𝘞𝘪𝘯𝘵𝘦𝘳 𝘴𝘪𝘥𝘦
あなたが病院から帰った次の日。
私たちはマネオンニから会社へ来るよう呼び出されて、あなた以外社長のところへ集まった。
ジミンオンニはなにか察しているのか、いつもより冷たく社長に問う。
『今日からaespaは4人で活動していく。』
『今日付けであなたは会社を辞めることになった。理由としてはもうaespaとして活動は出来ないと本人からの申し出だ。』
『もう公式に発表している。』
『これは本人と話して既に決まったことだ。もうこちら側はどうにもできない。』
『もう本人は帰国済みだ。話はそれだけだ。スケジュールはマネージャーを通してまた連絡する。』
社長室を後にし私たちは一旦宿舎へ戻った。
また少ししたらマネオンニからスケジュールの連絡がくるようだ。
私も含めみんなあなたが辞めたという事実に頭がついて行かない。
だって昨日話したばっかりじゃない。
5人でaespaだよって。これから先も、
𝘒𝘢𝘳𝘪𝘯𝘢 𝘴𝘪𝘥𝘦
あなたが辞めたと聞いたときの衝撃はきっと死ぬまで忘れないと思う。
なぜなんの相談もなく辞めてしまったのか。
一緒にデビューが決まったとき泣いて喜んだはずなのに。
昨日だってこれから先もずっと5人でaespaだよって話したのに。
こんなこと言ったって彼女には届かない。
この日私を含めメンバー全員涙が止まらなかった。
そしてこの日以来ミンジョンは元気を無くしてしまった。
それはそうだろう。
ミンジョンはあなたの彼女だった。
そんな彼女にでさえなんの相談も無くあなたは静かに私たちの前から姿を消したのだから。
後日マネオンニからスケジュールを一通り確認した。
マネオンニの目も微かに腫れておりきっと泣いたんだろう。
『…………。』
『ちがうっ!カリナ、それは絶対に違うの。』
マネオンニの目には涙がたくさん溜まっている。
今にも溢れそうなのを必死に我慢しているようにみえた。
『あの子は……。本当にaespaのことを大切に思っていたし、何よりあなた達メンバーのことを誰よりも愛していたわ。』
マネオンニに怒ったって仕方がない。
そんな事分かっている。
でもこの苦しくて辛い気持ちを解消する術を私は知らない。
『あなたは。どうかみんな幸せになって……って言い残して日本に帰ったわ。』
彼女は嘘をつくのが人一倍下手だった。
イタズラするときだってすぐ顔に出てた。
照れたときだって誰よりすぐ顔を真っ赤にしてた。
今回の体調を崩したのだって、あの子は隠してるつもりだろうけど顔を見れば無理してるのだって分かる。
でも昨日のあなたの顔から嘘は読み取れなかった。
あなたはなにを抱えていんだろう。
なんでメンバーに何も言わず去っていったのだろう。
考えれば考えるほど、頭に浮かぶのはあなたの優しい笑顔だけだった。
スケジュール調整の為私たちにはいつぶりかのオフがもらえた。
スケジュール調整の為なのか、早く切り替えろということなのか…。
どっちにしてもグループにとっては有難い。
今はどのメンバーも活動できるようなメンタルは無い。
おそらく一番ショックが大きいのはミンジョンだろうなと思い彼女を部屋に呼んだ。
そう話す彼女の言葉に気力は全く感じられず、目の下には濃いクマのあとがある。
あの日から充分な睡眠がとれていないのは想像に容易い。
彼女の顔は今にも溺れてしまいそうなほどの涙に包まれてしまった。
この涙を止めれる人なんてこの世でたった1人しかいない。
私はミンジョンを抱き締めた。
それ以外に今の彼女を支える方法が分からなかった。
あなた、ミンジョン。
こんな不甲斐無いリーダーでごめんなさい。
もっとしっかりしていれば…。もっと、もっと……。
私は涙を必死に堪えて、目の前で泣いてい彼女の名前を呼んだ。
ミンジョンに向けて放った言葉だが、同時に私は自分自身に言い聞かせている。
aespaのリーダーとして、ミンジョン・エリ・ニンニンそしてあなたの家族として。
ミンジョンは涙で濡れた瞳で真っ直ぐ私を見つめる。
私は心のどこかで本当にあなたに会える気がしている。
それが何ヶ月先か……それとも何年先かは分からない。
けど、きっと信じていれば会える。
𝘞𝘪𝘯𝘵𝘦𝘳 𝘴𝘪𝘥𝘦
ジミンオンニと話してから少しずつだけど前を向いて進めるように頑張っている。
けれど、毎晩涙を流してはあなたの夢を見る日々は続いている。
彼女は今日本で、何を思い、何をして過ごしているんだろう。
ご飯しっかり食べてるのかな、辛い思いしてないかな、寂しい思いしてないかな……。
ぽつりと呟いたその言葉は雪の降る街に消えていった。
私が流す涙は一瞬だけ雪を解かすけど、どんどん降り積もる雪にはやっぱり勝てない。
あなたは冬が嫌いだった。
でもデビューしてからは、私の名前がウィンターだから好きになったっていつも笑顔で言ってた。
それくらいに彼女は単純で純粋で可愛かった。
どこ歩いてもそこにはあなたとの思い出がある。
練習生のときも、デビューしてからも隣にはずっとあなたがいた。
そういえば付き合った日もこんな雪が降る日だった。
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そういう彼女に連れ出されて雪が降る街中を散歩して、練習生の頃からよく来てた少し街を見下ろせる高台へ行った。
少し考えて彼女は私の名前を呼んだ。
彼女は真っ直ぐ、真剣な眼差しで私を見つめて告白してくれた。
普段愛情表現の乏しい彼女が放つ言葉の一つ一つがとても嬉しかった。
『何があってもずっと一緒にいよう。』
彼女は口癖のようにこの言葉を私に向けてくれた。
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気づけば私はその高台へ自然と足が動いていた。
そこに彼女は居ない。
あの日寒さで顔と手を真っ赤にしながら微笑みあった2人の姿は今では幻のように思える。
私はあとどれだけの涙を流せばいいのだろう。
どれだけ彼女を想い、辛い日々を越せば彼女に会えるのだろう。
彼女の全てが私であったように、私の全てが彼女だった。
街が白く染まる中、私はお願いした。
『どうかこの声が貴女に届きますように…』

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!