第16話

16 ~田中樹side~
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2025/07/31 09:00 更新
俺はもう長くは生きられない。
それはもともとわかっていた。
でも、死ぬことがこんなにも怖くなるなんて、思ってもみなかった。
俺は、こんなときにあなたの下の名前を好きになってしまった。
あなたの下の名前に恋をしてしまった。
だからだろうか。
俺はまだ生きていたい。
中学生の頃の俺が憎たらしくて仕方がなかった。
あなた
今日は、こんなお花持ってきたよ
田中樹
これはなんて花?
あなた
これは、リナリア
田中樹
へーかわいい
田中樹
紫、珍しいね
あなた
あ、確かに。いつも黄色多かったもんね
田中樹
うん!
田中樹
ありがと!
あなたの下の名前はいつも花瓶の花を取り替えてくれている。
毎週何を持ってきてくれるのか、楽しみで仕方がなかった。
でも俺は、あと何回彼女が持ってきた花を見ることができるんだろう。
俺は自分が日に日に弱っていくのを感じていた。
いつが終わりになるかわからないから、今を大切にしなきゃいけないね
あなた
ほんとごめんなんだけど、今日実家に帰らないといけなくて、お母さんたち待ってるからもう行くね
田中樹
うん!気をつけてね!
あなた
うん!またね
彼女が立ち去った後、スマホを開いた。
田中樹
花言葉、、調べてみようかな
前にふーまとてらから聞いた。
花には花言葉があって花に自分の想いを託して送る人もいるんだとか。
俺は今日持ってきてくれたリナリアの花言葉を検索した。
一番上に出てきた言葉に思わず声が漏れた。
田中樹
えっ
田中樹
うそ…
リナリアの花言葉は、「この恋に気づいて」
田中樹
ぐ、偶然かもしれない
俺は黄色のミモザの花言葉を検索した。
田中樹
っ!?
この花言葉は、「秘密の恋」
田中樹
あなたの下の名前が‥俺のこと、好き?
俺は黄色いアネモネを検索した。
この花の花言葉は、「儚い恋」
田中樹
ま、まさか…
田中樹
両思い‥?
この恋は封じ込もうと思っていたけれど、封じなくてもいいのかもしれない。
この花言葉が、そう思わせてくれた。

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