五条悟side
俺にはとある秘密があった。
それは、体調不良になり、脳にかなりのダメージを負うと、“甘えんぼ”になることだ。
俺自身もその頃の記憶を覚えちゃいない。
だからこの事実はとある日に知った。
20XX年X月
「やっと終わったー!」
「そうだね、悟」
この頃の俺たちは繁忙期で毎日のように任務が入っていた。
夜寝る暇が無いのも当たり前だ。
おまけに先生に報告書を迫られるから傑とゲーセンに行くこともできない。
まじでつまんねぇ時期だ。
だからか、ここのところ体調が優れなかった。
(まぁ、いいでしょ。なんにせ、俺って自他共に認めちゃう最強だからね☆)
傑side
最近、悟の様子がおかしかった。
別に違和感はないが、私の勘が変だといっている。
…気のせいなのだろうか。
そう考えていたある日、目の前で悟が倒れたときは本当に驚いた。
「ゴホッッッゲホッッッ…」
地面にうつ伏せになったまま、激しく咳き込んでいる。
苦しそうに何回も何回も。
「悟!悟、大丈夫かい?!」
急いで数メートル先にいる悟に走って近寄った。
私が出会ってからこんなことは一度も無かったからか、ゾッと血の気が引く。
「ゴホッッッ…傑…。大…丈夫」
悟は言っていることと体が食い違っている。今にも死んでしまいそうな顔をしている。
「悟…。気づけなくてごめん。大丈夫…?」
そう問いかけたが返ってこない。
悟が…ぐったりとしていた。
(はッッッ硝子!)
だいぶ前に開いた帳をくぐる。
それからは覚えていなかった。
ただ、隣でもがき苦しんでいる悟をハラハラしながら見ていた。
補助監督の方に私はちゃんとお礼を言ったのだろうか。
気絶してビクともしない悟を支えながら硝子の元へ急いだ。
「硝子っっっ!悟が…悟が!どうしよう!」
「分かってるから落ちつけ。
話は聞いてる、行くぞ。」
門のところで待ってくれていたのであろう。救急バッグらしきものを持っていた。
こんなときでも、硝子は冷静だった。
それからすぐ、悟は医務室に運ばれた。
カーテンの向こうで咳きこむ声や、器具の音がした。
…悟の荒い息は特に…。
3時間ほどしたのだろうか。
「もう五条は安定したからお前の部屋で見てやれ。そんじゃ。」
「あ、ああ…。」
その言葉を聞いてひとまず安心した。
落ち着いた呼吸が、ものすごくうれしかった。
顔色も先ほどとは大違いになっていて、目が潤った。
私の部屋に着いてから2時間して、空がオレンジに染まり終わった頃、悟の蒼い目が少し輝きを失った状態で開いた。
でも、まるで悟じゃないようだった。
「ん…。しゅぐる?そんなかおひて、どちたの?ケホンッッッ」
「……は?悟?」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!