静かに、言葉を吐く莉犬。
僕はやっぱり、何も言えなかった。
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ーあのあと、玄関で立ち尽くす莉犬の手を引っ張って無理やり中に入れた。
幸い、親は家にいない。
何も喋らない莉犬にシャワーを浴びさせ、着替えを貸して部屋に呼ぶ。
僕から聞くのも何か違う気がして、僕のベッドに座って俯いている莉犬が喋るのを待つ。
ー突然、莉犬が話し始めて。
莉犬が殺した、相手を知った。
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少し笑いを含ませて、震える声で莉犬が呟く。
僕は黙って莉犬の隣に座り、背中をそっと撫でた。
僕だって、もちろん知っていた。
とっくに、気づいていた。
莉犬が虐められていること。
少しずつ、莉犬が笑わなくなっていったこと。
このままだと、莉犬が、壊れてしまうこと。
それなのに、僕は何もしてあげられなかったこと。
僕は耐えられなくなって、莉犬の肩を掴んで僕のほうを向かせた。
莉犬の顔は涙と恐怖でぐちゃぐちゃだった。
莉犬は泣いているはずなのに、言葉には強さがこもっていた。
きっと、クラスメイトを殺した昨日から今日まで、ずっと考えていたんだろうな、と思う。
それが、辛かった。
どんな気持ちだったんだろうって。
考えるだけで、苦しくなる。
だから、一人じゃないよって伝えたくて。
こんな苦しみを、まだ子供の僕たちが背負うには重すぎるから。
だから、せめて2人で。
ぎゅうって、強く莉犬を抱きしめた。
疑ってもいなかった。
ただ、莉犬に全部背負わせるわけにはいかないから。
莉犬を一人になんか、させない。
できるだけ、軽くなるように言う。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。