洞窟の中には、静かな寝息だけが響いていた。
焚き火はほとんど消えかけていて、赤い火種がかすかに揺れている。
私は毛布代わりの上着にくるまりながら眠っていた。
疲労が限界だったのだろう。
昨日の逃走と足の痛みで、目を開ける気力すらないほど深く眠っていた。
――その時。
誰かの手が私の口を塞いだ。
反射的に目を開く。
けれど声は出ない。
男だった。
見覚えのない男が二人。
一人が私の口を押さえ、もう一人が身体を抱え上げる。
男たちは私を抱えたまま森へ駆け出す。
轟くんもすぐに追いかけた。
轟くんは全速力で森を駆ける。
すぐそこにいる。
追いつける。
そう思った瞬間。
男の一人が振り返った。
大きな岩を片手で放り投げる。
遠くの木にぶつかり、大木が大きく揺れた。
砂煙が舞うと、みんなの姿が見えなくなってしまった。
森は静けさを取り戻して行った
男たちに運ばれながら、私は必死に状況を整理していた。
逃げなきゃ。
助けを呼ばなきゃ。
そう思うのに、口を塞がれていて声が出せない。
個性も出せず、足も痛む。
まともに抵抗できない自分が悔しかった。
そんな中、男たちの会話が耳に入る。
その言葉で確信した。
やっぱり個性が出なかったのはこいつらのせいだ。
男は得意げに続ける
私は目を見開いた。
まるで相澤先生みたいな個性。
だから誰も個性を使えなかったんだ。
もう1人の男はパワー系
大きな岩を軽々持っていた
私は視線を逸らさなかった。
怖い。
正直、すごく怖い。
でも。
――みんなが来る。
そんな根拠なんてないのに、それでもそう思えた。
A組のみんななら。
轟くんなら、緑谷くんなら…
そして――
爆豪くんなら。
絶対に諦めない。
男たちはそんな私の表情に気づいていないのか、気づいていても気にしていないのか、そのまま森の奥へ進んでいく。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。