そこにいたのは、人…だった。
「常連さんだよ。前からよく来てくれてるんだよね、えっといつからだっけ…?」
「………君が、…ここに来てからぐらい、かな」
マスクの下でモゴモゴと口を動かす。
後ろにいた人は随分と長身の男だった。185㎝ぐらいだろうか。彼の容姿を一言で言えば「不審者」。二言で言うなら「綺麗めな不審者」。不審者に変わりはない。
年齢はわかんないけど、店長よりは上だと思う。
「そっかぁ…確かにそのぐらいかもね。あ、あとこの子は今日から入ってくれた神崎くんだよ。」
「は、はじめまして…」
「…頑張ってね」
「ありがとうございます…?」
彼はふいっと背を向け、ドリンクコーナーへと向かった。
「じゃあ、早速レジ対応やってみようか」
「は、はい!」
よくわからないけど、なんとかここでやる以外何も出来ない。店の売り上げとバイトの給与は関係ないらしいし、幽霊なんか怖くない。…怖くない、よな
両腕に鳥肌が立つ。手のひらで腕を擦り、誤魔化した。
「じゃあ…よろしく」
「は、はい!」
レジの使い方は前の店舗で教えて貰った一回きりだ。今は隣に店長がいるから安心だけど…
常連さんがカウンターに置いたのは缶コーヒー2つにミニシュークリーム。
「またこのセレクトか。」
「…あぁ。」
どうやらいつも同じ買い物をしているようだ。スキャナーでバーコードを読み取り、画面の表記を読む。
「67円が二点、120円が一点…やっっす!?」
「どうかした?」
「安すぎますよ!これ」
コーヒーは大体140円ぐらい、シュークリームは200円程度だろ?
「あーうち全品半額だからさぁ…うまめ棒も5円ぐらいだし。あ、今は7円か」
「な、なんで半額に?」
「集客のために本部に掛け合って下げ続けてたら半額になっちゃって。
お客さんには「安すぎて怖い」って言われちゃったし」
「そりゃそうだよ、ヤク入ってても疑わねぇよ」
「……」
「ま、大丈夫大丈夫〜。いつも通り254円になりまーす」
「…カードで、」
「は、はい。」
なんでこの常連は順応してるんだよ。あ、常連だからか
何話かにして俺の苦労をわかってもらえたら嬉しい。
「はぁ…」
店長は無害な幽霊ばかり、と言った。大間違いだ。全員目が合ったら、いや、目が合う前から襲ってくる。
とりあえず怪しい影を見たら銃で発砲。これが俺が今心がけてることだ。
まぁ、そのせいで何回か店長を撃ちかけたんだけど…
もらった銃は霊体に効く特別なものらしい。
どこで入手したんですか?って聞いたら、静かにいつもより倍の笑顔をむけてきた。
あの人怖い。
「はぁぁぁ…今日もバイトかぁ」
学校の昼休み、節約弁当を食べながらスマホのカレンダーを確認する。
節約弁当の中には、鶏胸肉を適当に焼いたやつとブロッコリー。ちょっと焦げてるいびつな卵焼き。面積半分のご飯は塩を振りかけただけ。それ以外はもやしで構成されてる。
当然足りない。男子高校生を舐めないでくれ
でも、金を貯めるにはしょうがない…
「天音、遅くなって悪りぃ…って、またその弁当かよ」
「蒼斗〜!寂しかったんだぞこっちは」
友達の篠原蒼斗。中学の時からの親友だ。他にも数人、友達はいるが、全員委員会のせいで今はいない。
「部活の呼び出しだったんだって。そういえば、卓球部どうすんだよ?」
「あー……」
一応俺は卓球部所属だ。が、試合はともかくピンポン玉を打った記憶もあまりない。
バイトで放課後は光の速さで帰るので。
じゃあ、なぜ入ったか?…圧に負けました、が正解だ。
中学の時に色々お世話になった先輩がいるのだが、その先輩の圧にやられた。
高二になってからは完全に幽霊部員。最後に行ったのいつだっけ?
話を変えよう。
「…サハラ砂漠のサハラは砂漠を意味するんだって。つまり砂漠砂漠。」
「え、何の話?」
「彼女ほしい」
「それは同感。あーーー…告りてぇー」
はい、変えれたー












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!