第35話

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2026/07/04 09:00 更新
水side


昼休み。

ご飯を食べ終わった僕は、特にやることもなく、
自分の席でぼーっとしていた。

窓から入ってくる光が眩しくて、目を細める。
水
ふぁ…
一つ、欠伸をする。

ふと前を見ると、
見慣れた青髪が視界に入った。

…ないちゃんと話してる。
仲良さそうだなぁ…

ちくりと胸の奥が痛む。

思わず顔を伏せた、
そのときだった。
赤
…いむ
水
…へっ?
突如降ってきた、聞きなれた声。

再び顔を上げる。
水
どうしたの、りうちゃん
赤
…ちょっと、いい?
その声はいつもよりずっと小さくて、
でも棘があって。

僕は何も聞かずに頷いた。
二人、教室を出て、
人の少ない渡り廊下へと向かう。

風が吹き抜けて、
赤い髪がふわりと揺れた。

しばし沈黙が続く。
水
…なにか、あったの?
そう尋ねてみると、
りうちゃんはずい、と距離を詰めてきた。
赤
それがさ…聞いてよほとけっち!
それを皮切りに、
りうちゃんは色々なことを話していく。

兄貴と登校していたら、しょうちゃんが来たこと。
兄貴がそれを呼び止めていたこと。
耐えきれなくて、その場から逃げてきたこと。

…そして。
赤
…そしたら、ないくんが“俺にすれば?”って
ないちゃんに相談したところ、
“俺にすれば?”と冗談を言われた(・・・・・・・)こと。

冗談じゃないと思うけどなぁ…
なんて、心の中だけで呟く。
赤
ほんっと最低…絶対ふざけてたでしょ、あれ
水
ん~…そう、かな
赤
絶対そう!ないくんいつもてきとうだもん
水
えぇ…?
曖昧な返事をして、首を傾げる。

りうちゃんの言い方には、
少しだけ棘が混ざっていたけれど。

でも、ただの怒りっていうより、
迷いに近いもののような気もした。
青
『…あいつさ…無理、しとるやろ』
いつの日か、想い人がそう言っていたのを思い出す。
青
『優しいのはいいけど、全部一人で抱え込むのは、ちゃうやん』
いっつも周りを気にして、
自分のこと全部後回しにしてるないちゃん。

それはきっと、りうちゃんだって気づいてる。
水
…りうちゃんさ
そう呼びかけてみる。
水
ないちゃんのこと、嫌い?
赤
……
ぴくりと肩が動いた。

ぴゅう、と風が吹いて、
渡り廊下の影が揺らぐ。
赤
…嫌い…じゃない
視線が逸らされる。
赤
だから、嫌だった
水
…!
赤
ないくんは、俺のことなんてどうでもいいのかなって
そこで初めて、
りうちゃんの声が震えているのに気づいた。

再度、口が開かれる。
赤
冗談で笑い飛ばせるほど、どうでもいいのかなって…っ
水
……
遠くで予鈴の鳴る音が聞こえる。

りうちゃんは、
ふっと笑って僕に背を向けた。
赤
…ありがと。俺トイレ行ってくるから先教室戻ってて
それを最後に、
りうちゃんの背中がどんどん離れていく。

気の利いた一言なんて思いつかなかった。

…けれど。
水
…ないちゃんは
そう、口に出してみる。

赤い瞳がこちらをとらえた。
水
ないちゃんも、りうちゃんのこと、嫌いじゃないと思うよ
ぴゅう

また、風が吹き抜けていく。

りうちゃんは、こっちを見た後、
晴れ渡るような顔で笑った。

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