✧︎岩泉×及川
✧︎それでもいい方はどうぞ!!
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部活終わりの、人のまばらになった体育館。
モップかけも終わり、今日の練習も締めのストレッチを残すだけになった頃。
岩泉は、ふと視線を感じて振り返った。
「んだよ、及川」
及川は、床に座り込んで足を広げ、腕を上げて背中を伸ばす岩泉を、じっと見つめていた。
その表情は、いつものへらへらとした笑顔ではなく、どこか穏やかで、静かなものだった。
「んー?なんでもないよ、岩ちゃん」
そうは言うものの、及川の視線は岩泉から離れない。
岩泉は少し呆れてため息をついた。
「嘘つけ。なんか言いたいことあんだろ」
岩泉は上半身を少し起こし、及川をまっすぐに見返す。
及川は、ようやく観念したように、ふわりと笑った。
「ねぇ、岩ちゃん」
及川は岩泉の隣に少しだけ距離を詰めて座り、そっと囁くように言った。
「今日ね、いつものトス練のときすっごい調子良かったんだよ。岩ちゃんが、俺のトスを信じて、思いっきり叩き込んでくれるのが、たまらなく嬉しかった」
岩泉は、その言葉に一瞬だけ照れたように視線を逸らしたが、すぐに及川の目を見て言った。
「当たり前だろ。お前のトスを信じなくて、誰のトスを信じるんだよ」
その一言が、及川にとっては何よりも嬉しい褒め言葉だった。
及川は、岩泉の広い肩に、まるで仔猫のようにそっと頭を凭せかけた。
「…ありがと、岩ちゃん」
静かな空間に、及川の少しだけ甘えたような声が響く。
岩泉は、急な及川の行動に一瞬戸惑ったが、すぐに観念し、大きな手で及川の髪を、まるで弟をあやすように、優しくくしゃっと撫でた。
「おうよ。ほら、ストレッチちゃんとやれよ。明日に響くだろ」
「はいはい、わかってるってば」
そう言いながらも、及川はしばらく岩泉の肩から離れようとしなかった。
二人の間には、言葉にはしないけれど、確かな信頼と、誰にも踏み込めない甘い空気が流れていた。
青葉城西の夏の夕暮れ時の体育館は、彼らにとって、いつまでも変わらない、特別な場所だった………。
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50話でキリがいいので、一旦こっちの更新はやめます。
短い間でしたが、読んでくださりありがとうございました!
次からはこっちで投稿します。
リクエストしていただいているものはリセットしないのでご心配なく。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。