ジャガーはあの後、しばらく3人と話していた。

成程、君たちは恋人同士なのか、若いってのは良いな。
今は幻想郷ってところで同棲してるんです、他にも住んでる人は居ますけど。

幻想郷……あぁ、俺も一度行ったことがある。
そうなんですか?

若い頃、一度だけな。

君たちはまだ若いから、恋をしつつ他のことにも時間を使うといい、二人で世界を旅したりとかな。
二人で旅……何か良いですね。

だってよ柊君、今度旅でもしてみたらどうだ?
そうですね……色々落ち着いたら行ってみます。

それがいい。
……ジャガー、ちょっと変わった?

何がだ?
いや、少し……というか、かなり丸くなったわよね。
昔は周りに威圧感バリバリ出してたのに。

癖だったんだよ、知ってるだろ……俺の過去。
……そうね。
実を言うと、ジャガーは元世界最強の暗殺者だと白鳳、凍夜、礼花にのみ話している。ジャガー曰く、信頼できる仲間らしいからだ……かなり内容は隠してだが。

ま、俺も人として成長したということだ。みんなには結構迷惑かけたりしてたからな。
本当よ、偶に事務作業をサボってどこかに消えるのは勘弁してほしかったわ。

悪い……。
ま、昔のことだし水に流すわよ。

そうしてくれるとありがたい。
そんな事を話していると……遠くから3人の女性が歩いてこちらに来ているのが見えた。

あれは……。
あっ、3人とも来たわね。

知り合いか?
知り合いも何も、娘たちよ。

娘……あぁ、そういえば4人娘がいるって言ってたな。
そうして、その3人がすぐ近くまで来た。
久しぶりね……って、その人は?
始めて見た、何?お母さんの知り合い?
昔の同期よ、初対面だろうし挨拶しなさい。
はーい……私は四季雪花と言います。
私は四季芦花。
私は四季月花と言います、お名前をお伺いしても?

3人とも丁寧にすまないな……俺は、ジャガー・エステート。君たちのお母さんの同期で、現在は地球防衛軍特殊部隊隊長を務めている。
特殊部隊……聞いたことありませんね。

表沙汰にはあまり出ないからな。

特殊部隊は戦闘特化の部隊なんだ。地域の復興や援助はやらず、悪信教の討伐や国際指名手配の拘束を中心に行っている。
へぇ……じゃあ、隊員たちの実力もかなり高いんですね。

他の部隊に負ける自身はない。
そうなんだ……ねぇ、やっぱり貴方は隊長だから強いの?

……礼花、俺は強いのか?
そこで私に振るのね……そうね、今は知らないけど…………昔は敵なしだったと思う、私も、お父さんも……白鳳も。悔しいけど、私は手も足も出なかったわ、あらゆる分野で。
(お母さんもお父さんも敵わなくて、世界ランキング1位の月詠白鳳ですら敵わない!?)
(お母さんがあらゆる分野で勝てないって……まさか剣術も?)
ジャガーさん、もしかして大会に参加しますか?

ん?……あぁ、大会には参加するぞ?しかも今回が初出場だから楽しみだ。
……無理を承知で聞きたいんですが、ジャガーさんは武器を使って戦ったりしますか?

あぁ、武器を使う戦闘を好むな、特にナイフと銃。というか礼花、剣術ならおまえの方が上だろ?
……貴方、昔木刀同士で私と模擬戦したときの事忘れたの?

……あぁ、そういえば俺にボコボコにされて泣いて……
泣いてないから!
(剣術でお母さんが劣っている!?しかもボコボコって……これは。)
(うわぁ……話を聞く限りだと、全然隙がないじゃん……しかも、オーラの波も一切ないし……大会で当たりたくないなぁ。)
(大会で優勝するとなると、絶対に倒さないといけない。だけど、武器を使った戦闘が得意、特にナイフと銃。その他の武器の熟練度も達人クラス、証拠にお母さんが剣術でもボコボコにされたと言っている。)
(しかも今回が初出場だから、戦いの癖とか弱点とかも能力とかも分からない……かなり不味いかもしれないわね。)

いや泣いて……まぁ良いか。
そう言い、ジャガーは腕時計を見て、少し困った顔をする。

不味い、ホテルのチェックインの時間があと少しだ。
そうなの?じゃあ早く行ったほうがいいわよ。

そうしたいのは山々だ……だが、現在は迷子だ。
迷子……早く方向音痴直しなさいよ、だらしないわね。

ぐっ……柊君、こういうときどうすれば良いんだ?
いや、さっきから言おうと思ってたんですけど……スマホでナビしながら行けば良いんじゃないですか?

……ナビ?何だそれ?
(ナビを知らない!?やっぱこの人ちょっと抜けてる……。)
えっと、スマホありますか?

