「あ、姫。やっと来たのぉ?」
向かった先には、もう1人の騎士が待っていた。
「まったく。こっちも暇じゃないんだけどぉ〜?」
騎士は顔を歪めながらもテキパキと準備を整えていく。
「まぁあいいや。ほら、そこに座りなよ。綺麗にしてあげるからさぁ」
そう言って上品なスツールにエスコートする。
「姫って綺麗な顔してるよねぇ。もちろん、俺には及ばないけど。化粧すれば、もっと可愛くなるんだからねぇ?」
騎士は先程とは打って変わって、機嫌が良さそうにメイクを施していく。
「そういえばだけど。そのドレス、れおくんが選んだの?」
騎士の問いに姫が頷くと、騎士はふぅん、と小さく呟く。
「あいつ、いいセンスしてるじゃん。ドレス、姫に似合ってる」
騎士は改めてドレスを見て、満足気に頷く。
「あはは、照れてるの?ま、じっとしててよねぇ。もうすぐ終わるからさぁ」
そう言って騎士は最後の仕上げに取り掛かる。
メイクを終え、道具を置くと姫の手を取って立つように促す。
「うん、俺がメイクしたんだからばっちり可愛いよ。でも、変な虫がつかないか不安だなぁ?」
騎士は少し考えるような仕草をするが、直ぐに微笑んで
「ほら、まだ準備終わってないんでしょ?さっさと終わらせてきなよねぇ?」
そう言って、頭を優しく撫でた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!