剣持先輩と別れた帰り道。
なんだか妙にもやもやするから、図書館に寄ることにした。
課題で必要な本と、あとは趣味用で借りる本と…。
図書館に置かれている端末で欲しい本を検索し、本の場所を印刷してもらった。
…あった、けど……
7段ある本棚の一番上。
身長が154㎝しかない私には到底届かない高さだった。
台を取りに行くしかない、そう思った時、本がすっと抜き取られた。
…同じ高校の生徒のような袖が見えた気がする。
はっと声のした左を向くと、本を私に差し出している男の人がいた。
ふわりと礼儀正しく微笑む加賀美先輩。
……また会った。ROF-MAOの一人に。
さっと本を受け取り、そそくさとその場を離れた。
そうやって加賀美先輩もどこかへ歩き出し、私に関わってこようとはしなかった。
…正直、もっと何か言われると思って身構えていた自分がいる。
「仲良くしましょう」とか、「この前はどうも」、とか。
そんなことを考えてしまっている自分を振り払い、椅子に座って本を開いた。
✣✦⊷ーーーーー⊶✦✣
数分後、課題のページをメモしていると、近くに誰かが座った。
顔を上げて見ると、加賀美先輩が本を読んでいた。
私に声をかけることもなく、黙々と。
それが、なんだか居心地がよかった。
✣✦⊷ーーーーー⊶✦✣
しばらくして。
私が本を直すために立ち上がると、一冊の本が落ちて転がってしまった。
拾おうとしゃがんだ時、加賀美先輩が私より早く行動して、本を拾い上げてくれた。
本についたほこりを軽く払ったとき、本のタイトルに目が留まる。
本を私に手渡した後、ボソッと訪ねてきた。
加賀美先輩は自然な笑顔を浮かべ、私を見ている。
____ふと、口に出てしまった。
持っている本をぎゅっと握る。
加賀美先輩は少しだけ目を丸くし、それからふっとほほ笑む。
その言葉に、胸が少しだけざわついた。
そう言って加賀美先輩は立ち上がる。
持っていた本を棚に戻し、図書館を出ていった。
机に向き直ると、一つの飴とメモが置いてあった。
” 勉強頑張ってください
いつでも応援しています ”
飴の袋を破いて口に放り込む。
口の中で転がすと、ほんのりミルクの甘い香りが広がった。
……母のまとっていた香りのような…
その時、母の声が脳内に響く。
『 誰も見ていないところで、丁寧にすることを心がけて。
困っている人には優しくする。情けは人の為ならず、よ 』
私は首を振り、飴を転がすスピードを速めた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。