蒼は、しばらく放心していた私を心配する。
そう言って私の背中をさする蒼は、確かに蒼だった。
驚いた、なんて言葉で表せるほどのものじゃない
昨日までどこの誰かわからなかった推しが、ずっと目の前にいた人だったなんて
いつも通りになんて出来ない。
だって蒼は好きな人で推しなんだから、余計意識してしまう
無意識の内に大きなため息が溢れた
蒼side
ついさっき俺が歌い手、『ライカ』だってことを打ち明けた
ずっと秘密にしていたから、俺的には清々しさもある…んだけれど
あなたちゃんはソファの隅の隅に座っていた
と、困ったように苦笑いをする
だから前のように笑いかけてほしい
その笑顔が俺にとっての元気の源。だから…!
教えてほしい。俺、なにかした?
あなたちゃんのためなら歌い手を辞めることだってしてみせる。だから…
…かわいい。不意にそう思ってしまった
確かに関係が終わる可能性もあった。だから隠していた節もある。
でも、反応を見て、話して、確信した。
うん。そうそう、この感じ…
何でもない、友達とするような会話でも、こんなに幸せになれる。
機嫌も治ったみたい…よかったぁ……
でも、まだまだ不意打ちには慣れません……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。