最悪な初対面
初めてのシェアハウス生活。
玄関に並んだ見慣れない靴に、おれ
――あっきいは胸を高鳴らせていた。
扉を開けて顔を合わせたのは、背の高い男。黄色と緑のグラデーションの髪で少し鋭い目つき。
「今日からの同居人か。……俺、ぷりっつ」
低い声と関西弁。
その第一印象は、正直、最悪だった。
「おれはあっきいっていいます!よろしくね!」
元気いっぱいに手を差し出すと、彼はちらりと視線を向けただけで、ひらりとかわして部屋に入ってしまった。
(え、なにその態度……?)
元気の擬人化とまで言われてきたおれに、こんな冷たい対応は初めてだ。
一瞬で心が凍った。
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数日後。
ぷりっつは相変わらず無口でぶっきらぼう。
挨拶しても返事があったりなかったり。
「同居人って仲良くするもんだろ」と思っていたおれには、余計に苛立ちが募る。
そんなある夜、玄関のドアが乱暴に開いた。
「……っくそ」
いつもより足取りのおぼつかないぷりっつが、ふらつきながら入ってきた。
「ぷりちゃん!?酔ってんの!?」
返事はなく、そのままリビングのソファに倒れ込む。
ため息をつきながら、水を汲んで差し出すと、かろうじて顔を上げた彼の目が潤んでいるのに気づいた。
「……飲まなやっとれへん日も、あるんや」
かすれた声。
いつも強がってばかりの彼が、少し弱さをのぞかせた瞬間だった。
「……そういう日もあるよね」
自然とそう返していた。
タオルで汗を拭き、靴を脱がせ、毛布をかける。世話を焼いているうちに、最悪だと思っていた印象が少しずつ変わっていく。
「……お前、えらい世話焼きやな」
「放っとけるわけないでしょ」
「……ありがとな」
その一言に、不思議と胸があたたかくなった。
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夜も更けて、ソファに寝かせておくのも可哀想で、仕方なく自室の布団に連れて行く。
ひとつの布団に男二人。
ぎこちなく背中を向け合う。
「ねぇ、ぷりちゃん」
「ん?」
「最初の印象、最悪だったんだ。冷たいし、怖いし」
「はは、せやろな」
「でも今日ちょっと、イメージ変わった」
「……ええこと言うてくれるやん」
彼の声は酔って少し柔らかく、まるで本当の自分を隠していないみたいだった。
そのまま静かな寝息が聞こえてきて、おれも目を閉じる。
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翌朝。
窓から差し込む朝日で目を覚ますと、すぐ目の前にぷりっつの寝顔があった。
普段の鋭さなんてなく、穏やかな表情。
「あ……」
息がかかりそうな距離に気づいて、思わず固まる。
「おはよ」
目を開けた彼が、ふっと笑った。
「昨日のこと、あんま覚えとらんけど……お前の顔見たら、安心したわ」
鼓動が跳ねる。
昨日まで最悪だと思っていた相手が、こんなにも近くて、あたたかい。
「……ね、ねぇ、今日からはもっと普通に話そーよ。せっかく同じ家に住んでんだし……」
「せやな。……頼むわ、あっきい」
そう言って笑ったぷりっつに、初めて“可愛い”と思ってしまった。
最悪だった初対面は、少し照れくさい朝へと変わっていた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!