第62話

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2026/04/03 10:00 更新



駒沢 雷
…俺に、しないか。



(なまえ)
あなた
……え、?

何を言われたのか分からずフリーズする。
遅れて意味が追いついてきて、思わず声が漏れる。
(なまえ)
あなた
な、にを……

はっきりとこちらを捉える雷の表情は、いつも見ているはずなのにどこか違って見えた。
駒沢 雷
ずっと、お前のことを見ていた。

淡々とした口調のはずなのに、言葉だけがやけに重く感じた。
駒沢 雷
あなたが乃依のどこを好きなのかも、ずっと聞いていた。

少し辛そうに顔をゆがませる雷。
その顔に、胸の奥がざわついた。
駒沢 雷
……でも。

少しだけ言葉を切って、視線を逸らす。
駒沢 雷
もう、無理だって、理解してしまったんだろう?

俺は何も言えず、否定も肯定もできずに黙り込む。
花火の音だけが、間を埋めるみたいに鳴り響く。
駒沢 雷
……なら、

もう一度、視線が俺に向けられる。






駒沢 雷
あなたの空いたところを、俺にくれないか。

優しく微笑むその顔は、笑っているようで笑っていない。
むしろ、どこか必死で。
切なくて。
(なまえ)
あなた
(……そんな顔、初めて見た。)











(なまえ)
あなた
……なんで、

ようやく出た言葉は、これだった。
(なまえ)
あなた
なんで、今なの、?

本当は、もっと違うことを聞きたかったのかもしれない。
けれど、うまく言葉にならなかった。
雷は少しだけ目を伏せて、悔しそうに言う。
駒沢 雷
…今じゃなきゃ、言えなかった。

その言い方が、妙に現実的で。
俺はぐっと言葉に詰まる。

また、花火が上がる。
さっきよりもずっと大きな光が、夜空いっぱいに広がった。
その明かりの中で、雷の顔がはっきりと見えてしまった。

いつもと同じだけど、真剣で、本気の顔。
ずっと、俺だけを見てた顔。

____ずっと、隣にいてくれてたのに。
(なまえ)
あなた
……わかん、ないよ。

ぽつりとこぼれた本音は、自分でも情けないくらい弱かった。
(なまえ)
あなた
今、そんなこと言われても……

さっきまで、別の誰かでいっぱいだった場所が、急に空っぽになった感覚。
そこに何を入れていいのか、今はわからない。
駒沢 雷
…いいんだ、今すぐじゃなくて。

意外にもあっさりした声。
けれど、次の言葉は逃がさないみたいに続く。
駒沢 雷
でも、覚えておいてほしい。
駒沢 雷
俺はお前のことが好きな一人の男だってこと。
(なまえ)
あなた
…なにそれ笑

雷らしからぬ発言に、俺は思わず笑ってしまう。
こんな状況なのに、少しだけ楽になった気がした。
(なまえ)
あなた
(…ずるいなぁ)

…と、そう思う。
そんな風に優しくされたら、俺は突き放すこともできなくなる。
(なまえ)
あなた
…じゃあ、俺に教えてよ。雷の気持ち。

花火が、最後の大きな音を立てて花開く。
夜空いっぱいの光が、ゆっくりと消えていく。
駒沢 雷
…俺でいいなら、全部。

雷はそう言って、俺の肩を抱き寄せて額に唇を落とした。
俺は花火のように儚く燃えてしまった最初の恋に別れを告げる。


そして、もしかしたらあるかもしれない幸せの始まりに、火をつけていた。


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