"おはよう、逢いに来たよ。お誕生日おめでとう。フロリアン。"
「来てくれて嬉しいよ!ありがとう、エドガーくん!」
今日は僕の誕生日。
愛する君が逢いに来てくれて、お祝いをしてくれる。
今日は素敵な1日だ。君を抱き締めたい。君と、もっとずっと一緒に居たい。君と、君と、もっと、色んなことがしたい。
でも…それはきっともう叶わない。
分かってる。分かってるよ。
今、目の前に居る君も、また明日にはいなくなってしまっているんだろう。でも、君は優しいから、僕の誕生日だけは、逢いに来てくれたんだよね。嬉しいな、今日は幸せな日だ。ずっとこの日が続けばいいのに。
…でも、でも、やっぱり寂しいよ、
エドガーくん。もう、耐えられない。どうして、どうして僕を置いていったの、?もう置いていかないって、君を1人にしないって言ってくれたのに。帰ってきてよ。僕、ずっと待ってるから。お願い、エドガーくん…
上手く、笑えない。いつもは何があっても、ちゃんと笑えてる。なのに、今、目から流れているものは何?
笑わないといけないんだ。約束したの。お父さんとお母さんと。エドガーくんだって君の笑う顔が好きだから笑っててって言ってくれた。だから、笑わないといけない。
でも、笑えないよ。ねえ、エドガーくん。今日くらい、許してくれる?
"しょうがないね、いいよ、フロリアン。好きなだけ泣くといいよ。今日だけは、いいよ。僕が許してあげる。"
そう君が言ってくれたから。
だから、今日だけは泣いてもいい。
いつもの笑顔はもう、ぐしゃぐしゃで、僕は声を上げて泣いてしまった。真っ暗闇に一人取り残された子供のように。泣き疲れて眠るまで、ずっと、ずっと。
"僕は居なくなってないよ。見えなくったって、ずっと君の傍に居るよ。僕が言ってるから、居るんだよ。だから、大丈夫。フロリアン。明日からは、ちゃんと笑ってね。"
「おはよう、エドガーくん!」
…そう言ったってもう
返事は帰ってこない。
目は真っ赤に腫れてるけれど、
もう泣くのはおしまい。
今日だけって、君と約束したから。
だから、笑わなくちゃ。いつもの、笑顔で、みんなに明るく挨拶するんだ。僕なら出来る。だって、君がいつもついてる。そう、君が言っていたから。
大丈夫、僕の傍にはずっと君が居る。
ちゃんと、笑えるはず。
そう思いながら、大きな扉を開ける。
「おはよう!今日も良い天気だね!」
ほら、上手く笑えた。
エドガーくん、見てる?
僕、出来たよ。褒めてくれる?
悲しい気持ちは心の奥にしまって、
明るく振る舞う。
僕はもう大丈夫。きっと大丈夫。
また来年も逢いに来てくれたらいいな。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。