「奈々ちゃーん、またシロップこぼしちゃった!」
奈々子の彼氏・海斗は、今日も白いシャツに食べものをこぼした。
「だから白いシャツはやめた方がいいって言ったのに」
この前はカレーうどん、その前はミートソースパスタを白いシャツにこぼした海斗。今日はパンケーキのシロップをこぼした。奈々子は今日も、海斗のシャツを拭き着替えさせて洗濯する。自分と海斗が同い年ということが信じられなかった。
「奈々ちゃん、ありがとう」
子犬のような笑顔で奈々子を見つめる海斗は、白いシャツからブルーストライプのシャツに着替えた。
「これ俺のお気に入りのシャツ!どう?似合ってる?」
「うん、似合ってるよ」
「良かったー」
海斗と奈々子は向かい合ってパンケーキを食べた。この部屋で一緒に暮らし始めて3ヶ月。交際歴は2年目に突入した。大学で出会った2人は、最初は友達の友達だった。初めて見たときも奈々子は海斗を後輩だと思ったが、同い年だったことに驚いた。しかも海斗は夏生まれ、奈々子は秋生まれで、むしろ少し先輩だった。奈々子は海斗の子犬のような笑顔とおっとりとした雰囲気に次第に惹かれていったが、意外と男らしい面もあり、そのギャップに惹かれた。数人グループで遊びに行ったとき、歩道がない道でさりげなく車道側を歩いてくれたり、運転が得意だったり、偶然腕と腕が触れ、がっしりとしていたり…。奈々子に告白してきたときも男らしさを感じた。
「俺、奈々ちゃんの強くてはっきりしててかっこいいところが好きだ。俺と付き合ってください」
奈々子は自分のはっきりして男っぽいところが苦手だった。でも、海斗はそんなところを好きだと言ってくれた。素直に、うれしかった。
「奈々ちゃん、また、海行きたいね」
海斗がブルーストライプのシャツを見ながら言う。
「そうだね」
「俺、奈々ちゃんのあの青い水着好きだな。めっちゃ似合ってる」
「やっぱり私は寒色系の方が似合う?明るい色はだめかな?」
「奈々ちゃんはどっちも似合うよ。普段はかっこよくてキレイだけど、めっちゃかわいいもん。最強じゃん」
海斗という名前は、彼の両親の、海のような広い心を持った無限の可能性を秘めた人になってほしい、という願いがこめられているそう。奈々子はその通りだと思った。普段のおっとりとした感じからは想像つかないような包容力で、まさに広大な海のような心で癒してくれる。
「奈々ちゃん、口にシロップついてる」
「え、どこ?」
「俺が取ってあげる」
海斗は奈々子の口についたシロップを舐め取った。
「か、いとくん…」
「奈々ちゃん、俺、スイッチ入っちゃった」
いつの間にか奈々子は、ブルーストライプのシャツを脱いで生まれたままの姿になった海斗に包まれていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!