前の話
一覧へ
次の話

第1話

君が唯一泣いちゃう日
44
2025/05/17 20:13 更新
"おはよう、逢いに来たよ。お誕生日おめでとう。フロリアン。"

「来てくれて嬉しいよ!ありがとう、エドガーくん!」

今日は僕の誕生日。
愛する君が逢いに来てくれて、お祝いをしてくれる。
今日は素敵な1日だ。君を抱き締めたい。君と、もっとずっと一緒に居たい。君と、君と、もっと、色んなことがしたい。
でも…それはきっともう叶わない。
分かってる。分かってるよ。
今、目の前に居る君も、また明日にはいなくなってしまっているんだろう。でも、君は優しいから、僕の誕生日だけは、逢いに来てくれたんだよね。嬉しいな、今日は幸せな日だ。ずっとこの日が続けばいいのに。
…でも、でも、やっぱり寂しいよ、
エドガーくん。もう、耐えられない。どうして、どうして僕を置いていったの、?もう置いていかないって、君を1人にしないって言ってくれたのに。帰ってきてよ。僕、ずっと待ってるから。お願い、エドガーくん…
上手く、笑えない。いつもは何があっても、ちゃんと笑えてる。なのに、今、目から流れているものは何?
笑わないといけないんだ。約束したの。お父さんとお母さんと。エドガーくんだって君の笑う顔が好きだから笑っててって言ってくれた。だから、笑わないといけない。
でも、笑えないよ。ねえ、エドガーくん。今日くらい、許してくれる?

"しょうがないね、いいよ、フロリアン。好きなだけ泣くといいよ。今日だけは、いいよ。僕が許してあげる。"

そう君が言ってくれたから。
だから、今日だけは泣いてもいい。
いつもの笑顔はもう、ぐしゃぐしゃで、僕は声を上げて泣いてしまった。真っ暗闇に一人取り残された子供のように。泣き疲れて眠るまで、ずっと、ずっと。

"僕は居なくなってないよ。見えなくったって、ずっと君の傍に居るよ。僕が言ってるから、居るんだよ。だから、大丈夫。フロリアン。明日からは、ちゃんと笑ってね。"

「おはよう、エドガーくん!」

…そう言ったってもう
返事は帰ってこない。
目は真っ赤に腫れてるけれど、
もう泣くのはおしまい。
今日だけって、君と約束したから。
だから、笑わなくちゃ。いつもの、笑顔で、みんなに明るく挨拶するんだ。僕なら出来る。だって、君がいつもついてる。そう、君が言っていたから。

大丈夫、僕の傍にはずっと君が居る。
ちゃんと、笑えるはず。
そう思いながら、大きな扉を開ける。

「おはよう!今日も良い天気だね!」

ほら、上手く笑えた。
エドガーくん、見てる?
僕、出来たよ。褒めてくれる?
悲しい気持ちは心の奥にしまって、
明るく振る舞う。
僕はもう大丈夫。きっと大丈夫。
また来年も逢いに来てくれたらいいな。

プリ小説オーディオドラマ