少し彼女に違和感を持ち始めたのは最近のことだった。
「あっれ、私携帯どこやした?」
『は?電話かけるぞ?』
「あ、うん、ありがと」
これで携帯無くしたの何回目だっけか。
いい加減辞めて欲しいけど あった! って喜んで携帯持つ姿が可愛いから注意できないんだけど。笑
「明日は何時に集合だっけ?」
『明日は!10時!俺んち!!!わかった?』
「明日はしょおんち!10時!!」
「聞くの何回目だよ、メモしとけよ」
「うん、わかった!」
と思って一安心した次の日、案の定朝電話がかかってきた。
「ごめん、いつからどこだっけ、」
『はぁ… 今日10時から俺んちつっただろ。』
「ごめん、あとさ、紫耀の家ってどこだっけ、」
『は?お前何回もきてんじゃん』
「ごめん、」
『今どこいんだよ。』
「えと、セブンの前、」
『セブンなんかどこにでもあんだろ』
「その前に本屋さんがある、」
『お前、そこ俺の家と真反対のとこじゃん。そこから動くなよ、面倒臭いことなっから』
「あ、うん、」
彼氏である俺の家も忘れる彼女に無性に腹が立ってきた。だから、あんな思ってもない冷たいことを言ってしまったんだと少しの後悔を抱きながら彼女を迎えに行く。
『ったく、どこいんだよお前。』
「ごめん、道に迷っちゃって」
『俺を疲れされんなよ、』
「ごめんね、あのさ、話したいことあるんだけど、」
『なに?』
「えと、紫耀の家か私の家かどっちかに行ってから話すね」
『帰られないとか言われたら困るからお前の家で』
「わかった」
この後、あんなことが起こるなんてこの頃の俺には想像もできなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。