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第1話

このキスは仕事だし
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2026/02/20 08:33 更新
冷静なフリをして、正面のパネルを見つめる。
画面では、会場の笑いを巻き起こしながら、コントが進められていく。
そろそろ、ファンのみんなは気づく頃。
今回のキスガチャは、俺らだってこと。
あべさくだってことに。
ドームが、次第に緑とピンクの2色で満ちていく。

やっぱり綺麗だね。そう言おうとして目線を上げる。逆光で、俺を見下ろす阿部ちゃんがどんな顔をしてるのかはわからない。
阿部ちゃん
阿部ちゃん
佐久間。
先に話しかけられ、口を半開きにしたまま、にょ、と応じる。阿部ちゃんがくすっと笑うのが聞こえた。
阿部ちゃん
阿部ちゃん
前から何回も言ってるけどにょってなんなんだよ笑
佐久間
佐久間
にょ?笑笑
阿部ちゃん
阿部ちゃん
ツナたちと同化してきてんじゃない?
そう茶化す阿部ちゃんの声はどこまでも優しくて、俺に安心を与えてくれる。またこの舞台に立つときも、この人と一緒がいいと、改めて思った。
阿部ちゃん
阿部ちゃん
あ、そうそう。もうすぐコント終わるよって言おうと思って。
佐久間
佐久間
もう!?
阿部ちゃん
阿部ちゃん
あっという間だね。
2人で大画面を見つめる。
大切なメンバーの笑顔が映っている。
俺と阿部ちゃんがアップになる。
暗転していく。
場面がゆっくり変わっていくみたい。
阿部ちゃん
阿部ちゃん
…くるよ。
穏やかな声と共に、一気に視界が明るくなった。
ようやくはっきり見えた阿部ちゃんの顔は、色っぽくてなんだか狼みたいで。
パネルに映っているのは、今この瞬間の、見つめあっている俺達。
会場のみんなが、俺達を見てる。
佐久間
佐久間
阿部ちゃん。
俺はプロ。SnowManの佐久間大介。
今日、ライブで、阿部ちゃんとキスをする。
これは仕事の一貫でもある。
鼓動よ速まるな。私情を隠せ佐久間。
そう自分に言い聞かせ、表情をつくる。
そんな俺の気持ちをわかっているのかいないのか、阿部ちゃんはそっと俺の頬に手を添える。

あぁ、もうどうにでもなれと、阿部ちゃんの首に腕をまわし、目を瞑った。

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