あるぞ、全然使ったことないが。
そう言いジャガーはスマホを取り出した。そうすると要はホテルの場所を聞いて、それを地図アプリに入力してナビを出してあげた。
この黄色い所を進めばつけますよ。

なんと……こんな便利な機能があるのか、これが文明の利器『スマートフォン』……いやはや、恐ろしい。助かったよ柊君、この恩は忘れん。ではまた!
そう言い、ジャガーは走り去って行った。
何か面白い親戚のおじさんみたいだったね。
本当にそんな感じだな……悪い人ではなさそうだし。
その日の夜……雪花はメリアとパトと話していた、その内容派……
ねぇ、二人共。ジャガー・エステートって人知ってる?
誰だそれ?
聞いたことありませんね。
やっぱりか……。
その人がどうかしたの?
……今日、2人は会ってないと思うんだけど、駅でお母さんたちと一緒に居たの、途中でホテルのチェックインがあるからって言って急いで帰っちゃったけど、元お母さんの同期で、地球防衛軍の特殊部隊で隊長をやってるらしいの。
特殊部隊?
何でも、悪信教の討伐と国際指名手配の拘束とかを中心にやるっていう部隊らしくて、実力も相当なものらしいのよ。
でも、そんなことはどうでもいい。問題はジャガーっていう人……あの人、もしかしたら大会で一番警戒した方が良いと思う。
大会で?そんなに強いんですか?
昔はお母さんもお父さんも、月詠さんも敵わなかったほどの実力者と言っていたわ……しかも、現役のお母さんより剣術も圧倒的に上らしい、本人は剣術をメインで使わないというのに。
現役の母さんが剣術で敵わない……。
(しかも父さんや月詠さんも敵わなかった?今は違うのか?……いや、今も強いに決まってる。多分、父さんと月詠さんと同等、もしくはそれ以上の実力はあるはずだ。)
成程……それは今すぐ過去の試合結果を見て対策しないといけませんね。
それなんだけど……実はジャガーさん、一度も大会に出たことがないらしくて、今回が初出場なの。
成程……。
でも、大会の予選の戦闘を見て対策することも出来ます、恐らく武器を中心に戦う人だとは思いますが、なんの武器を良く使うか分かりますか?
確か、ナイフと銃をよく使うって言ってたわ。
ナイフと銃……近接と中距離と遠距離、どれも得意ということですか。
(想像以上に隙がないですね、その様子だと予選で能力は使わなそうですし。)
あとは情報ありませんか?
えっと……戦闘に関してはないけど、容姿は背は高めで黒いYシャツに水色のネクタイ、紫色の髪を後ろで結んでるわ、一応言っとくと男性。
(黒いYシャツで水色のネクタイ、紫色の髪……あっ!)
そういえば、その人と監獄塔で一度だけお会いしました。あの人がジャガーさんなんですか。
え!?監獄塔にいたの?
俺は会ってないんだが……。
確か、凍夜さんと一緒に来てましたけど、ちょっと話して凍夜さんとどこかに行ってしまったので無理もないですね。ハクとソフィアとカナも会ったと思いますよ。
(それにしても、あの人がジャガーさんですか……監獄塔でお会いしたとき、かなり異質な気配だとは思いましたけど……まさか隊長とは。)
一方ジャガーは、ホテルのチェックインを無事にすることができ、部屋で酒を飲んでいた。

んぐんぐ………うめぇ。

酔うとまずいから少量にしとくか。
そう言い、ジャガーは酒瓶を部屋に設置されている冷蔵庫にしまう。そうして、ベランダに出て懐から煙草とオイルライターを取り出し、口に加えてオイルライターで火をつけて吸う。

すぅ……はぁ……。

シロンに止めろと言われたが、中々止められるものでもないよな……バレたら殺されるだろうけど。
吸っている銘柄はナチュラル・アメリカンスピリット。ジャガーが昔から好んで吸うものだった。

これも大人の楽しみだし、許してほしいものだな。それにしても、今日はラッキーだった。凍夜の所の娘たちと会えて……誰かとは一戦交えたいものだ……だが。

本気を出したらすぐ終わってしまいそうだからな、手加減せねば。
そう言い、ジャガーは煙草をもう一度吸う。

全く、今の世代はたしかに強い、だが俺らの世代に勝てるやつはそうそう居ない。

天野江は白鳳と凍夜と一緒に世界三強と数えられてはいるが、実際のところあの二人……いや、俺らの世界にまだ入れていない。

ま、世界三強に入ってない俺が何いってんだって話だが、俺は表に出てないだけだ。そもそも……
そうして、ジャガーは煙草をベランダに設置された灰皿に捨て、もう一本吸い出す。

世界三強なんて肩書に意味なんてない。

意味があるのは己の実力のみ。

肩書があっても、強くなければクズだ。

ま、実力があってこその肩書かもしれんがな。
そう言い、ジャガーは灰皿に煙草を捨て、室内に戻った。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。