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第17話

ロマンも情緒もない
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2026/07/31 11:00 更新
乾 side


「夏祭り、やってるらしいよ。」


昼休憩。

スマホを見ながら何気なく言うと、向かいで弁当を食べていたあなたの下の名前が顔も上げずに返した。
あなた
…夏祭りどころじゃねえよ、なあ
暑過ぎるんだよマジで
ini
まあ、そうかもしれないけど
あなた
外に出るもんじゃない

そう言って麦茶を一気に飲み干す。
ini
折角の夏なのに??
あなた
夏だから暑いんでしょ
ini
そういう話じゃなくてさ
あなた
ん?
ini
いや…まあ別に

まあ、正直分かってた。

「一緒に行こう」なんて流れになる相手じゃない。

そもそも今日は二人とも残業確定だ。

祭りなんて、最初から縁がない。
午後九時過ぎ。

ようやく提出用の資料がまとまり始めた頃。

ドン、と低い音が社内に響いた。
ini
…花火?
もう一発。

今度は窓が一瞬だけ白く光る。
ini
見て、見てあなたの下の名前

パソコンに向かっていたあなたの下の名前が「あー?」と気のない返事をする。
ini
窓から花火みえる
あなた
ああ、ほんとやね
キーボードを打つ手は止まらない。
ini
(見ろよ)
1秒くらい。

折角見えるんだから。
ini
あなたの下の名前
あなた
んー?
ini
ちゃんと見て
立ち上がって窓際まで歩く。

ほら、と指を差した。


あなたの下の名前も「はいはい」と椅子を鳴らして立ち上がる。

そのまま俺の隣まで来た。



……近い。




思ったより近い。


肩が触れるか触れないか。
こんな距離になるつもりじゃなかった。


自分で呼んだくせに、急に心臓が忙しくなる。

窓の向こうでは、大輪の花火が夜空いっぱいに広がっていた。

赤、青、金色。
音が少し遅れて届く。
あなた
…おお
あなたの下の名前がようやく空を見上げる。
あなた
良いね
その一言に、少しだけ嬉しくなる。
あなた
ここ特等席じゃん
あなた
涼しいし
あなた
人混みじゃないし
あなた
花火の配置さいこーだし
ini
……
あなた
花火見るだけならこれで十分じゃない?


そう言って笑う。

俺は花火の光に照らされた横顔を見つめていた。

ini
(……くそ)

なんで絵になるんだよ。

ロマンも情緒もない癖に。
あなた
…ん?何?
視線に気付いたあなたの下の名前が首を傾げる。
ini
いや
ini
お前ロマンないヤツだなって
あなた
なんだって?聞き捨てならんな!
ini
普通「綺麗〜」とかじゃない?
あなた
おー?
あなた
乾ってそういうの大事にするタイプ?
ini
…悪いですか?
あなた
悪くない
即答。
あなた
そういうの、良いじゃん
ini
…そりゃどうも
その言葉だけで。

花火より顔が熱くなる。

夏の暑さのせいには、できそうになかった。
👉🏻 次回「イタズラ学概論③」

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