べたいものって聞くから~。
最初からお腹空いてるんだから食べたいものを言えば良かったんだよ。
久遠琉奈
お腹空いてるだけだから·····何でも良いんだけど·····。
エレベーターが開き、2人は乗り込む。
壁にもたれた琉奈に覆い被さるように壁に手を付いて目の前に立った悟は顔を近づけた。
五条悟
五条悟
じゃあ、家ご飯にする?そうすれば持ってきてもらうだけだし、待ってる間含めて思う存分イチャつけられ
甘いマスクと色気のある声に負けじと顔面を両手で隠し押し込む。
久遠琉奈
うん。もうエレベーター乗ったんだから、諦めてご飯食べに行くよ。
悟の脇の下をすり抜け、まだ押されてない最上階の番号のボタンを押しに行く。
小さな舌打ちが後ろから聞こえたが、聞こえぬフリをし、上がっていく度に点灯する階数番号を見つめる。
久遠琉奈
何食べようかな~。
お寿司もたまに食べたいけど·····だからと言って高級寿司じゃなくてもいいし·····
悟は何も言わずに包み込むように後ろから琉奈を抱きしめた。
久遠琉奈
な·····なに·····っ???
五条悟
五条悟
部屋に板前呼ぶ?
久遠琉奈
しつこいなー。
首を傾げるとゴツッと悟の頭に琉奈の頭が当たる。
久遠琉奈
痛っ····ッ?!·····この·····っ、石頭·····ッ。
自分でぶつけたとはいえ、強く当てなかっただけマシだとしても案外衝撃が頭に響き琉奈はぶつけた部位をさすった。
五条悟
五条悟
部屋にシェフ呼べば
久遠琉奈
そんなに部屋で食べたいの?
話してるうちにポンッと音が鳴り、最上階に着いたことを知らせた。
久遠琉奈
そうこう言ってる間に着いたけど····?
エレベーターのドアが開き、琉奈は指を指した。
五条悟
五条悟
じゃあ、何食べる?
強引に切り替えた大人な態度·····。
久遠琉奈
·····。
琉奈はエレベーターから降りる。
五条悟
五条悟
時間も時間だからねー。
と言いながら、当の本人は降りる様子がない。
久遠琉奈
·····。
笑いそうになる。
意地でも部屋で食べたい本能とここまで来たのなら外食しなければならないという諦めとの格闘。

それがこの目の前の大人に表れており、必死に自分の中で戦っているみたいだ。

今までの五条悟にはない態度。
久遠琉奈
(ワガママ言わないように努力?してくれてるのかな。·····体と口が合ってないけど。)
開くボタンを押したままエレベーターから出ようとしない悟に琉奈は一息つきつつ、口元を緩ませた。
久遠琉奈
何食べようかな~。
エレベーター前に置かれた案内板に表示されている飲食店情報を見るためしゃがみ込む。
久遠琉奈
せめてここまで来たんだからこの際テイクアウトできるお店に行ってみる?
五条悟
五条悟
え?
チラッと視線を向けると意表を突かれた悟と目が合う。

