第6話

分からない...
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2024/01/06 13:54
初めて話した時、Realの音楽に惹かれた、て話してくれた岩泉が練習を見に来た。OKが出てもNGが出ても良かったけど、結果的には嬉しかったと思う。大切なバンドの裏を知ってもらえた、て感じで... 
「はぁ...」
「どうしたの?一君の見学と関係ある?嫌だった?」
彰と一緒に帰っている時にため息が出た。
「いや、岩泉は関係無い...」
「じゃあ... 家に行くのが嫌...?」
「うん...」
「そっか... 楽しかった時間の後に嫌なものが来るのは嫌だよね... でもさ!」
人気が少ないからか、彰はぴょんっと私の前に跳んだ。
「明日学校でまた一君に会えるんだ、て思えば楽しみがあって、乗り越えられるんじゃないかな ☆」
「...は...?何でそこで岩泉が出る訳...?」
「え〜?だって美桜が連れて来たんだよ?僕達以外とは関わらない美桜が。信頼しているんだよ、きっと」
「...?」
よく分からない... 思わず首を傾げてしまった。
「あははっ、深く考えなくても大丈夫だよ。でも参考にしてみてよ ☆ あ、ここで別れ道だね。またね〜」
「バイバイ」
楽しみ、ね... 休み時間にギターを弾く事が唯一の癒しだった。でも岩泉が絡む様になってからは話す人間が増えた... 何となくやっているバレー部の手伝いも通して... まぁ、嫌じゃないからそれで良いのか...



ガチャ
「...」
家の中は暗い。つまりさおちゃんはマッチングアプリでデートなんだろうな... どうせまた上手く行かないに決まってる... もう何年も同じ結果の繰り返しだ...
お弁当箱を洗いに台所に行ったら、机にご飯と置き手紙があるのを見た。『美桜へ。お帰り、そしてお疲れ様。私はお出かけ先で食事するから、作っておいた物を食べてね。沙織』
「ふんっ...」
紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てた。冷めるんなら私が自分で作ったのに...!自分の時間を私に費やさなくて良いのに...!
食べたくない... でも食べないともったいない... 今?後で...?少し考えてから、今食べる事にした。
「多い...」

宿題には集中出来たのに、ギター練習には無理だった。思う様に音を出せなかった... この家にいるとよく自分の事が頭の中をグルグルと回る。
「寝よ...」
他にする事が無いからベッドに潜り込んだ。

「ただいま〜」
さおちゃんが帰って来た。普通のトーンだから予想通り展開は無かったんだ。まったく...



ここにはいつも帰りたくない... でも他に場所が無い...




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