俺はもう長くは生きられない。
それはもともとわかっていた。
でも、死ぬことがこんなにも怖くなるなんて、思ってもみなかった。
俺は、こんなときにあなたの下の名前を好きになってしまった。
あなたの下の名前に恋をしてしまった。
だからだろうか。
俺はまだ生きていたい。
中学生の頃の俺が憎たらしくて仕方がなかった。
あなたの下の名前はいつも花瓶の花を取り替えてくれている。
毎週何を持ってきてくれるのか、楽しみで仕方がなかった。
でも俺は、あと何回彼女が持ってきた花を見ることができるんだろう。
俺は自分が日に日に弱っていくのを感じていた。
いつが終わりになるかわからないから、今を大切にしなきゃいけないね
彼女が立ち去った後、スマホを開いた。
前にふーまとてらから聞いた。
花には花言葉があって花に自分の想いを託して送る人もいるんだとか。
俺は今日持ってきてくれたリナリアの花言葉を検索した。
一番上に出てきた言葉に思わず声が漏れた。
リナリアの花言葉は、「この恋に気づいて」
俺は黄色のミモザの花言葉を検索した。
この花言葉は、「秘密の恋」
俺は黄色いアネモネを検索した。
この花の花言葉は、「儚い恋」
この恋は封じ込もうと思っていたけれど、封じなくてもいいのかもしれない。
この花言葉が、そう思わせてくれた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!