あなたの下の名前side.
荼毘に聞かされた話を思い返す.
私がヒーローになるかヴィランになるか、なんて.
きっと多くの人がヴィランになる可能性の方を持ち上げるだろう.
私を説得するには十分な話をされて、揺らぐはずのなかった意思がまた動き出す.
否、揺らがないんだと自分に思い込ませてきたんだ.
USJ襲撃、体育祭、ヒーロー殺しステイン.
大きな出来事が起こるたびに感じていた視線.
強く見せてきた.
見せなくてはいけなかった.
またヒーロー達に狙われたくないという一心で.
自分は人を助ける強いヒーローになれる.
心優しいヒーロー志望.
そんな偽りの仮面をかぶってきたのに.
どうしてもそれを怪しさが上回ってしまっていた.
今回の件でそれが多くの人の中で確信に変わっただろう.
私の素性を知っている人は特に.
そう、きっと、
相澤先生も、ホークスさんも.
もう私を信じてはくれないだろう.
ドアの開く音がして、死柄木が入ってくる.
私の顔を見て怪しく笑う.
急に、あんなに輝いていた道標が消えた.
そのショックは、今の私を壊すには十分だった.
そうじゃなければ、死柄木に腕を引かれた時に抵抗できていた.
森で飲まされた薬を、もう一度飲まされたりしなかった.
死柄木の胸で、涙を流したりしなかった.