水side
昼休み。
ご飯を食べ終わった僕は、特にやることもなく、
自分の席でぼーっとしていた。
窓から入ってくる光が眩しくて、目を細める。
一つ、欠伸をする。
ふと前を見ると、
見慣れた青髪が視界に入った。
…ないちゃんと話してる。
仲良さそうだなぁ…
ちくりと胸の奥が痛む。
思わず顔を伏せた、
そのときだった。
突如降ってきた、聞きなれた声。
再び顔を上げる。
その声はいつもよりずっと小さくて、
でも棘があって。
僕は何も聞かずに頷いた。
二人、教室を出て、
人の少ない渡り廊下へと向かう。
風が吹き抜けて、
赤い髪がふわりと揺れた。
しばし沈黙が続く。
そう尋ねてみると、
りうちゃんはずい、と距離を詰めてきた。
それを皮切りに、
りうちゃんは色々なことを話していく。
兄貴と登校していたら、しょうちゃんが来たこと。
兄貴がそれを呼び止めていたこと。
耐えきれなくて、その場から逃げてきたこと。
…そして。
ないちゃんに相談したところ、
“俺にすれば?”と冗談を言われたこと。
冗談じゃないと思うけどなぁ…
なんて、心の中だけで呟く。
曖昧な返事をして、首を傾げる。
りうちゃんの言い方には、
少しだけ棘が混ざっていたけれど。
でも、ただの怒りっていうより、
迷いに近いもののような気もした。
いつの日か、想い人がそう言っていたのを思い出す。
いっつも周りを気にして、
自分のこと全部後回しにしてるないちゃん。
それはきっと、りうちゃんだって気づいてる。
そう呼びかけてみる。
ぴくりと肩が動いた。
ぴゅう、と風が吹いて、
渡り廊下の影が揺らぐ。
視線が逸らされる。
そこで初めて、
りうちゃんの声が震えているのに気づいた。
再度、口が開かれる。
遠くで予鈴の鳴る音が聞こえる。
りうちゃんは、
ふっと笑って僕に背を向けた。
それを最後に、
りうちゃんの背中がどんどん離れていく。
気の利いた一言なんて思いつかなかった。
…けれど。
そう、口に出してみる。
赤い瞳がこちらをとらえた。
ぴゅう
また、風が吹き抜けていく。
りうちゃんは、こっちを見た後、
晴れ渡るような顔で笑った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。