(なまえ:下の名前) side
目が覚めると同時に私を強烈なにおいが襲った。
強い匂いだった。
なんというか、獣の血臭い匂いだった。
思わず、口と鼻を手で覆ってしま、う…ほ、ど…
な、なんだよこれ、誰かのいたずらか?
手に、血が…
ん?まてよ…
手からも獣血臭い…
それに、さっきと同じ匂い…
それにさっきの匂いで気付けなかったが、
辺り一面には獣の死体、死体、死体…
なんだよ、これ、こんなこと、今回が初め…
いや、まてよ。
前にもこのにおいを感じた。
つまりは前もその前もこんなことがあったのか?
いっつも目が覚めるとそこは家だったからわからなかったが、
いや、分かるわけもなかった。
…取り合えず、さっさとここから離れよう。
誰かに目撃されたら大変厄介だ。
タッタッタッ
と地面をけり、ただひたすら家までの道のりを歩いた。
途中に私の大好物のキノコがあろうと、
それを無視して、私は走った。
走りまくった。
家についてから、箒の存在を思い出した。
あれで家に行けばよかったと思ったが、
空を飛ぶところはほぼ必ず誰かに見られるので、
飛ばなくてよかったと安堵した。
家に帰るや否、私は真っ先に風呂に入っていった。
誰かが今家に来たら私が誰かを殺したということが
バレてしまうから…
急いで血まみれの服は洗濯機に入れ、
血生臭い手を何回も何回も擦り、
体に染みついてしまった血の匂いも、
シャワーで洗い流した。
共に、この罪悪感から来た、
" 息苦しさ" も。
また寝て、目が覚めたら目の前には獣の死体が
あるということがあったら怖いから
って、そんなこと考えてたらもう夜なんだな…
まったく、熱心に体を洗ったもんだから、
いつもよりも長く風呂に入っちまった。
…まぁ、でもいいか。
あのことがバレて、霊夢の隣にいられなくなるよりかは
良いんだし。
…ついでにキノコ採取にでも行きたいが、
呑気にそんなことしたくないもんな。
扉を開け、すぐ横へ行くと、
魔法の森の出口に続く道がある。
ただ、いつもと同じ道だから飽きていたので、
今日は少しと私の家から遠いところから出口へと歩いていく。
すると、私の視界の片隅に" 赤い何かが” 移った。
片隅に映っただけで怖くなったが、好奇心とは恐ろしいもので、
私はつい気になり" 赤い何か” が見えた方へ視界を向けてしまった。
すると、そこには昼に見た獣の死体の山、山、山。
途端に強烈な異臭が私を襲ってきた。
それは、昼のにおいと同じ匂いだったが、
昼よりも強かった。
私はその匂いに耐え切れずに思わず近くにある
木の根っこのところに嘔吐してしまった。
今すぐにでもここから出よう。
その考えが頭をよぎり、急いで私は
森から出て行った。
無我夢中に走り続けていると、気が付くとそこは
人里のすぐそばだった。
人里に行こうかなとも思ったが、先ほどの異臭が
ついているかもしれないので、仕方がなく私は自分の家に
帰っていった。
帰るときは、箒で空を飛んで帰っていった。
歩いているときに誰かが私の異臭に気付き、
それも匂いに敏感な奴だったら、真っ先に私が
何かを殺したと思うはずだから。
家に帰ると私はまた風呂に入り、体を精一杯洗った。
勿論服も。
ご飯を作り食べようとするも、あんなものを見てしまった後のせいで、
まったくご飯に手がつかなかった。
寝ようとしても、どうしてもあのことを思い出し、
寝たら私がまた血まみれになっているんじゃないのかと考え、
怖くなりなかなか寝付けなかった。
忘れたい。
そう考えれば考えるほど忘れられなかった。
むしろ、あの時のことを思い出し、あの殺し方の悲惨さや、
鼻に着く強烈な異臭の匂いも、全て思い出してしまった。
そのせいで、私はこの夜は眠れなかった。
それどころか、
あの時、散歩なんかに行かなければよかった。
あのとき、別の道から行こうなんて考えなければよかった。
そう自分の選択を強く後悔した夜になった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。