私が妥協したらしたでそんなビックリしたような顔しなくてもいいのに。
久遠琉奈
ったく、部屋で食べたいんでしょー?
五条悟
五条悟
·····。
無言になり、目を逸らした。
久遠琉奈
あれ?違うの?
案内板に再び視線を戻し、
久遠琉奈
あ、そもそもテイクアウトって出来ないかもしれないかな·····?
「あ。」と口にした琉奈は立ち上がると再びエレベーターに乗り込み、悟の手を握る。
五条悟
五条悟
久遠琉奈
ねぇ!たまにはコンビニ弁当にしない?
五条悟
五条悟
コンビニの?
久遠琉奈
うん。それなら温めればすぐ食べれるしー、部屋で食べれるし。
五条悟
五条悟
·····!
久遠琉奈
ここのコンビニってM-SHOPって名前だったよね?
五条悟
五条悟
うん。
久遠琉奈
M-SHOPって大手のコンビニの系列だからあると思うんだけど·····
スマホを取り出し、何かを打ち込み調べ出す。
久遠琉奈
あ!あったあった!
主題歌担当したアニメとコラボした弁当があるんだよね!対象商品を買ってグッズももらえるらしいし、たまには行ってみない?
有無を言わさず琉奈は悟の手を繋いだままエレベーターから引っ張るように降りる。
久遠琉奈
悟さんはさ、ワガママでいいんだよ。
五条悟
五条悟
え?
人気も無くなったエレベーターのドアが静かに閉まり琉奈は後ろに体を向ける。
久遠琉奈
今さら大人・・な悟さんは、悟さんらしくないかな。
五条悟
五条悟
·····!
屈託の無く笑う琉奈に目を点にしたまま、悟は言葉に詰まる。
久遠琉奈
ワガママな悟さんを仕方なく相手してこそ、私の役目だしね。ワガママに対応していきますよ。
五条悟
五条悟
琉奈·····。
久遠琉奈
最初はねー、大人のくせにめんどくさいなぁって思ってたけど、今はもう慣れたもんだよね。悟さんらしく居れば私も順応に対応させて頂きますよ。
五条悟
五条悟
僕らしさって?
久遠琉奈
え。·····それ聞いちゃいます?
急な質問に琉奈は対応に戸惑う。
久遠琉奈
·····ワガママ??
五条悟
五条悟
それだけ?
久遠琉奈
んー·····顔だけイケメン?
悟は小さく笑う。
五条悟
五条悟
なにそれ。性格は?
久遠琉奈
えー·····自分でも分かってんじゃないのー?
五条悟
五条悟
分かんないから聞いてるんだけど?
久遠琉奈
··········怒んない?
五条悟
五条悟
怒るような事言うつもりなの?
久遠琉奈
~~~~っ。
先に進まないし、彼のペースにすぐのまれるのは私が悪いのか、彼らしさ・・・・なのか。
久遠琉奈
イジワルだし、大人気ないし、めんどくさい·····です。
怒るかもしれないと配慮したのか敬語になった琉奈に悟は耐えきれず「結局めんどくさいんじゃん。」と笑った。
五条悟
五条悟
ごめん、ごめん。いいよ、コンビニ弁当で。
食べた事ないけどね。
琉奈の手を繋いだまま、コンビニのあるフロアへと歩いて行く。
久遠琉奈
ないの?·····あー、お坊ちゃんだと食べる機会は無いか。··········あ。
自分の発言に気づき、自らの手で口を塞いだ。
五条悟
五条悟
五条家の坊ちゃんですけど、何か?
久遠琉奈
だって本当の事じゃん。
五条悟
五条悟
うん、まぁね。
久遠琉奈
新しい事を悟さんと経験していきたいから今回は勉強、勉強。
ちなみに最近のコンビニ弁当クオリティ高いんだよ~?
五条悟
五条悟
新しい事·····
コンビニに着き、中に入ると弁当が並ぶ惣菜コーナーに琉奈が先に向かい、悟はカゴを手にした。
久遠琉奈
あ、あった!
私ガッツリいっちゃってもいい?
目的の弁当を見つけ手に取った琉奈は後ろに居た悟に振り返った。
五条悟
五条悟
うん、いいよ。
久遠琉奈
お腹空いてたからねー、今ならこれ全部食べれそう。
倍量と貼られたシールの弁当を悟が持っていたカゴに入れる。
久遠琉奈
悟さんは?
五条悟
五条悟
僕は·····
おにぎりの棚から1つ1つ見て探していく。



数十分店内を見回った後、カゴに入った物をレジの前の台に悟が置く。それと同時に琉奈はスマホを取り出した。
久遠琉奈
私が提案したから私が払うね!
スマホ決済をするために準備していると悟が横から何かを店員に差し出した。
五条悟
五条悟
これで。
久遠琉奈
??
差し出したソレを目で追った琉奈は置かれた1枚のカードに首を傾げた。
久遠琉奈
クレジットカード·····じゃない、よね?
「いつもありがとうございます。確認が取れましたので大丈夫ですよ。」
店員の目視後、悟に返されたカードを琉奈が代わりに受け取って裏表確認する。
久遠琉奈
何これ??
五条悟
五条悟
特別なカード。
久遠琉奈
特別な、カード·····??
袋に入れてくれる店員を横目にカードを悟に返す。
久遠琉奈
そんな特別に見えないけど·····支払いが免除されるぐらい?
袋詰めした店員から受け取った悟はもう片方の手で琉奈の手を握った。
五条悟
五条悟
僕しか持ってないカード。
久遠琉奈
悟さんしか?
コンビニを出るとエレベーターに向かって歩いて帰る。
五条悟
五条悟
マンションの管理カード。
久遠琉奈
わー·····、乱用きたー·····
この人には色んな意味で、色んな言葉が合う。

良い事も悪い事も。

正しい事も間違っている事も。
久遠琉奈
なんだかなぁー。
この人の存在は私にとってここまで大きくなった。

最初の毛嫌いしていた頃とは大違いだ。

今となっては何であの時ここまで嫌いになれたのかと思うほど、嫌な記憶が薄れつつある。
五条悟
五条悟
ん?
性格に悪い意味があっても、良い意味があっても。

これがこの人の好きになった理由でもあるから。
久遠琉奈
悟さん中心で世界は廻ってるって事かな。
五条悟
五条悟
なにそれ。
私が存在する意味はもちろんこのワガママな怪獣を暴れさせないようにする事。


そして·····
久遠琉奈
やっぱ悟さんらしさは無くしちゃダメだなぁって思っただけ。
私が傍に居たいだけ、かな。

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