翌日。
いつものように洋館へ向かったあなたは、門の前で足を止めた。
そこには、一枚の白い張り紙。
『老朽化のため、来月より解体工事を開始します。立ち入りは○月○日までとなります。』
あなたは何度も文章を読み返した。
"解体"
その二文字が頭から離れない。
もし洋館がなくなったら、この庭はどうなるのだろう。
赤いバラは。
そして、ロゼは──。
庭へ入ると、ロゼはいつものようにバラの手入れをしていた。
その優しい笑顔を見た瞬間、ロゼの目に涙が浮かぶ。
思わず駆け寄ると、ロゼは少し驚いたように目を丸くした。
あなたの震える声を聞いたロゼは、静かに目を閉じた。
まるで、最初から知っていたかのようだった。
ロゼは赤いバラを見つめながら、小さく笑う。
あなたは何も言えなかった。
風が吹き、花びらが舞う。
その景色は、いつもと同じはずなのに、今日はどこか寂しく見えた。
あなたはうつむいた
涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
ロゼは少し困ったように笑った。
あなたの声は庭に響いた。
ロゼはそっと赤いバラに触れる。
あなたは首を横に振る
ロゼは寂しそうに笑う。
その言葉の意味を、あなたはまだ理解できなかった。
ただ一つ分かったのは_____
二人に残された時間が、本当にあとわずかだということだった。
夕日が庭を赤く染める。
散り始めたバラは、まるで別れの時を静かに数えているようだった。
あなたは心の中で願う。
あと少しだけ。
あと少しだけ、この時間が続きますように。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!